人と混ざりあうこと。

ミウ天

こうして少年は、世界に産声をあげました。

 ぐちゃぐちゃ。ぐちゃぐちゃ。

 混ざりあっていく音。

 混ざれば、別れることはない。

 同じものとして同化する。

 そうしてぼくらは一つになる。


 色を混ぜていく。

 そうしていくと、新たな色に変わっていく。

 新しい色に生まれ変わる。

 生まれ変わったら、存在する理由も変わっていく。

 存在する理由が変わるなら、生き続けてもいいのかな。


 ぐちゃぐちゃ。ぐちゃぐちゃ。

 ぼくはそうして音を立てる。

 必死になって、混ざりあおうとしている。

 決してできるわけがないのがわかりきっているのに。

 こういうのをなんて言うんだっけ。

 滑稽とか、そういう言葉で表すんだっけ。


 世界は常に混じりあっている。

 数多の自然。人工物。生き物。

 ありとあらゆるものが、自然と調和してできている。

 ぼくももちろんその一部であるはずだ。


 でもぼくは、あまりにもかけ離れている。

 誰もぼくを理解できないし、これからもそうなんだろう。

 ぼくは人と混ざることはできない。

 ぼくは、たった一人だ。繋がっていない。

 繋がりは、絶たれてしまった。


 それからのぼくは、繋がるために動いている。

 またぼくはこうして混ざりあおうとしている。

 ぐちゃぐちゃ。ぐちゃぐちゃと音を立てて。

 この手を埋め込み、その温かさと感覚に混ざりあおうとしている。

 それはたぶんひとときの出来事に過ぎない。

 だから、これが終わったらまた、探しに行かなきゃ。


 でも、今はまだ、こうして混ざりあっていたい。

 ぼくがこの世界と同化していると、その証明をしたいのだから。


 ぐちゃぐちゃ。ぐちゃぐちゃ。


 ぐちゃぐちゃ。ぐちゃぐちゃ。

















「…………」


「……あまりにも……これは」


「報われんな。こいつも、被害者も」


「確か、マルヒのご家族って」


「母親は出産後に死亡。父親は妻が亡くなったショックで、子供を置いてどこかに消えたらしい。親類の下で育てられたようではあったが……」


「あったが?」


「ある程度育ってから虐待があった、とのことだ」


「……やっぱり報われませんね」


「やったことの報いはなくてはならんがな」


「……ぐちゃぐちゃ」


「ん?」


「最後まで彼が呟いてた言葉ですよ。あれは、単なる行為の音のことだと思ってましたが」


「ああ……奴の今の状態を表していたのかもな。詮無いことだが」











『遺体損壊殺人、ついに犯人逮捕!』


『殺害した遺体の腹部を開け、内臓を取り出すなどの猟奇的殺人をおこなってきた犯人が、ついに逮捕された』


『犯行に及んだのは10代の中学生で、女性をターゲットに14人もの人に危害を加えた模様』


『犯行動機は、容疑者の書いた日記からその理由がうかがえ……』


















 ぐちゃぐちゃ。ぐちゃぐちゃ。

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人と混ざりあうこと。 ミウ天 @miuten

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