ぐちゃぐちゃ
草乃
第1話 まとまりない平凡な日常
少し、不思議というか気味の悪さを添えつつ。
ホラー、でもない気も。
――――――――――
仕事にやっと片がついて、そこだけはホッとしながら家路につく。
一人暮らしの部屋は、いつでも真っ暗だけどそれも仕方がない。明かりを付ける必要のある人間が家にいないのだから。
「ただいま」
返事はそもそもない。あるわけない。
あるわけない、のに。
「おかえり」
いつからだっただろう。今のプロジェクトが本格的に動き出して、帰りが午前様になることが増えた頃、のような気がする。
それは突然聞こえ始めた。言葉に反応して、返事をする。けどそれは、ときどき内容が合わないときがあり、それでも不思議とこんなもか、と思えた。
手洗いうがいをして、ずかずかと足元に転がった色々を避けながらときどき踏みながら無遠慮に奥に行く。ソファー兼ベッドに崩れたくなるのをこらえて、カバンを放り投げた。はい、定位置。
「やっと終わった」
「そう、おつかれさま」
上着を脱いでネクタイを緩めながらうろうろ。冷蔵庫を覗いて、作り置きをレンジに放り込む。
温めている間に服を着替えて、気持ちがようやく緩んだところに、温め終えたとレンジに呼ばれる。
「これで一旦、落ち着くな。やっと、次まではしばらく大人しくデスクワークに勤しめる」
「そう、それでいいの」
「いいもなにも、忙しさからようやく開放されるんだ。しばらくは休憩だよ」
「きゅうけいがほしいの」
「たまにはね」
温めたご飯と煮物、それに焼き鮭、それらを並べて手を合わせる。温かい飯は染みるけど物足りない。
時短のために作り置いたものだが、なんとも雑な味がする。
そういえば、掃除もいつからしてないんだ。もう半月は手付かずだろう。明日は休みだから寝て過ごすより片付けてキレイな気持ちで夜に寝たいものだ。
それより飯のあとは風呂に入らなきゃ。もう横になりたい。足の踏み場もない部屋だけど、ベッドだけはすぐに眠れるように何ものせないようにしている。
でも今日は仕方がないな。やっとのことで終わったのだ、今までの中で一番のおお仕事が。すーっと意識が遠のくように。テーブルに頭が落ちる。
「そう、おやすみね、おやすみ」
そんな、声が聞こえた気がした。
ぐちゃぐちゃ 草乃 @aokusano
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