『お泊まり』
夏休みも終わり、新学期が始まった。夏休みはいつも通り小説を書いていたらあっという間に終わってしまった気がする。
そして――。
「(早く、決めないと)」
夏休みに決意だけして終わったことを思い出しながら、私はそう思った。決めるというのは三人の中の誰かと付き合うかということ。まだ迷っているのだけれど、そろそろ決断しないといけない。
でも、この気持ちをどう伝えたらいいのか分からない。だから、今めちゃくちゃ悩んでいる。どうすればいいのか全く思いつかないから。
考えれば考えるほど分からなくなる。そんな時だった。
ピロンッ! スマホが鳴った。誰からのメッセージだろうと思って確認すると、
『今日は私と帰らない?話したいことがあるんだけど』
真白先輩からだ。話って何のことだろうと疑問を抱きつつも、私は了解した旨の返信をしながら、真白先輩の元へと駆け寄った。
△▼△▼
真白先輩と二人っきりで帰るなんて久しぶりだな……と思いつつ、私は先輩と一緒に下校していた。
しばらく歩いていると、急に立ち止まった先輩が――、
「ねぇ、菜乃花ちゃん!」
「は、はい!なんですか?」
いきなり大きな声で呼ばれたので驚いた後に返事をする。すると、先輩の顔を見ると――、
「私ね……例え、菜乃花ちゃんが他の人を好きになっても!私はずっと菜乃花のことが好きだよ」
唐突な告白をされた。もう耳にたこができるくらい聞いた言葉なのに、何故か今はその言葉を言われたら、胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚になった。
「話はこれだけよ。……とゆうことで。今日は菜乃花ちゃんの家にお泊まりさせて貰うわ」
………何がとゆうわけで!?突然すぎるんですけど!意味がわからず、混乱していると、
「ね、お願いよー。菜乃花ちゃん」
上目遣いをしながら言われてしまえば断れるはずもなく……どうして、お泊まりしたいのか、とか色々聞きたいことはあったのだが――、
「駄目、かしら……?」
念押し、と言わんばかりに、上目遣いと涙目のコンボには勝てるはずもなかった――。
△▼△▼
「わー。菜乃花ちゃんの家って何気に初めてよね?……文芸部としては私が初めてよね?」
グイッと、顔を近づけてくる先輩。その距離感の近さにドキドキしながら答える。
「そ、そうですね。初めてです……」
厳密には真美ちゃんは家にあげたことはあるけど、お泊まりはしていないので嘘は付いてないよね……と、心の中で思いながらお泊まりセットを用意している先輩を見ながら、こっそりため息を吐いた。
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