第2話 ずっと傍にいるから
六花と小町のダブル変身…もとい妊娠が発覚して暫く経った。
六花は晴れて寿退社という事で夏月大社の巫女さんを引退した。
本来は処女性を重視されるらしいが、まぁ昨今は形式だけなのだろう。
元々綺麗好きの六花は毎日部屋の掃除をしているが、時間が余りまくって何をしていいか分からず、タブレットで通販でマタニティや赤ちゃんの服を見たり、妊婦さんの心得なんかを勉強している。
小町は仕事しているものの、お腹の子を大切にしているのか動きがゆっくりの時も増えてきた。
俺はたまにフラペンを作る係に回される様になり、カンペを見ながら慌ただしく作っている。
「えー店長は何をしてるのかな?」
「最近月巴の腹筋がいい感じになってきたから、筋肉フェチの私が寸評してあげようかと…おおお、細マッチョなのに腹筋が出ておる!」
副店長に首根っこ掴まれて連れて行かれる店長。
妊娠中でも容赦ないな副店長!
あれ?六花が入ってきた…
「月、実家に帰らせて貰います」
「それを言いたいだけだろっ!実家に何か用事?」
「うん、お義母さんとママに妊婦の心得を聞いておこうと思って…こういうのは実際に経験してる身内のお話の方が頼りになるかなって」
「うん、そうだな!行ってらっしゃい!コケない様にね?」
「摺り足で行ってきます!」
「半日位掛かりそうだな…」
六花の事も心配だが、もし逢禍が出たとしたら俺が行かないと。
うっかり六花のお腹に攻撃が当たったら洒落にならない
リリリン…
言ってたら逢禍が出た!
「店長宛て店長宛て。零番入ります」
「やったー!らっき……いやいや、ポジション速やかに変わります♪」
副店長の説教が終わるから露骨に喜ぶ小町。
店を飛び出し、先に多重結界を貼って探す!
新設された奈良の名物ビルの屋上に逢禍はいた……が、大人しい。
攻撃性が全く見られずキョロキョロしている。
「カエリタイ…オウチ……ドコ」
自我が残ってる…斬り祓いたいのに手が動かない。
「…クメイクン…キョウハ…トウコウシテテ…エライゾ」
……!!、中学のクラスメイトの委員長だった女の子…胸が辛い…
「…
風属性の無痛突きで、なるべく辛くない様に終わらせる。
「ヤサシイネ…アリガ…」
そういうと彼女は祓われ消えていった。
「戻りました、少しだけ奥入ります」
「どうしたの?何か辛い戦いだったの?」
「逢禍の自我が残ってた…中学のクラスメイトだった」
座ってふさぎ込んでる俺を小町が立ったままハグして慰めてくれる。
「忘れない様に…覚えておいてあげなきゃね♪」
「ああ、絶対忘れねぇ…祓った逢禍全て…」
私は…大事な妹と同じ人を好きになった。
神様の話だと月巴と六花は何回生まれ変わっても惹かれ合い、私は振り向いてもらえない。
それでもいい、傍に居られて…こんな優しい人の子供を授かっただけでも幸せ…
「よし、仕事戻る」
「頑張って月巴!」
「小町は座ってろ、少し顔色が悪いぞ?」
「はーい♪」
ほらね?こういう所が大好き!♪
今日は早番だったので一旦自宅に戻ると、六花がマタニティを畳んでいた。
「どうしたの、それ?」
「ママとお義母さんに貰ったんだー!」
「いいお話聞けた?」
「うちのママには離乳食のレシピとお姉ちゃんが生まれた時の話を教えてもらって、お義母さんからは月の子供の時の話を根掘り葉掘り…えへへー」
「絶対聞くと思ったよ…」
「雪ちゃんと風呂場で遊びすぎてのぼせて浮いてたとか」
「あったなぁ…」
「月がいないと思ったら絶対に蔵にいるとか…」
「ゲームソフト発掘出来るし、あの時は本しか興味なかったからなぁ…」
「小学校の時のプールで下に水着来ていったのはいいものの着替えを忘れてミニスカノーパンで1日過ごした事とか」
「母さん黒歴史喋るなー!!!」
六花、抱腹絶倒!
「あ、六花!逢禍出ても出撃禁止ね?当分俺が行くから!」
「パパの言葉に甘えます!安産したいので!」
「パパかぁ…実感が沸かない…」
「子供の顔見たら変わるよ♡」
「楽しみでしかない…コロ様!もうすぐ弟か妹が出来るでちよー!楽しみでちねー!♡」
「その姿見てたら何の不安もないです♡」
「あぷぷぷぷー♪ほーら貞子お姉ちゃんだよー!」
「小町、小花にホラー映画の英才教育は止めなさい」
「だーいじょうぶ!怖がらない様にやってるから!てか、本当に小花ちゃん泣かないねー…」
「こんなに堂々とされてると、威厳を感じちゃうわー」
「将来大物の予感!」
「あなたは将来はどんな子に育てたいの?月巴ちゃんみたいな子?」
「ママ直球すぎる!そうだなー…あの人の子だから、絶対に優しい子になるから…あとはホラー要素をどれだけ伸ばせるか!」
「今、聞いた感じだと優しい殺人鬼みたいに聞こえるんだけど…」
「ホラー映画でも質が悪い部類じゃん!殺人鬼にはしませんー!」
「何にせよW初孫だからママもパパも楽しみだわ!」
「ふっふっふっ…coming soon!そういえば私の名前はどうやって決めたの?」
「勿論世界三大美人の小野小町からよ?」
「六花によくこまこまって言われるから駒鳥鵙にかけたのかな?って♪」
「たまたまよー!美人でいい子に育って欲しいって願ってつけたんだから!九割は願望通りに育って良かったけど…」
「あのーお母様ー残り一割駄目なとこはー?」
「妹が熱出して倒れてるのに、傍でホラー映画を大音量で流しながらとても楽しそうにお肉食べてるとこかな?」
「超具体的な指摘キター!」
妊娠発覚から半年が経過。
アインズへ出かけてベビーベッドを二つ買った。
一つは自宅で、もう一つは小町の家に送った。
あとは何を買おうと哺乳瓶等を見てる内に迷ってしまう…
「ガラスは冷ましやすいけど重いからシリコンとかオススメだよー」
「そうなの?じゃーシリコンに…って突然の
「ここ好きだから良く来るんだよ!あと、ウチ妹いるから何でも聞いてね!」
「何て心強い…宜しくお願いします!」
「何なら私と子供作って実地で覚える?」
「浮気はしません!」
「ちっ!♡残りも選ぶなら手伝うよ?」
「宜しく!」
早くも紙おむつとかミトンとかサイズに関係ないものをちょこちょこ買う。
「薺ちゃん有難う!何かあったら教えてね!」
「あいよー!」
「月おかえ…また沢山買ってきたねー!」
「うん、かなり楽しみになってきた…ベビーベッドも買ったよ!って…その本は?」
「ひよたまをバックナンバーから買って読み漁ってるの!」
「ジェクシーが終わったと思ったら次はひよたまだったか…」
「知らない事多いから勉強になるよー!そして頭から抜けていく神社の仕事…」
「どんだけトラウマなんだ…お腹の赤ちゃんも体内環境気にしてるから、お風呂ゆっくり入ったり、適度なウォーキングしたりして健康を維持しないとね」
「はぁい♡」
「じいちゃん」
「なんじゃ」
深夜の定例肉まんを食べる会開催中。
「逢禍の創り手ってあれから何か情報入ったりする?」
「いいや、警察の大きな手入れが入ってから捕まった者も大勢だし、その他は潜伏している様じゃの…」
「ワシが纏めていた逢禍のデータは≪社≫という組織に提出したから、何かの役に立ってくれればの」
「何から何まで有難うな、じいちゃん!こうして俺が生きているのもじいちゃんの御蔭だし…うちのばあちゃん紹介しようか?」
「そんなふしだらな動機で神に謁見した訳ではないぞ?鹿鳴よ?」
「お、おう…ごめん」
「だが、逢禍の創り手は卒業したし、折角だから茶飲み友達として紹介して頂こうか?」
「めちゃめちゃ乗り気じゃねーか!仕事で地方行ってるから帰ったら紹介するよ」
「それとだな、鹿鳴よ、立ち上がるのに手を貸してくれんか?」
「どうした?腰痛いのか?」
「いや、首と手足の磁器ネックレスを超強力ネオジム磁石にしたらコンビニの窓枠にくっついてだな…」
「だから歩くだけで磁場テロになるからやめろって!」
「だが、これが良く出来ていてな!車が通るだけで勝手に引き寄せられるから移動が楽でな」
「危ないからやめろっ!!!」
「そして鹿鳴よ!肉まんが定番商品から外れた時、何を食うか店内に探しに行くぞ!!」
「アイスにしようぜ!」
「ただいまー」
「おかえりー」
「…おかえりー」
「おかえりー」
「小町と茨が何時の間にか…はい、肉まん」
『わーい!』
「妊婦ズは気分悪くならない様にゆっくり食べてね」
『はーい♡』
「月巴ちゃん教えて…何故雪ちゃんは女性なの…」
「いきなり哲学的な質問投げるな…雪の子供が欲しいの?」
こくこくっ!
「うーん、ワンチャンそういうスキルがあれば…映えたりするかも…でも現段階で捜索するのは難しいし、国営のスキルショップが出来て流通が始まれば入手も容易くなるかも…?」
「なんですって…そのスキルがあれば月が!」
「月巴を妊娠させる事がっ!♪」
「妊婦ズは変な妄想しなーい!!!////」
「え…マジですよ?」
「月巴…ガチだから…♪」
「ひいいいいいいいい!!!」
「スキル…ネットで探してみる…しおりんには負けない…」
「今、栞とどんな状況なのか気になるな…」
「栞も好きになる人偏ってるからなぁ♪」
「も?小町も偏ってるのか?」
「あ…うん、そうそう偏ってる偏ってる♪」
「え…でもお姉ちゃんの歴代彼氏っ…」
「脂放出あたーっく!」
「やめてー!鼻の脂が出るー!」
「妊婦ズ暴れなーい!」
コロを六花の頭に、小町の頭にダーリンを備えると癒し効果により争いは解決する。
その後お菓子とケーキで女子会して。雑魚寝する。
深夜。
トイレに起きたら小町がいないから心配して外に探しに行く。
犬沢池に出ると畔の椅子に小町が居た。
「どうした?気分が悪いのか?」
「うん、ちょっとだけ…ホラー映画の見過ぎかな?」
「小町はもうホラーが日常になってるからな…」
「何でだろうね?小さい頃からなんだ。ちっとも怖いとか思わなくて、頭おかしいのかな?」
「そんな事ないって!趣味なんか誰でもあるじゃないか!」
「うん…」
なんだろう、小町が少し虚ろというか催眠状態みたいに見える。
初めての妊娠でメンタルが揺らいでいるのかな?
「小町、体調悪そうだし家入ろうか…」
彼女を抱えて立たせると、知らぬ間に逢禍がいた。
ごく普通のネイティブな逢禍…
小町を抱えたままなので、結晶技で祓う!!
「お願い 触らナいで もう離レタクナイ」
「おい、小町どうした?」
「
小町の身体から暗黒が染み出し
逢禍の身体を喰らう
逢禍が喰われると、小町の様子が静まった。
そっか…そういう事だったんだ。
生まれ変わっても、ずっと傍に居てくれた。
似てる筈だよな、お前も六花なんだから。
「ん…ふぁ?なんで、外いるの?」
「これから少し気持ちが暗くなったら俺に言え、分かったか?」
「わ、分かったから、後頭部は
「…珍しく月巴からのチューじゃん♡」
「ん、家入るぞ、風邪をひく」
「はーい♪」
そう言って転ばない様に手を繋いだ。
翌朝、起きた小町は特に様子も可笑しい事がなく、恐らくは初めての妊娠による変調…だと思いたい。
「うっ!急に産気がっ♪」
「まだまだ先だろっ!」
「うっ!お腹の子の中学お受験がっ!」
「先に産んであげなさい!」
「…スキル…見つからない…」
「茨は徹夜!?」
「…
「雪、愛されてるけど…そんなスキル受け取るかなぁ…いや、あいつなら食い気味に受け取るな」
「茨ちゃん、発注は三つでお願い!!」
「茨ちゃんお願いねー!」
「朝から俺の方見ながら鼻血出すんじゃない変態共っ!」
男の身体に慣れたのでもう妊娠無理っす!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます