『歓迎会』

 真美ちゃんが文芸部を入部して一ヶ月が経った。相変わらず、部活動が終わったら耳元で愛の言葉を囁かれる日々が続いている。



私は、その度に顔を真っ赤にして反応してしまうのだった。もう四ヶ月ぐらいされてるんだからいい加減慣れろ……と自分に言い聞かせるも、やっぱり恥ずかしくて仕方ない。



でも、部室に行ってしまうのは私も期待してしまっているからかもしれない。だって、奏先輩も真白先輩も真美ちゃんもみんないい声をしているのだ。



そんな人達にあんなことを言われてしまえば、嫌な気持ちには絶対にならないだろう。



「ねぇ、みんな、五月よ!そろそろゴールデンウィークよ!」



今日もいつものように文芸部で小説を書いているとき、真白先輩が目を輝かせ、嬉々とした表情を浮かべながら言った。



「そうだな。それが?いつも通り私達は小説書いて終わりじゃ?去年はそうだったじゃん」



「あれは真面目にする部員がいなかったからそうなっただけ!今年はやる気のある部員しかいないし、真美ちゃんの歓迎会も兼ねてどっかに遊びに行きましょう!」



「えー……面倒くさ…」



真美ちゃんの歓迎会なのに当の本人である真美ちゃんが一番面倒臭がっているという謎すぎる状況。……そういえば、真美ちゃんってめんどくさがり屋だった……



小説以外は本当に興味が無いし、中学生の最初の頃も最初は本当小説を書くこと以外は何もしなかったもんね……途中からやる気に満ち溢れていたけど……。



「……えー。真美ちゃんの為の提案だったんだけどそれならしょうがない。私と菜乃花ちゃんでラブラブなをするわ。二人でどこか行きましょ?」



そう言いながら、私の腕に抱きついてくる。柔らかい感触が伝わってきて少しドキドキするし、いい匂いが漂ってきて更にドキドキしてくる。



「私も行くんだけど?勝手に仲間はずれにすんなよ。真白」



そう言いながら奏先輩も反対側の腕に抱きついてくる。柔らかい感触と共に柑橘系の匂いが鼻腔を刺激する。

奏先輩って結構着痩せするタイプの人だから意外と胸があるんだよなぁ……。それにめっちゃ良い匂いするし……



「………気分が変わりました。私も行きます」



不機嫌そうにそう言いながら真美ちゃんは私の背中にくっついてくる。……身動き取れないんですけど……?



「勿論、菜乃花ちゃんは行くよね?」



行かないなんて言わせないぞ?と言いたげな目をしながらこちらを見てくる。そんな目をされたら断ることも出来ないじゃないですか……!




「は、はい………分かりました……」



まぁ、私も真美ちゃんの歓迎会したいし、みんなとお出かけはしたいから別に構わないのだが……なんか、みんな目が光っているような気がするのは気のせいですか……?



「じゃあ、決まりね!場所は遊園地とかはどう?」



そんな真白先輩の言葉に奏先輩と真美ちゃんは頷いた。

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