『真美の恋』

――最近の私の恋は全く上手くいっていない。



「夏祭りを誘ったと思ったらみんなで行こうって言われたし!」



ダンッ、と私は包丁で乱暴に野菜を切る。まな板がギシギシ言っているけどそんなの知らない! あーもう本当にムカつくなぁ……!!



「その上、真白先輩は菜乃花先輩の家にお泊まり!?奏先輩も夏祭りのとき顎クイしてたし……」



顎クイとお泊まりなら、お泊まりの方が羨ましい。私だって菜乃花先輩の家には泊まったことないんだからね?菜乃花先輩と付き合いが長いのは私なのに!顎クイも私がしたかったものなのに!



「何なのよ!この差は!!」



嫉妬心剥き出しにして、大声で叫んでしまう。私が1番有利なはずだったのに。付き合いの長さでは勝っているはずなのに……!



「ちょっと真美ー!一人で何騒いでんのさ」



姉貴の呆れた声がした。……そういえば姉貴って華恋さんと友達だったっけ。何か知ってるかな……。



「ねぇ、姉貴!聞いて欲しいことがあるんだけど!」



「えー?真美があたしに相談なんて珍しいじゃん。まぁ聞くだけ聞こうか?」



そう言いながら姉貴はソファーに座ってニヤリと微笑みながらこちらを見ながら



「とりあえず座れば?」



と言った。



△▼△▼



私は姉貴に相談してみた。相談内容はもちろん菜乃花先輩のこと。そしてその話を聞いているうちに、姉貴は――



「ふーん。そう……菜乃花ちゃんとねぇ……」



顎に手を添えて、姉貴は目を細めてこう言った。 



「なら、菜乃花ちゃんを明日私達の家に呼びましょう!華恋も呼ぶし」



ポンと手を叩き、名案だと言わんばかりに笑みを浮かべて言う姉貴。……いや、確かに良いアイデアなんだけど。でもいきなり家に呼んだりして大丈夫なのかな……?



「じゃあ決まりだね!早速連絡するわ~」



……なんか勝手に話が進んでしまった。でも、これで少しは進展するかも……!?私だけ遅れている気がしているし……

そう思いつつ、私はスマホを取り出してLINEを開いた。すると、ちょうどいいタイミングで菜乃花先輩からのメッセージが来た。



『お姉ちゃんから聞いたのですが、私も真美ちゃんの家に一緒に泊まりに行っていいの……?』



そんなラインが届いた。もちろんOKなのですぐに返信をした。



△▼△▼



「やあやあ。いらっしゃ~い♪」



玄関を開けるなり満面の笑顔の姉貴が二人を出迎えていた。華恋さんも菜乃花先輩も相変わらず可愛いなぁ……。



「ほらほら上がって上がって~!」



そう言って姉貴は二人を迎えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る