第7話 First Rewards
転送を終え、目の前に異世界が広がる。
六花、コロと降り立ったのはアナザーバースで一番大きいと観測された世界らしい。
「…六花、上を見て!」
「…ふぁあああああ!」
「ににににに!」
満点の星空に天の川が流れ、満月が大きく地上を照らし出し、満月の傍には空に浮く島々が見えていた。
そして、降り立った場所から街道沿いに眺めると街と大きな城が視界に入った。
「こここここれってもしかして世に言うファンタジー世界!?」
「かもしれないから、気をつけて。モンスターのエンカウント率や言語、通貨も不明だからまずは敵対心の確認だ」
「にゃっす!」
「にっに!」
動きやすい服で来てみたが…いきなり言葉の壁どうしよう…
街の門まで来ると衛兵らしき人が立っている。
「止まれ、見たところ軽装備だが何処から来た?」
言葉は通じる!
「あ、うちの猫を探してたら遠くまで来ちゃったみたいで…宿を貸していただきたいのですが…」
「ふむ……こんな夜中に女性二人でその軽装…所持金もないのだろう。余程猫ちゃんが大事と見える。露頭に迷った者は暖かく迎えるのがかこの国の礼儀である。宿と食事代は渡すので通るがよい」
「有難う御座います!」
「にっ!」
「猫ちゃんバイバイー」
「ふふ、女性二人だって♡」
「よ…喜ぶべきなんだろうな。八割方コロのお陰な気もするが」
「ににん!」
「でも、RPGで無一文の勇者って最初に所持金と安い武器貰えるしそんな感じかな?」
「ここは素直にこの国の王様に感謝しよ?」
「はーい!」
中に入ると、夜なのに活気のある街が広がっていて、お店の明かりも付いている。
北欧のハーフティンバー様式の様な建物が多く異国情緒というか、異世界感を感じる。
通行人は獣人やエルフもちらほらいる。
…夢にまで見たファンタジー世界だ!
「に!?」
てててててて―――――――――!!!
「ちょ、コロ様―――!異国で猛ダッシュやめて――――――!!!!」
急いで追うと、屋台の前で尻尾をぴこぴこと振っていた。
「はーいいらっしゃいいらっしゃい!地元名産暴
「うんうん!」
「二本下さい」
「はーい毎度!猫ちゃんはお連れさん?猫ちゃんも食べれるから分けてあげてね!まいどー!」
猫好きが多くて良かった…
斜向かいに階段があったので座って六花に渡し、一欠片コロにあげて食べてみる……
「…月、めっちゃ美味しい!!」
「…牛肉の旨味もだけど独特のスパイスが効いていて不思議な感覚…未知の食べ物なのにめっちゃ美味しい…」
「ににんにん…」
「食べたら宿を探す?」
「そうだね…明日で調査が済めばいいけど、そうじゃないなら少しお金を調達しないと…」
「私が広場で踊り子でもして稼ごうか?」
「駄目だー」
「あ――――――!妬いてるのかなー?かなー?メンズに肌面積少ない処見せたくないのかなー?」
「小町みたいな弄り方するなっ!そうです!」
「えへへへー♡」
「おーなんだなんだ?美人のねーちゃん二人も居てるじゃねーか?」
酔っぱらいの男二人がナンパしてきた…
喧嘩とかそういう掛け合いが非常に面倒だったので、目の前でゆっくり布都御魂・影打を取り出し、ゆっくりと相手が持っていた酒瓶を斬り、チャラいアクセサリーを切断し、二人の間にゆっくりと刀を突きつける。
「…俺の言いたいことは分かるな?」
「すすすすんませんでしたー!」
所持金を置いて逃げる二人!
いや、金出せとは言ってない!
だが一人は首根っこ持って捕まえた。
「ひひひいいいぃぃぃ!」
「つきちゃまー、傍から見ると月の方が怖いですー」
「ににんにー」
若干落ち込みながら、拉致した半泣きの男に話を聞く。
受け答えから見ると、しっかり教育を受けてる男の様で、謎の黒い化物の話は聞けたが何処から来たかは謎で、もしそういう緊急事態があれば国を上げて討伐隊が編成されるので、数は少ないかもしれないという話。
因みにアナザーバースの事は、研究で解明はされてるらしいが、そこへ行けるかどうかはまだ謎だという。
聞いてる内に相当怯えていたのか、お金はあげるので家に返してくださいと震えながら懇願されたので了承したら財布を返すまもなく秒で消えた。
「悪い事したなー…ナンパのやり取りを端折りたかっただけなんだが、脅かしすぎた…」
「そうですよー私達が悪者みたい!」
「それはあの二人の財布を大事そうに抱えながら言う台詞じゃないっ!」
異世界で朝チュン。
何だろう、旅行感もなくやはりファンタジー感が凄い。
でも、六花やコロが居なかったら若干寂しくなったかもしれない。
まず、地図があれば買って、情報屋とかがあるなら昨日の酔っぱらいの彼の情報の精度を精査したい。
お金は稼いで、昨日の財布は…自警団とかがあれば渡しておこう。
よくある討伐のお仕事とかあるかな…?
「…おふぁふぁふぁふぁー…」
「おはよー…異世界でも元気だねー」
「異世界で朝チュンなんかなかなか無さそうなんで♡」
「まずは…地図とか情報とか…昨日の青年の情報が正しいならいいんだけど」
「近隣に違う街とかあるなら見に行ってもいいかも!」
宿を出て大通りを
地図は無料なのか。
周辺地図を見てみると、3つの山を中心に東西南北にそれぞれ国があり、今居るのが南の国。
因みに空島はまだ誰も行ったことがないらしく情報がないらしい。
情報は売ってくれるとの事だったので、聞きたい事を一通り聞く。
ほぼ昨日の青年と話が合致した。
近くに自警団もあったし財布も渡して、さぁ路銀を稼ごうと思っていると、街の外が騒がしくなり、門番が門を閉じ始める。
街の人も門から遠ざかる様に逃げて来た!
その直後に、門を叩く大きな音が聞こえてくる。
そして、女性の悲鳴が聞こえた!
「待って下さい!待って!娘がまだ戻ってないの!!」
六花を結晶飛行モードにして、一緒に飛んで確認しにいくと…薄気味悪い一つ目の巨人が丸太らしきもので門を破壊しようとしている!
「護れ!花鳥風月!」
門の前に障壁を建て、門のダメージを防ぐ。
突然、一つ目の顔がこちらを向く…感がいい!
外見に寄らない速度で丸太を振ってくるが、速度なら負けない!
「
スタンと雷で攻撃と同時に風属性の突きで突進する!
鳩尾を狙い、風穴を空ける!と同時にがっつり捕まれる!
「枯れ落ちろ!飛花落葉!」
六花の技が一つ目の両腕を切り落とし切り口から枯れていく!
よし、もう一息!
…何故こちらを向いた!?花鳥風月!!!
間髪入れず、目からビームらしきものを射出するが、目前で障壁に跳ね返され上半身を黒焦げにして崩れていく!
「危なかったー…六花、子供見つかった?」
「コロちゃんがガードしてるから大丈夫だよー!」
良かった!
子供とコロを抱っこして浮き上がると、ちょっと喜んでくれた!
「良かった…月、街の中に戻ろ!」
「何か、風の音以外に何か聞こえないか?」
「…鳥の羽ばたき?……じゃない!あれ!」
三つ子山の方向から…あれはドラゴンか!?
「街に向かってる!被害出そうだから止めてくる!」
「子供を母親に預けたらすぐ行く!」
「やはり、街に向かっている…敵意は…?」
「…小さき者よ。我は…もう自制が効かぬ。我を
「出来るけど…どうしたの!?」
「…黒い…怪物が内側から浸食している…そろそろ意識も…」
その言葉と共に…空を覆う位巨大な翼が地上の人々へ絶望を伝える。
「…早くやれ!街が近いぞ!」
「竜さん有難う!!思いを無駄にしない!!」
刀を鞘に納め、前で構える!
「滅びの光!
竜の倍位ある八本の首の竜が現れ、口から光を放つ!
直線方向に光を収束させ竜を殲滅した。
見上げると本体が無くなったからか、空を覆っていた異形の羽根もみるみる消えて行く。
「六花、まだそんな大技を持ってたのか…うちの嫁が最強すぎる」
「でしょー?竜さんが自分の意思を以て殺してくれって…
「交流があったのかな?角が落ちたから街に渡しに行こう…あ…」
「どうしたの?」
「…山が一つ無くなってね?」
「…ほわぁっ!!?」
「街へ帰るけど山の事は一切触れるなっ!僕との約束だぞっ?」
「いえっさ!!!」
勇敢な龍の角を、開けられた門の前まで持って行く。
「あの、うちの子を助けて下さり有難う御座いました!!」
「ましたー!」
「冒険者ギルドを呼んでおきましたので報酬も受け取って下さいね!」
「あ、助かります!」
冒険者ギルドの方々が来て一つ目と竜に寄る緊急事態報酬を頂くが、やはり竜はこの町と交流があったらしく勇敢に街を助けるべく犠牲になった事を伝えると、皆悲しい顔をした。
詳細は伏せ、黒い怪物が取り付いていた事を話すと、ここ数年稀に出没するらしくて内密に討伐していた事を教えてくれた。
倒せえないレベルではないと聞き、内心胸を撫で下ろす。
撫でおろしやすい胸だからではない。
あと、山は気にしないでって言われて冷や汗が止まる三人。
一つ目討伐+竜緊急討伐+素材報酬が付き、なんか凄い金額の札束を頂いてオロオロしていると、装備を強化するならフォースアイテムの店に行くといいよって言われ、素直に従う。
「六花、こっちで何かスキル貰った?」
「うんうん!ドラゴンブレス貰っちゃった!」
「六花、火属性好きだもんな…俺はさっきの一つ目ビーム貰った」
「良いなぁ…ビームはオタクの夢…」
「あ、ここかな?フォースアイテムの店」
♪カランコロンカラン
「いらっしゃいませー」
中に色々な商品が陳列されている。見ているが…文字が読めなくて用途が分からない…
「お客様、もしかして他所から来られました?」
「…はい、言葉は大丈夫そうなんですが、文字が読めなくて」
「成程!サービスですので良かったらこちらをどうぞ!」
「…飴玉?」
「味は美味しいですし舐めると
言われるがまま口にし、少し砕いてコロにもあげてみる。
…おおお視界が変だ…
「凄い!読める!」
「母国語になってる!凄いな!これが無料なの!?」
「読めると買ってくれる人多いし、手軽に作れるのでー!」
「商売上手!一時的な効果ですか?」
「永続です!ゆっくりご覧になって下さいねっ♡」
「言葉と裏腹に圧を感じる…買ってくれという眼力が凄い…あの小型だけどアイテムストレージが増える者ありますか?」
「眼力は自信あるんです!それならこれですね!足に付けるバッグなんですが…物は試しにこのハルバードを突っ込んでみて下さい!」
「サイズ違い過ぎるんだけど…っておおおお入った!小さくなってる!」
「見て取り出せるので重宝しますよ!ベルトも替えれますので、つける位置も交換出来ますが、重い物はオススメしないのと、生物は無理なのでご注意下さい」
「だって、コロちゃん!」
「にににー…」
「あれないかな?麻酔針撃てる奴!」
「あれはメガネの小学生限定だっ」
「変形する黒い銃!」
「まず執行官を目指せっ」
「能力が身に付く
「オラァとかドラァしたいのかっ!」
何はともあれストレージを二つと状態異常を防ぐ小さい指輪を二つ買った。
私に状態異常は効かないって言ってみたいって六花の希望に食いついたのは内緒だ。
もう一つアイテムを≪社≫の分析用に買ってある。
何でも調べたがる≪社≫さん。
サンプルに空気や草木、土も渡さないといけない。
月花も心配なので一旦ホームワールドに戻る事にしたが…上手く起動してくれ…
『ダイヴ・アウト!』
視界が無になり、転送装置まで戻る!
「時間は?」
「うん、向こうで過ごした時間をプラスで計算合ってるよ!コロちゃんもお疲れ様!」
「にににっに!」
六花に飛行を付けて月花を迎えに行ってもらった。
俺は≪社≫を呼んでサンプルやアイテムを渡して詳細を報告する。
犬沢池のベンチで≪社≫の使いと話していると、俺の真横に謎の殺人鬼が姿勢よく座った。
痛そうな爪と血だらけの斧とピエロの殺人鬼のマスクと、シャツだけは普通にホラーマスクで有名なあの人のシャツだ。
お腹の抱っこバッグには式部ちゃんが気持ちよさそうに寝ている。
こいつッ!ここまでこの
とりあえず視覚情報を全部スルーして話を終わらせ、怪訝な顔をしながら≪社≫の使いが帰ったので一旦無言を貫いてみる。
「…君のように勘のいいガキは嫌いだよ♪」
「丸わかりだ―――!!!寧ろ何処をどうしたら小町じゃない要素があるのかっ!?」
「えー丸わかりー?もー月巴ったら小町大好きなんだからー♡♪ほーら式部ちゃん多分パパでちよー!」
「その装備で式部ちゃんが全然泣かないの怖いわっ!」
「そこはもうママ似というか、ホラー好きの血が開花したというか♪」
「あ、お姉ちゃんただいまー!」
「妹にもバレバレじゃないか」
「…おっかしーなー六花は行けると思ったのに…」
「遠回しに馬鹿にされているっ」
「ド直球で馬鹿にされてるな」
「あ、お姉ちゃん!これお土産ー!」
「おお、有難う!…小さい水晶?」
「異世界の威嚇用マジックアイテムでね、人肌の温度になるとゾンビの群れの幻影が出るの!」
「ちょっと!めっちゃいいじゃん!
「うにゅ!もっと有り難がるが良いっ!」
姉妹仲もいいし、月花も式部ちゃんも元気だし、まぁいいか。
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