第三章 運命(キセキ)を変える

「もしもし、色葉?私さ、今日帰る予定だったじゃん。でも一週間延期になったから。よろしく。」

「えっ、お姉ちゃん?何かあっ…。はぁー、また切れたし。」

後で看護師さんに聞くと、体調が悪化したから、という理由だったらしい。電話で言えばいいのに。

「ブッコローさん、お姉ちゃんの入院が一週間延長するそうです。」

「そうか、わかった。色葉、話があるんだ。だから何か用事があっても夕食の時間までには帰って来てくれ。」

ついに私は追い出されるのだろうか。と思いながら「はーい。」と返事をした。

そうして迎えた夕食の時間、ブッコローさんは言った。

「色葉、好きだ。」

またか、と思いながら

「でも私は姉の代わりに来た代理の嫁です。言うのなら姉に言ってください。」

と言った。なぜだかいつもとは違う返事のし方だった。

「代理とか代理じゃないとかそんなもの関係ない。好きなんだ!」

「私も本当は好きなんですっ!でも、私は姉の代わりに来た、ただの妹で好きになっちゃいけないのに…。」

私は涙を流しながら言った。

するとブッコローさんは驚きの提案をした。

「色葉、逃げよう。誰も追いかけてこない場所に。」

「お仕事は?姉は?どうなさるんですか?」

最近、YouTubeのチャンネル登録者数が増えた、と嬉しそうに言っていた。

「そんなもの、どうでもいい。俺はずっと色葉といたいんだ。色葉。今夜だ、今夜、出発しよう。」

そうして私とブッコローさんは誰も追いかけてこない場所へ逃げた。

夜逃げをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る