●自然恒星メガ再構築計画(イカロス・ファスト)#1

モアモアは魔道具後視鏡を起動させ、時代へと時間を遡った。

——————————————————————————————————————


恒星メガは、ファルム流星群の衝突をきっかけに体積の30%を損傷し、フレアの暴走を起こした。


その影響で恒星メガ系第3惑星であるパーミルの天空上に(天の裂け目)クラックが現れた。大量の放射線を浴びたことが原因で、大気圏に亀裂が入ったのだ。

そこから浸入した放射物質に晒された大半の生命は、視力を失った。

現在も対流する放射能の影響で、発癌確率は上昇中である。

今もなお、全ての生命に絶滅の危機が迫っていた。

この惑星で唯一〈耐放射線特性〉を持つ種族ハイ・シビルによって、元凶であるメガの損傷を復旧するため、イカロス・ファストという部隊が結成された。宇宙科学技術により恒星メガの損傷を治癒し、全生命を救うための崇高な責務を担っていた。


イカロス・ファストは、全員で300名足らずの少数精鋭部隊だ。

その頂点で部隊を率いる部隊長は、メルトサーチと言う片目の女将軍だった。300名と言うと大部隊のように思えるが、実際メガの直径は2000バーセル(約900マイル)もあり、惑星パーミルの20倍に匹敵する巨大な恒星を相手にするには、あまりに少規模だった。

このボリュームのハンデを埋めるために、政府は3万5000体の工業用ロイド(カウパ-3B)を増援導入していた。


——————————————————————————————————————

ミーメとマーサは後視鏡を通し、100年前のイカロス・ファストの活躍を目の当たりにする事となった。(これで、マイヤーのサブセンスが明らかになる)

——————————————————————————————————————


〈ジジッ…バイパス72へ、ロイド30体緊急手配ジジッ…ちら、メルト…ジジッ…受信者ジッ応答せよジジッ…〉

ノイズ混じりの無線が第7コントロールルームに流れた。

宿直のカルマは、気怠そうに受信機を取り上げ、

〈こちら第7CRカルマ。ジジッ…バイパス72ヘロイド30ジジッ…ですね。ジジッ…破損個所モニタで確認済み、ジジッ…冷却ダクトです。ジジッ…以上〉

「デンデン! この無線どうにかなんないの? ここんとこノイズが酷くて、これじゃ今に通信ミス起こすわよ!」

カルマは乱暴に受信機を叩き衝けた。

部屋の奥から、初老の機械工が油まみれの顔を覗かせた。

「何じゃ。ノイズか? こんだけフレアが上がってんじゃぞ。通じとるだけでも感謝せい。これ以上の調整は無理じゃ」

「それをどうにかすんのが、あんたの仕事じゃないの? こっちは連勤70時間目で、ただでさえ集中力落ちてんのよ」

「なんだじゃと! ワシなんぞ4日も不眠不休じゃ。そもそも根本的にフレアドラグーン(FD)を宥めてもらわん事にゃ埒が明かんわい。現場の女将にそう伝えな」


ファルム流星群によって傷を負った恒星メガ…………。

その傷口から大量のフレアドラグーン(FD)が漏れ出した。

それは大量の宇宙線を放出しながら暴れる凶悪な宇宙生命体だ。

メガ系の惑星であるパーミルの生態系にも深刻な悪影響が出始めた。

よってフレアドラグーン(FD)の討伐は一刻を争う最重要課題となった。そこで〈耐放射線特性〉を持つハイ・シビル種に期待が集まり、《イカロス・ファスト》と言うハイ・シビル種による特殊チームが結成された。

シビル族の中でも希少なハイ・シビル種は、性別が女性に限定されていた。進化論学者の間では、男性のX染色体がハイ・シビルへのクラスチェンジ(進化)を邪魔しているという説が有力だった。


そもそもハイ・シビルの暗紫色の体毛は、宇宙線の有害成分をブロックする特徴があったが、恒星上空での過酷な任務を遂行するために、もう一つ克服しなければならない問題点があった。

……それは、恒星の発する30,000グロス(およそ1万5000°)に達する高熱である。

さすがにハイ・シビルと言えど、この高熱には無力だった。

しかし、植物繊維学者のクライシス教授が、この難題を解決する画期的な発見をした。それはパーミル南部に群生する、アキュラというサボテン科の蔓植物繊維で、これを編み込んだ耐熱スーツは、なんと3万°の耐熱実験をクリアした。

現在イカロス・ファストの戦闘服に採用されている優れものだ。

素材の由来からアキューラと命名された耐熱服は、シームレスのジャンプスーツで、ハイレベルな機動性とファッション性を兼ね備えていた。

一般の女性達の間でも、このアキューラは大流行したほどだ。

女性だけで構成された《イカロス・ファスト》の勇士はメガ再建の切り札として、事あるごとにメディアに取り上げられ、シビル族の女性達の憧れの的となっていた。

いつしか困難に立ち向かう女性の象徴となり、勇敢な女神達として捉えられていった。

イカロス・ファスト本部庁舎の広場には、彫刻家サルカンドーレの(イカロス群像)と名付けられた女神達の彫像が、この星を守るシンボルとして常設されている。


[カウパ-3B]30体は第7CRカルマの指令を受け、トライアングルの編隊を組んでバイパス72の冷却ダクトへ向かっていた。眼下には灼熱のメガの傷口が深紅に広がっている。


——————————————————————————————————————

※フレアドラグーン(略称:FD 俗称:紅竜)

宇宙生物分類学上では、ガス状気化生命に属する。主に恒星のフレア現象に擬態する寄生生命で、この呼び名もその姿が竜に酷似していることに起因していた。翼を広げ鋭い尾剣を振り回して暴れるため、行動規模は有に数10kmを越える。フレア活動の盛んな恒星の表層に巣くい、常に2〜30体で群生する。表皮は摂氏20000°を越す高温で、口角からは紅蓮の炎を吐き出す攻撃はクリムゾン・ブレスと呼ばれる。極めて攻撃的なその性格は全宇宙でも1、2を争う。特出される攻撃の中でも、一番の破壊力をもつカーマインブレスは凡そ数千万度の高熱の息を吐き全てを焼き尽くす。高熱耐性のアキューラスーツでも耐えきれないほどの脅威である。

主にヘッドと呼ばれる主竜(親玉)が、ザコ(仕竜)を3〜4体従え出現する。ヘッドを倒さない限り、ザコは何回でも復元する場合がある。

——————————————————————————————————————


地表は有機的にフツフツと流動を繰り返す。

今にもフレアドラグーン(FD)が襲いかかって来そうな予兆を、紫の毛皮に感じながらメルトは自分の部隊と連絡を取った。

ロイド30体の現在地を確認しつつ、自らも現場(冷却ダクトの破損個所)に向かっていた。

〈メルト将軍! こちらレフトウイング監視担当、キャンベル。只今目視にてロイド30体確認しました。現場到着までおよそ1分20秒。安全保持警戒飛行にて追走中オーバー〉

〈メルトだ。キャンベルか…了解した。そのまま追走願う〉

メルトはそれを部隊全員に通達するため、通信モードをパーソナルからオープンに切り替えた。

《メルト部隊全員に告ぐ。キャンベルよりロイド確認の通信が入った。

各自フレアに注意し警戒飛行にて現場へ急行せよ》

《イエッサー》

《ラジャ》

《OK》

《了解》

《承知》

《御意》

《あいよっ》

部隊の全員から個性的な返事が返ってきた。


褐色のガスに阻まれ、視界はあまり効かなかった。

メルトサーチ将軍を含む9名のイカロス第4部隊は、耐熱ゴーグルニ放射線サーチ機能を表示させ、少しでも放射線の希薄なゾーンを探しながら目的地を目指した。


〈将軍! ギャッ!!〉

メルトの耳に、最前線で現場に向かうキャンベルの叫び声が聞こえた。

〈どうした! キャンベル〉

〈FD出現! 右の羽先が目前を掠めました。反転して姿勢を立て直したんで、もう大丈夫です〉

〈こちらメルト。左舷後方20ヤードよりそっちの機影は確認している。そのまま現場へ向かえ。こっちももうすぐ合流できる〉


〈ラジャ! キャンベル承知しました。FDの現在位置は自分の下方500ヤードを静かに潜行中。ヤツの飛行音を確認しれいます。しかし、いつ再浮上するかは予測不能。オーバー〉

キャンベルがフットウインドから覗き込むと、うっすらと深紅の影が揺らめきながら漂っていた。熱したフライパンに油を注いだ時のような、ジュワ〜〜〜ッという揮発音をベースに、プチッ、プチッと何かが弾けるような音が混在する。

この不快な音こそがフレアドラグーン(FD)の存在を、リアルに物語っている。

『チッ! いつに聞いても耳障りな不協和音だ…』

キャンベルは、咄嗟に耳を押さえた。

その指先に、深く抉られた左頬に触れた。

ちょうど1年前、FDの爪に削られた古傷が疼く。


〈メルティー応答願います。カンナとジルがFDにやられました〉

メルト将軍にマイヤー隊長から緊急通信が入った。

〈メルトだ。キャンベルの確認してたヤツか?〉

メルトの返事にマイヤーが返した。

〈同じヤツで〜〜す。あちきの見た感じじゃぁ、カンナとジルはメインエンジンを損傷し2機とも飛行不能に陥った様子で〜〜す。只今メディカルステーションの紅丸婦長に救護班を要請〉

〈マイヤーご苦労、救出要請は了解した。とにかく無事なものは現場へ向かえ。修復ロイドの警護を最優先する〉

その時点でキャンベルとメルトサーチ将軍は現場に到着していた。

ロイド30体も無傷で、修復作業に掛かっている。

ホバリングで2人は近づき、近距離通信に入った。

メルトは直接キャンベルに話しかけた。

「おい! キャンベル2人やられたぞ。フレアの規模を報告しろ」

「はい。レベル2クラスです。大きさはたいした事ありませんが、早いヤツでした。なのでカンナとジルは避けられなかったんでしょう」

「しかし、たかがバリアパイプの施工にこんなにもたついてちゃ…。メガ再生にはまだまだ時間が掛かるな」

「まったくです。あたし達だけじゃ、ムリっす……。この冷却パイプの修復だって、ロイドたった30体じゃ丸一日掛かりますよ」

キャンベルはそう言うと眼下で、プシュ〜〜〜〜〜ッとガスを漏らす破損個所に目をやった。既にロイドはパイプに入った亀裂の溶接作業を始めていた。

2人がぼやいていると、ほどなく残りの5機が現場に到着した。

カンナとジルを欠いたため、イカロス・ファストのシンボルであるペガサスの刻印が刻まれた戦闘機は7機。

これがメガ再建計画を先頭で牽引する、女将軍メルトサーチの第4部隊の勇姿だ。既に第1〜第3までが壊滅した現在、正にこの第4部隊こそがこのミッションを遂行する最前衛部隊だった。

「よし、全員そろったな! およそ24時間。ロイドが作業を終了するまでFDから現場を死守する。それが我々の使命だ!」

わかりきっていたが、連日の激務に隊員たちはもうボロボロだった。


メガ再建の為に結成された、メルトサーチを将とする《イカロス・ファスト》の任務は大きく2つに分類される。

一つは損傷したメガの治療にあたるロイド達のサポート。

詳細は、ロイド自体の安全の確保や工事備品や工事車両の誘導。

修復作業をスムースに運営するための基本任務だ。

これには一般のシビル種も多数参加していた。

だがもう一つはハイ・シビルでなければ務まらなかった。

現場を荒らす外敵FD(フレアドラグーン)との戦闘。

フレアドラグーンは大量の放射線を帯びた宇宙生命であり、それを相手に互角に立ち回れるのは、もはや放射線耐性を持つハイ・シビル種を於いて他にはいなかった。

それがメルトをリーダーとする、たった9名で編成されたエリートチームなのだ。


〈カンナっす。離脱すんませんシタ! 只今復帰ルート飛行中っす。ジルも併走してます。5分で現場に再合流しやっす! オーバー〉

〈こちらメルト。了解。そちらのダメージは? オーバー〉

〈カンナっす。あたいの4号機はセンターブースター損傷。メディカルオペレーションのピットにて新品と交換。問題ないっす!〉

〈ジルです。右耳噛みつかれました。ピットのドクタに治療してもらいました。ですが……頭に包帯巻いてるもので、ちょっとダサいです。お見苦しくて申し訳ございません〉

〈メルトだ。ジル、生きてりゃいいさ。それより早く合流しろ、現場で待ってるぞ〉


「よし。カンナとジルもあと数分で到着するようだ」


バイパス72の冷却ダクトには、大きな亀裂が縦横斜めに5〜6本走っていた。そして、その隙間から青みがかった冷却ガスを吹き出している。

ロイドは懸命にその傷口を耐熱パテで塞ぐ作業に追われていた。

メルトサーチはその上空を飛び、状況を把握すると直ぐに部隊に指示を飛ばした。

《キャンベル! シュナイダー! あたしと組め。トライアングルだ。》

視野の端で復帰した2機を確認すると、《全員いつも通り、トライアングル編成セットアップ! ベルトリカの隊は南西10時の方向へ。

マイヤーは北の下方だ。地表すれすれを飛べ!》

《イエッサー》

《ラジャ》

《OK》

《了解》

《承知》

《御意》

《あいよっ》


3人一組の三角形(トライアングル)の編隊を組み、9機のジェットはメルトの指示に従い持ち場の空域に付いた。

ロイドの作業は順調に進んでいるようだ。先程より漏れ出す冷却ガスの量が減ってきている。


——————————————————————————————————————

※トライアングル編成(通称:トリフォー)

古来より空軍で採用されていた代表的なフォーメーションで、先頭に主眼TE(トップアイ)と呼ばれるリーダー格を配す。右舷RW(ライトウィング)には迎撃のスペシャリストを置き、左舷LW(レフトウィング)に遊撃手。配置が三角形であることから、トライアングルと命名された。最も攻撃的なフォーメーションとして現在はイカロス・ファストに受け継がれていた。

——————————————————————————————————————


「キャンベル! ロイドの作業進行状況は?」メルトが直接通信で聞いてきた。LW担当のキャンベルはロイド30体の工事行程プログラムを自身のコンソールに呼び出した。モニタにダクトの3D画像と作業進行グラフが表示される。確認して答えた。

「キャンベルです。将軍へ報告します。作業開始より25分経過。修復作業進行状況8%完了。安全復旧までの作業時間は推測ですが、およそ22時間20分」

「まだ全然進んでないじゃん。大将、やっぱロイド30体じゃムリっすよ。追加召集掛けましょうよ」と、LWのシュナイダーが割り込んできた。

すかさず、怒りの将軍からリターン。

「いまさら何ほざいてんだ、シュナイダー。そんなこたぁ、分かってる! イカロス本部の現状じゃこれ以上の増援はムリだ。何ならお前が直接第7CRカルマに交渉するか?」

「ムリっす……」とだけ言って、シュナイダーは撃沈した。


《こちらメルト。全員に告ぐ。バイパス72の冷却ダクト修復まで有に22時間はある。長丁場だが、完全復旧までこの空域を死守せよ》

《イエッサ! ベルトリカ隊。南西空域はミーにお任せを》

《マイヤー隊。ラジャ!! 下方空域見張ってま〜〜す》


メルトサーチの部隊は3つの三角編隊を組んで、15分ほど現場周辺の警戒飛行を続けていた。

グググッ……と、メガの深紅の地表が盛り上がり。

ドビャッと5体のフレアドラグーンが這いだして来た。

《こちらマイヤー隊。LW担当チャーミ。下方4km黒点反応ゾーンよりFD出現! レベル4クラスです、さっきカンナとジルが遣られたヤツよりおっきいです》即時、メルトより指示が飛ぶ。

《メルトだ。FD出現了解した。マイヤー隊は出鼻を押さえに向かえ! ベルトリカ!左からサポート。こちらは上から俯瞰して指示を出す!!》

《ラジャ》

《イエッサ》


溶岩を滴らせ数100mはありそうな巨体が、赤黒い地表のマグマを突き破り出現する。

その様子に「いつ見ても、おぞましいね。あちきは嫌いだよ。あの一番でっかいのが主体だね。あちきがあいつ押さえるから、ちびザコ達4匹はあんたらに任せるよ!」マイヤー隊長の指令で、「はいっ」「御意」とLW担当チャーミとRWの伽藍(ガラン)が答えた。


「チャーミ! お前はLWだ。ザコ4匹は頼んだ。遊撃手の役目だからな! 伽藍(ガラン)はあちきの援護頼む、頭取りに行くぞ。では散開」

マイヤー隊長の号令で三角編隊を崩し、まず遊撃手のチャーミが地表を這いずる4匹のザコに向かって急降下していった。

伽藍はマイヤー隊長の後方にピッタリ張り付き、ブラインドポジションをキープした。

《将軍!! マイヤー隊。戦闘態勢に入りました》

《メルトだ了解した。ベルトリカ隊に左舷から援護に向かわせた。こっちは現場保守を行いながら、全体フォローする。熱源レーダーでFDの位置は把握してるから心配すんな。なおFDの迎撃経過は随時報告せよ》

《ラジャ》


FD(紅竜)は4匹のザコを従え、表皮の至る所から赤黒い内部エネルギーを噴出させながら上空を目指して登ってきた。

「師範! 紅竜ヘッド左舷150mまで接近。射程に入りました。接触まで10秒を切ってます。危険範囲見做しラピスビーム威嚇発射します」

RW伽藍から、緊迫した通話が入った。

「よし、一発おみまいしてやれ!」

というマイヤー隊長からの承諾を受け、伽藍がトリガーを引いた。

シュオ〜〜〜〜〜〜〜〜ン

紫紺の野太い光線が、伽藍の戦艦の主砲から発射された。

その光の束が、紅竜の頭を直撃する。

グロ〜〜〜〜〜ン!!

FDは雄叫びをあげ一旦その首を左右に振り、ビリビリと痺れた動作をしたあと、苦しそうに頭を下げ下降した。

「今だ!」

マイヤーはそう叫び、FDを追走する。さらに3発のラピスビームを連射した。

シュオ〜〜〜〜〜〜〜〜ン

シュオ〜〜〜〜〜〜〜〜ン

シュオ〜〜〜〜〜〜〜〜ン

FDは完全に戦意を喪失し、大きくターンすると黒点の巣に潜って行った。

《こちらマイヤー! FD威嚇鎮静しました。今後30分は頭出さないと思いま〜す》

《メルトだ。良くやった……。以後警戒を持続せよ》

《ラジャ》

その時、チャーミの叫び声。


ギャ〜〜〜〜〜〜ッ!!

「姉さん! ザコのバーストに巻き込まれた!」

「チャーミ大丈夫か? あちきはどうにか回避した。伽藍!状況解るか? 報告せよ」

「我、観するところ、ザコの内の1匹がバースト。被弾半径500m。我も巻き込まれ両ウイングに被弾。操作不能。操作不能。エマージェンシー!!」

《メルティー! チャーミ戦闘不能。伽藍も被弾。レスキュー要請たのんます》

《メルトだ。ベルトリカ、マイヤー隊の2人が被弾した。マイヤー隊長が孤立している。救護に向かえ》

《ボスへ、ベルトリカです。距離200。目視で確認してます。ミーはマイヤーと合流に向かいます。「カンナ、ジル下方200だ。付いてこい」》

「カンナっす、承知。追走します」

「わたくしも、まだ耳痛いけど……ついてます」

ジルは先程のFDとの接触で負った右耳の傷を、包帯越しに撫でた。

「ジル! お前は遊撃手なんだから、ザコFDの現状把握を怠るな! 1匹はバーストしたから残り3匹だ。しっかりトレースしろ」

「OKですぅ………」


メディカルステーションから発進されたレスキュージェットが1機、ハイスピードでベルトリカ隊の横を突っ切り、

チャーミと伽藍の救出に向かって地表へ突っ込んでいった。

錐揉み状態で垂直に落下するチャーミを、エアクッションの付いたマジックハンドで見事にキャッチし収容した。次にフラフラと辛うじて飛行する伽藍の被弾した機体を捕獲ベルトでガッチリと固定。

《マイヤーです。只今、チャーミ、伽藍の2名。無事レスキューに収容》

《こちらメルトサーチ。2名収容は了解した、お前はベルトリカ隊と合流しろ》

《ラジャ……。もう頭上に見えてま〜す。ベルと合流しま〜す》



➡️continue to next time

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る