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『桜田菜乃花は何故か愛される』

私――桜田菜乃花は平凡だ。特に特技もなく、得意なこともない。勉強も運動も得意というわけでもなく、普通に平均レベルである。



人よりも優れているところなんて悲しいことに一つもない。……強いて言えば、小説を書くことが好きだということくらいだろうか。 



でも、小説を書くことが好き……だと言っても、趣味程度だ。小さい頃は小説家を夢見てコンテストに応募したけど落選しまくったし。



その上、お姉ちゃんが応募した小説はすぐ書籍化して有名になったし、アニメ化した作品が沢山ある。そんな凄い人と血の繋がりがあるからこそ余計に自分の才能がないことを思い知らされて――惨めになった。



でも、それでも、話を書くことは好きだから。だから、私は今もこうして書き続けていた。それにお姉ちゃんのことは好きだし、憧れでもあるから。



そんな駄目な私を好きになる人なんていないと思った。友達だって少ないし……と、そう思っていた。だけど……



「ねぇ?菜乃花ちゃんから離れなよ?真美ちゃん?」



「お前……後輩の癖に……」



「先輩達…酷くないですかー?私はただ……菜乃花先輩とお喋りしたいだけなのに」



三人はそう言いながらバチバチと私を間に挟み、睨み合っている。……そう、何故か私はこの三人から……めちゃくちゃ好かれているし、何故か愛されている。



しかも、放課後……正確に言うと、部活が終わるとみんな私に耳元で愛の言葉を囁き、みんな抱きついてくるのだ。正直……恥ずかしいし、くすぐったくてしょうがない。



「まぁ、いいや!今日はもう帰ろっか!」



真白先輩の言葉に三人とも首を縦に振る。そして、いつものように私の腕にしがみついてきた。そのせいで、胸が当たっているんだけど……これもいつものことだから慣れてきた……。



「ああーー!ずるーい!私は新入部員なんですよ?まだ入部して一週間しか経ってないし、私に譲ってくださいよ〜」



と、真美ちゃんはそう言って反対のほうの腕にギュッとしがみつく。すると、奏先輩はムッとした表情になり、



「おい。真美。そっちは私の特権だぞ」



「はあ?何それ〜?意味わかんないんですけどぉ?」



と、また喧嘩を始めてしまった。どうしよう……と思っていると、



「ねえ、菜乃花先輩は私と帰りたいですよね?他の誰でもない!私と帰りたいですよね?」



と、真美ちゃんが後ろから抱きしめられ、耳元でそう囁かれる。



「え、ええっと……」



「は?菜乃花は私と帰りたいだよな?」



そう言って威圧感のある目でこちらを見る奏先輩。

うぅ……なんか……怖い……



「ねぇ、菜乃花ちゃん。誰を選ぶのかしら?」



と言って妖艶な笑みを浮かべる真白先輩。そんなこと言われても困る……だって――。



「………ひ……」



「……ひ?」



「ひっ……一人で帰りますからーー!」



そう言いながら、私はその場を走り去る。今は三人から離れたいと心の底から思ったのだ。



まぁ、その願いは届かず、三人に無事に捕まり、ギスギスした空気に舞い戻ったわけだが。



これは、特に取り柄のない女子高校生が何故か愛され、成長していく物語である。

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