ぐちゃぐちゃ KAC20233

工務店さん

第1話 土地にまつわる

彼は昔から、雨の季節が苦手だった。

足元も悪くなるし、湿気が厭な気分にさせる。

本州に住んでいて、梅雨は切っても切れない、子供の頃には意味も判らず、不快に過ごしたんだと彼は言う。

そんな湿気った雨の日の事。

いつも通り、学校からの帰り道。

長靴を履き、水溜りの中を進むと、ぐちゃぐちゃと変な音が聞こえる。

数歩で超えられるはずの、水溜りに長靴がすっぽり沈む。

驚いて足元を確認すると、水面は盛り上がってもいない、平面そのものだが、彼の足が長靴まで飲み込まれている。

大声をあげたら、近所のおじさんが慌てて飛んできて、彼の現状を見て引き揚げてくれた。

「坊主、大丈夫か?」

彼の足は怪我等は無かったが、長靴がズタボロに。

まるでいくつもの刃物で、切りつけられた様相。

救助したおじさんが、長靴を見て察する。

「坊主、おじさんの家にこい、親御さんに連絡してやるから」

おじさんに連れられ、目の前の家に行った。

奥さんかな、女性が出て来て、瞬時に状況を把握する。

「また、あの水溜りかしら」

家に連絡してもらい、母がくるまで話を聞いた。

余り公にはしていないが、ここの土地では、水溜りがあっても、入ってはいけない。

おじさん達の年代でも、言われ続けていた模様。

その後、母が到着した際に、おじさん達から、水溜りの恐怖を教え込むように言われていた。


帰宅して母に聞くことにした。

この街の水溜りに関してを。


昔から言い伝えである話、それこそ母が子供時代に、祖父母から、何度も何度も口酸っぱく言われていた。

記憶に刷り込むかの様に『水溜りは入るな、入ったら死ぬぞ』と、どの家でも同じ事を言われ続け。

学校でも低学年の頃は、教師達からも言われ続けたと記憶している。

それもあって、集団登下校時は、当時では珍しく保護者数名が同伴していた。

父母世代から祖父母世代まで。


そこまで聞いても、余り恐怖は感じなかったんだ。

次の言葉を聞くまではね。


母が続ける


『ぐちゃぐちゃ』の音が聞こえたら危険な予兆だよ。

え?と母を見る


「お前も聞いたんだね、アレが聞こえたら、水溜りは回り道するなり逃げなさい。地域の家に逃げ込めば大人が対処してくれるからね」


母は真顔で更に


「ぐちゃぐちゃを聞いたのね、これからその音が聞こえても、逃げるのよ、絶対によ」


「ぐちゃぐちゃって何さ」と聞く


「昔からこの土地を護っていた、神様と言われているの、でも私は小さい頃に、姿を見たのよね」

驚く彼

「神様に見え無いのよね、妖怪っぽいのよ」

妖怪?

「それにね、おかしいのよね、この土地の神様なら何処かの神社や祠でお祀りされているはずなのに、どこにも無いのよ」


それは変だ


祀ろわぬ神様は、土地を彷徨い何をやっているのだろう。


この話は取材を元に、フィクションを織り交ぜている故に、以上で終わる。

土地の住人は、解決をしてほしく無さそうであり、

あの方に頼れば報酬で揉めるため、取材の体でお話を聞いて、塩漬けになっていたお話より、カクヨムのお題に沿った話があった為、記録から出してきました。


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ぐちゃぐちゃ KAC20233 工務店さん @s_meito

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