『付き合いをする前の忖度』
「それでねー、真白ちゃん、菜乃花ってねー、小さい頃は私のそばを離さなかったんだからー。めちゃくちゃ可愛かったのよ?」
そう言いながら、お酒を飲むお姉ちゃん。……めちゃくちゃ恥ずかしいからやめて欲しい……。
「へぇー、そうなんですね……いいなぁ……私も華恋さんみたいなお姉さんが欲しかったです……」
そう言いながら、お酒をさりげなく勧める真白先輩。真白先輩もお姉ちゃんを調子付かせるのはやめて欲しいなぁ……と思いながらため息を吐いていると、
「そういえば、菜乃花ちゃんと華恋さんの御両親はいないの?いたら私挨拶したいんだけど」
真白先輩に言われてハッとした。……でも、両親はあまり触れてほしくない話題だったりするんだよなぁ……。
私が躊躇っていると。
「まぁ。真白ちゃん、両親のことはいいじゃない……それよりも楽しい話をしましょうよ!」
そう言って無理矢理話を変えた。
△▼△▼
お姉ちゃんが酒が回り、眠った後、私は真白先輩と一緒に片付けをしていた。
真白先輩は客人なわけだし、させるのは申し訳なかったけど、どうしてもと言って聞かなかったのだ。
「……先はごめんね」
そんなことを思っていると、真白先輩が不意にそう言った。何のことか分からず首を傾げると、
「ほら、先の両親のことよ。触れてほしくなさそうだったから」
……あぁ、その事か……確かに、あまり触れて欲しくない件だ。だって、今はいないものなんだから――。
「いえ。気にしていません。両親のことを聞かれるのは慣れっこなので」
私が言うと、真白先輩は少し悲しげな表情を浮かべたあと、「そっか……」と言ったけど、そのあとは明るい顔になりながら、
「はい。私達も寝ましょうか!華恋さんを部屋に連れて私達も寝ましょう!」
……話題を逸らしてくれるのがありがたくて、つい甘えてしまう自分がいた。
△▼△▼
――奏に負けたくない。という思いが先行して、つい菜乃花ちゃんの家に泊まっていい?と聞いてしまった。
断られるとばかり思っていた。冗談半分で聞いたつもりだったからだ。だけど、予想に反してOKしてくれた時は驚いたものだ。
だって赤面して断れるかと覚悟していたら逆だった。赤面して目を逸らしながら、承諾された。何だか得した気分になった。
そして、菜乃花ちゃんのお姉さんである華恋さんとも仲良くなりたいと思った。……だって私は乗り遅れている気がしていたし。
真実ちゃんは菜乃花ちゃんの中学からの後輩だからそこの時点で私は乗り遅れてると感じて焦り感じていたし、奏も独占する時間は少なかったとはいえ、顎クイしてるし……
だから私は菜乃花ちゃんの家にお泊まりをした。お風呂上がりの菜乃花ちゃんを見た時とかドキドキしたし、襲いたくならなかったと言えば嘘になるくらいには理性との戦いがあったりした。
でも、それは我慢出来た。何故かって?…それは……
「まぁ、お泊まりするのは許すけど菜乃花を襲ったら怒るから、ね?」
と、保護者から釘を刺されていたのもある。流石にそんなことを言われて、襲うのは違うし、そもそも付き合ってないし……
でも、念願のお泊まりだ。菜乃花ちゃんの家にお泊まりするのは文芸部なら私以外いないらしい。つまり、私が初めてだ。
その上――、
「真白先輩。起きてください。朝ですよ?」
朝起きたら、菜乃花ちゃんが目の前にいる。こんな幸せがあって良いのかと思うほど幸せなことだったし、華恋さんの忠告が無かったら襲って、既成事実を作っていたかもしれない。
私はそんなことが出来るかは置いといて。……とりあえず、今は――
「ねぇ。菜乃花ちゃん、好き。大好きだよ」
私はそう言って、菜乃花ちゃんを抱き締める。……キスするのは付き合い始めてからの楽しみにしておこうかな……なんて思いながら私は笑みを浮かべた。
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