第4話 First birth
臨月に入って、二人ともお母さんらしさが少し出てきて、生まれてくる我が子に編物を編んでいる…
と、そう言う想像をしていたのだが、現実はレトロゲームで熱い対戦をしてる妊婦さん二人。
そろそろお母さん
ある意味ゲームの英才教育というか、胎教みたいな物なのだろうが…どんな子供に育つのやら…
「二人とも、昼御飯作るけど気分はどう?」
「私は生卵以外なら大丈夫かな?」
「私は匂いがきついもの以外ならなんでもー♪」
子供が宿ると味覚も変わるというのは本当らしい。
一度に食べられないから、小分けに作って、一日五食位のペースで無理せずしっかり食べてもらっている。
消化不良とか起こしたら大変だし、なるべく早く負担のないように食事を作る。
『いただきまーす!』
三人で食事…だが小町に免許皆伝を貰ってないのでまだまだ料理を出す時は緊張する。
「美味しい!月はお姉ちゃんの料理に近づいてきたね!」
「いや、駒鳥鵙家の味にはまだまだ遠いなぁ…」
「そーんなこと無いって!上達してるよ!♪」
手間は掛かるが、品数を増やしその時に何かしら食べたい物がある様に工夫する。
幸い、二人共好みの変化が少なかったので作り甲斐はある。
美味しそうに食べてるのを見ると、幸せを感じるなぁ…
「う…ん…」
小町が陣痛で痛みだしたので二人で手を握る。
陣痛の感覚が短くなったらそろそろ入院しないと。
いつもの病院で部屋は抑えてもらってるので問題はないのだが…早めに入院してもらった方がいいのだろうか…
「小町、少し落ち着いたか?」
「う…ん、有難う…結構痛いもんだね」
「因みにどの位痛いんだ?」
「ホッケーマスク被った殺人鬼にチェーンソーで指切断される感じが一番伝わりやすいかな?」
「伝わるかっ!」
「お姉ちゃんも陣痛の感覚が短くなってきたし、そろそろ二人して入院かなぁ?」
「そうだな、破水してから行くと遅くなるだろうし、安産してもらいたいから二人共明日から入院するか!」
すっかりおなじみになった病院。
腕を切り落とされたり、刺されたり、地下施設を破壊したり…お世話になってるなぁ…
二人部屋を抑えてもらっていたので、こっそりボディガードにコロを着ける。
「コロ、頼むぞ!俺もいるが二人の安全は君の双肩…もとい双肉球にかかっているっ!」
「ににっに!♪」
「報酬は…いつものちょーるをスイス銀行に振り込んでおく…3年分だ」
「にっ!」
「スイス銀行ってちょーる振り込めるの?」
「しっ…これは極秘情報だ…コロは指定のちょーる…とりささみ味、まぐろ味、海鮮味…均等に振り込まないと動かないのだ」
「ににーに!」
「コロちゃんの設定もりもりになってきたねー♪」
「コロちゃん、その内狙撃スキル手に入れそうだねー!」
「コロコ13だな」
「世界最強の小型ボディーガード♪」
「丸まって寝てると饅頭に擬態出来るし、有能オブ有能」
心なしかコロのやる気が凄い!
「あ、それ何?」
「
「月、有難う…子々孫々受け継いでいくね…」
「月巴有難う…13日は日曜日リミテッドエディションの横に飾っておくね」
「安産出来たらお礼に行きなさい二人共」
「だって、ねーもう神様いないし…」
「うっ…」
「誰かさんが大見得切ってザックリやっちゃったもんねー♪」
「うっ…」
「にににー♪」
「うっ…コロまで…あれ?そういえばコロは何か叶えてもらったのかなぁ?」
「ダーリンを今年こそ完封出来ますように、とか?」
「スイス銀行のちょーるが倍になってますようにとかかも?♪」
「ににっににっ!」
心強いが謎は多い生き物コロ!
夜になり、ご飯も終わったので、食器を下げに行ってのんびりする。
「いつ来るか分からないからドキドキするねー!」
「本当、まだママという実感がないや♪」
「生まれたら突然パパ・ママにステータスが変わるのも面白いな」
「あ!スキルが出た!」
「私も!」
「突然!どんなスキルなんだ?」
【堅固なる母】
このスキルを所持している限り、分娩の痛みを五〇%カットする。
マタニティブルーも回避する。
「二人共いいタイミングで貰ったなぁ!」
「日頃の行いがいいからね!」
「昨夜俺にモリカ―で散々嫌がらせしてたのに…」
「最近こういうの流行ってるもんねー!苦痛分娩だっけ?♪」
「無痛分娩な?苦痛を与えてどうする!」
「…それはそれでアリ!♪」
「Mの発想ー!!!」
って突っ込んでいたら唐突に六花が産気づいた!
「小町、ごめん!少し見てくる!」
「二人共頑張ってこーい!」
「ににっ!」
「おーコロちゃんは気がつくいい子だねー!うちの子もコロちゃんみたいないい子になるといいなー!」
「にっにっ!」
出産は二人共立ち会う事と決めていたが、意外とやることが無く、応援する事位だ。
「んにゅ――――――!」
「六花、頑張れ!」
「呼吸法…十分息を吸い続けて十分息を吐き続けるんだっけ―――?」
「イタリアで特殊な特訓してるのか!?看護師さんが教えてくれるから!」
「夜は痛いの大丈夫なのに―――!」
「変な事口走るなーーー!心当たりが無さすぎるー!看護師さん鼻で笑ってるだろー!」
…なんだかんだ8時間かかって…
…生まれた…
小さい…
でも元気に泣いている!
「六花、お疲れ様!この後体調変化がないか二時間程見てから病室に帰るんだって」
「…今までで一番苦戦したー!」
「本当お疲れ様!お昼には赤ちゃんと対面で、後でお父さんズお母さんズも来るって」
「やったー!楽しみ!」
「ちょっと小町の方も様子見てくるね」
「いってらっしゃーい!♡」
部屋に帰ると、小町がいない…
「すみません、あの…この部屋の妊婦さんは…?」
「あ、
「何階ですか?」
「そこの突き当りです!」
そっと父親の様な顔をして分娩室に入る!
「ん――――――!」
「小町頑張れ!」
「生―――ま―――れ―――ぬ―――!」
「頑張れー!」
「今、この苦しいタイミングで……スペアリブ食べながら…ハンニバルの金曜日part2みたいって…変…かな?」
「大丈夫だ!周りの助産師さんはドン引きしてるけど、俺は聞き慣れてるぞ!」
「最後に…お願い聞いてくれる…?」
「最後っていうな!なんだ?」
「…仕事中にセクハラ…やめて…ね…ガクッ」
「…おおおお―――い!人聞き悪い事口走って気絶した振りやめろ―――!もうこの病院来づらいわ―――!」
小町は六時間のスピード出産気味でした。
「小町お疲れ様、この後二時間位体調変化見て、それから病室に戻って明日昼に赤ちゃん来るって」
「うはー…やったぁ!」
「お父さんズ・お母さんズも来るってさ」
「一気に賑やかになるねー♪」
「今日から、二人もママだな!」
部屋に小町が戻ると、出産で疲れたのか六花は寝ていた。
小町も少し水分を取らせて寝かせた。
しかし、ベッドにコロがいたのに誰も突っ込まなかったのはコロの特殊能力か?
「コロ、ついててくれて有難うな」
「にににに!」
「コロはお姉ちゃんだから、二人の面倒頼むぞ?またちょーる振込んでおくから」
「にっ!」
・
・
・
・
・
コンコン
ドアをノックしてる?
ああ、寝てたのか俺…
「はい!」
ドアを開けると、看護師さんと…我が子がいた。
「
「ちょっと待って下さい!…六花、六花、起きれるか?」
「むにゃむにゃ…もう食べられない…」
「テンプレご苦労!さぁ、起きてご対面だぞ!」
「はっ!…赤ちゃんきた!?」
「鹿鳴さん来ましたよ!夜間以外はご一緒で大丈夫ですよ!」
「だってよ、ツッキー!」
「おめでとう月巴ちゃん!」
「吃驚した!
「そうそう!いいタイミングの研修だったぜー!」
「ねー!六花さんもおめでとうー!」
「って…赤ちゃんに集中してる!」
「ふおぉぉ……月…私達の赤ちゃんだよー!夢の三人家族ー!安波ちゃん、海波ちゃん有難う!」
…目頭が熱くなってきた処でもう一人もやってきた!
「
「小町、小町!赤ちゃんやってきたぞ!」
「ん―――!ついに来たかー!」
看護師さんに赤ちゃんを受け取ってあやす小町。
流石に小花ちゃんで慣れてるな!
「どうだ、お母さんになった感想は?」
「…やはりホラー映画の強そうな奴から名前を取った方がっ!」
「駄目よ」
駒鳥鵙お義母さん到着!
「貴方にネーミングのセンスはないので私達で決めるからね」
「孫の誕生日に娘になんちゅー事を!」
「六花も小町も、よー頑張ったな!今日から私らおじいちゃんおばあちゃんやで」
「月巴もおめでとう!思ったよりおじいちゃんになるの早くて少しドキドキしてる」
「お父さん朝からずっとそわそわしてるのよ」
「ですわ!」
「雪もいた!父さん、母さん、雪、来てくれて有難う!お義父さん、お義母さんも有難う御座います!」
少し涙目になってたのは突っ込まれなくて良かった。
凄いなぁ…お義母さんとお義父さんと母さんと父さんを赤ちゃんがグルグル回って抱かれてる。
三半規管強い子になれ!
…あれ?うちの子にまだ一度も触れてない!
ま、まぁおじいちゃんズおばあちゃんズが終わってからで…
俺のターンが来ない…
皆の喜ぶ姿でお腹一杯なとこもあるんだけど、まだ全然触れてなくてちょっと悔しくもある。
その後、皆帰ってからうちの子と小町の娘ちゃんを抱かせて貰った。
勿論コロの初おでこ御供え付き。
俺が抱いてるとこで二人共写真撮っちゃうのが姉妹だなぁって思う。
その後、五日で退院となり、小町は駒鳥鵙家に、うちは家に帰る。
たまに母さんや雪が来てくれるみたいで助かる!
久しぶりの我が家で、六花も少し安心出来た様だ。
「ほーら月花ちゃーん!お家でちゅよー!」
「良かった…男の子で羅王ちゃんじゃなくて…」
「それは冗談だってばー!お姉ちゃんだからコロちゃんも仲良くしてねー!」
「ににっに!」
「あー、六花!念の為言っておくけど逢禍が出ても俺が行くから。俺がいない場合は必ず月花を置いて、スマホ、お財布持って、着替えてから出る事」
「はーい!♡」
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