第6話 激おこフルボッコ
なるほど、男体化したドラゴンに「我らを守ってくださいー!」と追っかけたけど、羽ばたく筋力も低下したから追いつけなかったのか。
「むほー! この女性のドラゴンさん達は何なりー!?」
「あいつらTSしたエリドラだよ」
「むほっ、そうなりか!」
いや、何で嬉しそうなの?
「エリドラさんたちもTSしたなりね、よかったなり!」
いや、何でそんな事言うの?
「おいそこの人間、これはお前の仕業だな! あれで確認したぞ!」
エリドラAの指差す方を見ると監視カメラ的なものであろうか、尖がった岩の上にゆっくり回るバケツみたいのがあった。
「今すぐ俺たちを元の姿に戻せ!」
何かむっちゃ怒ってる、まあ当然だけど。
しかし戻って来るとは予想外、ここはもう一度TSビームを撃ち込むか。
でもそんな事するとエリドラ達の――
『嫌ですよ~だ! マドリーちゃんに無理やり子作りさせようとしたアンタらなんか戻してやるもんですか~! っていうかザマ~!』
ちょっと碧! 何刺激するようなこと言ってんの!?
「うぬぅ! おとなしく戻せば許してやろうと思ったがもう許さん! 骨まで燃え尽きるがいい!」
ほらー、ファイアブレス吐いてきたんだけどー!
「あぶないなり!」
マドリーがブレスを受け止めてくれたー!
しかも片手、女体化しても鬼みたいな防御力、すげえ!
「大丈夫なり?」
「あ、ありがと」
マドリーを優しい性格にしといて良かったー!
「おい、貴様マドリーか!? 我らを女にしたゴミを守るとは何ごとか!」
「しかも人間などの姿に変えおって! ドラゴンの誇りも捨てたか!」
「マドリー! まさか我らを女にさせる為、そのゴミを連れてきたのではないだろうな!」
エリドラは傲慢な性格にしたけど、まさか性根まで腐っているとは。
『マドリ~ちゃん、あんなコト言ってるわよ~! アンタ鬼つよなんだからボッコボコにしてやりなさいよ~!』
「むほ! そ、そんなの無理なり、エリドラさん達に手を出すなんて絶対無理なり……むほ?」
『どうしたの? マドリ~ちゃん』
「むぎゅ……むぎゅぎゅぎゅー!……そ、それがしの原稿が……」
百合TS漫画の原稿データが自分の涎まみれになってんだけど。
「むぎゅぎゅぎゅぎゅーーー!」
可愛い顔がおっそろしい顔に!
これってもしや……。
「それがしの大事な大事な百合TS漫画をよくも! 絶対に許さないなり!!」
やっぱり激おこマドリー!
大事な人や物を傷つけられると激怒するこの設定が発動、ってか原稿汚したの自分の涎だよね。
「うわっ!」
マドリーが打ち上げ花火みたいに飛んでった。
おかげで砂がめっちゃ当たって痛過ぎるんだけど!
「力が制限される人間の姿で我らの前にくるとは」
「くくく、マドリー、おのれの愚かさを噛みしめながら死ぬがいい!」
――それから三分後、目の前にはボコられたエリドラたちの巨体が転がっていた。
「ぐひぃ! カンベンぶふぅ!」
「それがしの大事な原稿を汚すなんて絶対許さないなり!」
「げ、原稿を汚したのはお前の涎――」
「絶対許さないなり!」
「うごぉ!」
むっちゃ怖い顔のマドリーが跨ったエリドラAの頭を殴り続けていた。
「それがしの原稿! それがしの原稿! それがしの原……稿?」
何か思いついたのか、マドリーが殴るのを止めた。
「すぐさま人間の姿になるなり!」
「え? え? ひゃ、ひゃい!」
ボコられたエリドラAが、横たわる裸体美女になった。
「むほぉ! これっ、これなりっ! TSハンターに捕獲された主人公の仲間が辱めを受けるシーンはこれなり!」
イキイキした目で痣だらけの裸体美女をデッサンしまくってる。
漫画への執念すげえ!
「次はこうなり、こういうポーズ取るなり。ああ、違うなり!」
物凄い鼻息でボコ顔の裸体美女に屈辱的なポーズを取らせてる。
漫画魂すげえ!
「人間」
わお、背後からでっかい声! って、ボコられて白目剥いてたエリドラTじゃん。
「その手にしているモノは……何だ?」
「えっと、TSガン」
「そうか……お前、異世界の人間だな?」
えっ、何で知ってんの?
「図星か、夢とばかり思っていたが、まさか本当とは……」
「どういうこと?」
「ふん、特別に教えてやろう」
何か気に食わない言い方。
いいよ教えなくて、と言ってやろうかと思ったが止めた。
「何日か前、昼寝中の夢で声がした」
「声? ってどんな?」
「男のような女のような、そんな声だ。そいつは“TSガンを手にした異世界の人間が来るだろう”と言った」
マジか、俺こんなセリフ一切考えてないし作ってもないぞ。
「そしてこうも言った。“その人間はマドリーを仲間にしていくだろう、だがそれだけでは魔王に勝てない”と」
あいつだ。
俺と碧をここへ送り込んだヤツの仕業だ、わーお。
「そして」
まだあるの?
「これを見せるように、とも言われた」
魔法かな、何か記号っぽいの浮かんできたんだけど。
って、串に刺した沢山の団子を斜め前から見たようなこのロゴ、俺達に帰還条件伝えて来た時と同じヤツだよ。
『どうしたの翼~? Tが何か驚くこと言ったの~?』
何アホっぽい顔でニヤけてんの、こっちはそれ所じゃないんだけど。
「翼殿ー、碧殿ー」
マドリーがお子様走りでこっちに来た。
「見てくださいなり、それがしながらよく描けたなり!」
エリドラAに凌辱ポーズを取らせて描いた様々なラフ絵を見せる。
『ちょっ! それ、えっちぃ過ぎない~?』
両手で顔覆ってるけど指の隙間からガン見してるのバレバレだからね、碧。
「ホント、プロ並みに上手いよ」
「むほほっ、照れるなり」
「これだけ上手く描かれたんだから、モデルになったエリドラAも本望だよ」
「むほ? モデル?」
『ちょっとマドリーちゃん、あのAをモデルにしてコレ描いたんでしょ』
碧の指先に目をやったマドリーがぴょんと飛び上がった。
「え、エリドラさんたちが!……な、何があったなり!?」
『え? ちょっとマドリーちゃん? まさか自分が何やったコト覚えてないの?……ねえ翼、どういうこと~?』
「そのまさかだよ、激おこになったマドリーはその時の記憶が残らないんだ」
という訳でマドリーにやんわりと経緯を話した。
「た、確かにそれがし、怒って頭が真っ白になると何したか覚えてないなり……」
「でもそのおかげで俺と碧は助かったよ、ありがとう」
『そうよマドリーちゃん! それにそいつら女を道具としか見ない輩よ、ボコられて当然よ~!』
俺と碧の言葉にも元気のないマドリー。
「あの、お願いなり……エリドラさんたちを……元に戻してくださいなり」
『え~! 何でよ~!』
いや、本当にマドリーは優しいよね。
でもさすがにそれは出来ないんだけど、だって二度TSすると大変な事になっちゃうから。
「生れた時からお世話になってるなり、それにこのままだとエリドラさん達他の一族の奴隷になってしまうなり……」
そうだった! 男性より大きく戦闘力が劣る女性ドラゴンは他の一族の奴隷になって、強制子作させられるんだった。
ヤバいな、どうしよ……って、強制子作り?
なるほど、ならこうすればいいんだ。
『ねえねえ翼』
「何?」
「あれ……ヤバい予感がする~」
プルプル震える碧の指先に目をやると、無数のドラゴンがこちらに飛んで来るのが見えた。
【7話予告】
次回マドリー篇完結、な話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます