『白鳥真美の覚悟』

「あ、あの……真美ちゃん……私急にお邪魔しちゃったのだけど……迷惑じゃないかしら……?」



不安そうな表情をして訊ねる菜乃花先輩。私からすれば全然迷惑じゃないけど……



「いえ。私は大丈夫ですけど……」



真顔でそう答えると、彼女は安堵したように胸を撫で下ろしていた。ああ、かわいいなぁ……早く菜乃花先輩を私のものにしたい。



そんな邪念が頭の中に渦巻いてしまう。いっそのこと襲って既成事実を作ってしまおうか? なんて、思ってしまう。私は自分の欲望を抑えながら、彼女を部屋に招き入れた。




△▼△▼




それからはしばらく談笑していた。襲う覚悟も決めておいたのだが、いざとなると緊張して何もできなかったのだ。それに、この時間を大切にしたいという気持ちもあったし。



それに――、



「ここは勘違いして逃げる展開がいいわよね」



華恋さんいるし……!流石にお姉さんの前ではできないよ……!それにシンプルに華恋さんのアドバイスは小説家を目指している私にとって参考になることが多いし。



「…華恋がいると、真美が大人しくなって助かるわ~」



「ちょ!姉貴!華恋さんの前で変なこと言わないで!」



私が慌てて否定すると、クスクスと菜乃花先輩が笑っている。菜乃花先輩まで……!もう、恥ずかしいなぁ……



「真美ちゃんって普段はしっかりしているけれど、意外と可愛いところあるんだね」



ニッコリと微笑みながら言う華恋さん。うう……最悪。姉貴~~!!と思いながら私はジロリと姉貴を睨みつける。しかし、当の姉貴は何食わぬ顔をしてお茶菓子を食べているだけだし……!



「面白いっと言ったらね!菜乃花も負けてないわよ。この前だってさー…」



「ちょ!ちょっと、お姉ちゃん!?」



そんなこんなで、私たちの夜は更けていったのだった。



△▼△▼



夜も深まり、時刻は既に12時を回っていた。隣にはスヤスヤと可愛らしく寝ている菜乃花先輩がいる。



正直、理性を抑えることに必死だったが華恋さんのおかげでなんとか耐えきることができた。正直、二人っきりだったら危なかったと思う。



きっと、菜乃花先輩のことを考えずに襲ってただろうから……そしたら菜乃花先輩も華恋さんにも奏先輩にも真白先輩にも顔向けが出来ないので何とか踏みとどまった。



「………キスも、その先のことも……」



付き合うことになった時にするつもりだ。菜乃花先輩が私を選んでくれるのかは分からない。でも、それでも。



「菜乃花先輩が好き」



ただそれだけは確かなことだと思った。だから今はこれでいい。

いつか必ず振り向かせてみせる。そして、その時こそ先輩の全てをもらうつもりだ。

 


「(今回のことで仲が深まった感じするし)」



追いつく為には頑張るしかないのだ。菜乃花先輩を振り向かせる為にはもっと努力をしなくてはいけない。



「(とりあえず、文化祭までには……)」



菜乃花先輩を振り向かせてみせる!と心に誓った。

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