●ミッション277
おいらが【ラピス・レイヤー】に合格してから、早1年が過ぎようとしていた。あの空の傷“憎っくきラスト・クラック”と奮闘する日々が続いている。入団以来宿舎ビルの4Fが、ガロンのマイルームとして割り当てられていた。チーム58-αと表札が掛かっていた。ただワンフロアをたった1人でと言う訳にはいかず、チーダイとセルバムも相部屋……、つまり3人でルームシェアしているのだ。
これには理由があった。
そもそも【ラピス・レイヤー】の対戦スタイルが、スリーマンセル(3人1組)を基本とした編成を推奨していたためだ。
日頃から3人1組の連携を向上するために、同じ空間で生活を送ることを義務ずけているのだった。
ゴ〜〜〜〜〜〜ン! ゴ〜〜〜〜〜〜ン! ゴ〜〜〜〜〜〜ン!
毎朝きっかり6:00に銅鑼(どら)の音が部屋中に響きわたった。
チーダイがわざわざ故郷から取り寄せた、迷惑な巨大楽器だ。
何でも彼の村では、この音で目覚める習わしがあるそうだ。
「ガロン! セルバム! もう朝ある。今朝はホウライ山の婆ーさまから届いた(火吹きヤモリ)のクロクムッシュある。冷めちゃうある。早く起きよ!!」
唯一世話焼きのチーダイが、この部屋の賄い係になっていた。
と言うより、あとの2人が何もしないので、必然的な結果なのだが。
ゴ〜〜〜〜〜〜ン! ゴ〜〜〜〜〜〜ン! ゴ〜〜〜〜〜〜ン!
「あ〜〜〜。う・る・せ・〜」
巨大なハンモッグで寝返りに失敗したセルバムが、2m下のフローリングに落下した。
ドスン★ ゴロゴロゴロ★
グラグラという振動で、その横の作業台で突っ伏したまま爆睡していたガロンの耳がピクッと反応した。
「何だ! 何だ! ムニャ地震か? 震度ふわ〜〜〜」
「ガロンさん、寝ぼけダメある。シャキッとね」
チーダイはガロンを作業台から、羽交い締めからのバックドロップで乱暴に退かした。
「ここ、作業台件ダイニングテーブルある。食事の時は、食事するある」
テーブルを台拭きでキレイにすると、摩訶不思議な朝食が並べられた。
「痛って〜〜〜」
と腰を擦りながら、まだ半分寝ぼけた表情でセルバムは椅子に座った。
何百回もこんな朝を繰り返すうち、身についた条件反射だ。
「なんじゃ、こりゃぁ」
セルバムは目の前のグロテスクな朝食に吠えた。
「これ美味ある。婆ーちゃん送って来た故郷のご馳走、火吹きヤモリのローストある」
びっくりしたセルバムは、朝食の皿の上でミイラ化したヤモリに度肝を抜かれ完全に目が覚めた。
一方ガロンは寝ぼけたまま、カリッと一口かじった。
「うまっ!」
ホットチリのような刺激が口内を襲い、次に深い旨味を感じた。
「うめえぞ! 食ってみろ」
ガロンはそう言って、あくびをしたセルバムの口にヤモリを捩じ込んだ。
グォホッ!!
と咽せながら、ほうばる。
「本当じゃ! こりゃ刺激的にうめえな」
「美味。美味。良かったある」
チーダイも懐かしそうに故郷の味を満喫している。
その時だった、天井に付いている赤い回転灯が廻り、緊急出動のアラームが鳴った。
ビ〜〜〜〜〜コ。ビ〜〜〜〜〜コ。ビ〜〜〜〜〜コ。
館内放送が流れた。
《チーム58-α! 南西38°高度3000に宇宙線異常を確認した。ヘルペレウス混入の加工性あり。緊急出動を要請する》
ビ〜〜〜〜〜コ。ビ〜〜〜〜〜コ。ビ〜〜〜〜〜コ。
「58-αって言ったら、あたしらある」
「チッ! ……南西38°ったら、きのう処理したあたりだぜ。また綻びたのか? にしてもヘルペレウスは厄介だな」
舌打ちをするセルバム。
「ヘルペレウスあるか? あの虫嫌いある。昨日の処置じゃ、不完全だったあるかな?」そう呟くと、
チーダイは賺さず、デスク上にあるヒツジ雲使いコールボタンを押して、相棒のオーテュライに召集の合図を送った。
ガロンはミーメ、セルバムはグラマンとコンビを組んでいた。
3人はほぼ同時に相棒に呼び出しを掛けた。
およそ1年の経験で、ミッション発動に対する反応速度は一端に身についている。
「また、食事中ある! たまにはきちんと“ごちそうさま”したいある」
確かに、ここの所4回連続で食事中にスクランブル(緊急出動)が掛かっていた。それだけクラックの状態が不安定なのだろうが、たまたまにしちゃ、タイミングが悪すぎる。
ガロンもチーダイの気持ちには同情した。
「まったくだな」
と【レイ・ガード】を装着しながら、同意した。
チーダイもセルバムも同時に【レイ・ガード】を被る。
ガロンが入隊試験の時に持ち込んだこのヘルメットは、優れた解析機能を評価され、今や【ラピス・レイヤー】の標準装備として採用されていた。
カン! カン! カン!
エアロバイク収納ゲートの、全面ガラス張りのシャッターを叩く音。
その向こうに赤い放牧着が見えた。
「あ! ミーメ。早いな、もう来たのか」
窓越しに驚いて振り向いたガロンに、親指で後ろを指した。
オーテュライとグラマンの姿もあった。
「おい! みんな。急げ! お嬢様達が、お揃いだぜ」
ガロンの呼びかけに、チーダイはすでにエンジンを吹かして
〈スタンディング バイ〉と無線で応答した。
セルバムも慌ててフライトスーツに腕を通しながら、
〈スタンディング どうにか バイ〉
モゴモゴとまだ火吹きヤモリを噛み砕きながら、中途半端な返事を返す。
〈よし、南西38°高度3000だ。行くぞ! チーダイ、殺虫剤持ったな〉
ガロンは頷くチーダイを確認した。
そのガロンのかけ声でシャッターがグワンと開き、3台のエアロバイクは颯爽と空中に飛び出していった。
すぐさま、それぞれ相方とアイコンタクトを交わし、いつものようにトライアングル・フォーメションを組んだ。
〈ガロン! 昨日の処理が甘かったんじゃないの?〉
ミーメは鋭い目でキッと睨んできた。
〈そんなこと、ねえよ! パフが食べ残したんじゃねえのか?〉
〈あら? ヒツジ雲一の食いしん坊を疑うの?〉
〈あ〜〜〜〜! やめろやめろ、???の応酬は不毛だぞ!〉
編隊のトップを張るセルバムが、わざわざ後ろを振り向いて怒鳴った。
〈現場行けば、分かるある〉
〈そうね。みんな【レイ・ガード】被ってんだから、直ぐ分かるわ〉
オーテュライがチーダイに同調した。
空中に出ると3人は、当然の如く三角形の位置取りを組んだ。
これはトライアングル編成(トライアングル・フォーメーション)。
略してトリフォーと呼ばれる、《イカロス・ファスト》から継承された【ラピス・レイヤー】の基本的なフォーメーションだ。
ガロン達【ラピス・レイヤー】は、皆3人一組にグループ分けされていた。その理由はこの編成が基準となっているからだった。
三角の先頭、主眼(トップアイ)TEと呼ばれるポジションには、最年長でリーダーシップのあるセルバム。左舷(レフトウイング)LWは、攻守に渡り自由にバランスを取る遊撃手ポジションだ。
ここは機動力のあるチーダイが担当している。
最後に右舷(ライトウイング)RW迎撃手は、戦闘力の高いガロンが位置していた。
そのトリフォーの下に寄り添い、3人のヒツジ雲使いが、三角形の白い雲の形を形成し、まるでその影のように併走していた。
その昔、この空を守護した伝説の防衛軍イカロス・ファストを彷彿とさせる勇姿であった。イカロス・ファストの団員は、全て究極の放射線耐性を誇るハイ・シビル種で構成されていた。今も尚、惑星パーミルの歴史上最強の防衛軍だと語り継がれていた。絶滅したのでは、とさえ噂されるハイ・シビル種の衰退により、現在はその原種である〈シビル種〉が【ラピス・レイヤー】を結成し防衛軍を代行していた。
種としての放射線耐性は落ちたものの、その下にヒツジ雲使いという強力な助っ人を従え、防衛バランスを保っていた。
〈南西38°高度200km! そろそろ現場に着くぞ! 各自スタンバれ!!
誤差1200m、左旋回して修正する〉
セルバムの指令が全員に届いた。
トリフォー編隊の美しい二等辺三角形は、一糸乱れず左へ大きく旋回した。
ジジジッジジ★★★★★★★★★
クラックの隙間から見える濃紺の宇宙へ、金色の細かい稲妻が放電している。未だ活発な放射線活動が行われている証だ。
ジジジッジジ★★★★★★★★★
「大変ある! 急いで処置をしないと、また裂け目が拡大するある」
チーダイが鬼気迫る声で叫んだ。
「わたしが、【笠】で防御するから、あなたはラピスビームを照射て少しでも裂け目を塞いでちょうだい!」
オーテュライはそう返した。
チーダイとオーテュライのコンビは、クラックの修復に掛かった。
〈左舷20°よりヘルペレウス群、接近! 概算だが、その数4000匹ほどだ! ガロン対応できるか〉
セルバムからの指示で、ガロンはすぐさま【レイ・ガード】で左20°を確認した。
〈うわっ! すげえ塊だ〉
【レイ・ガード】のレンズに空を灰色に濁らせる、細かい粒子が写った。
ヘルペレウスとは、3ヶ月前にパーミル科学省によって存在の実体が明らかにされた、宇宙生命体である。単体は体長10cmほどで、矢印のような姿をした帯電気体生命に分類される。気体生命としてはパフ達ヒツジ雲と同種の分類になるが、常時電気を帯びている点が特殊ではある。
「パフ! ヘルペレウスだけど、食べれる?」
ミーメの問いに、パフは露骨にイヤイヤをした。
{あれ、ピリピリするから……。美味しくない}
「あ〜〜ん。じゃあ【パックン】は使えないわねぇ」
あきらめ顔のミーメに、グラマンから無線が入る。
〈あたしがやるよ。【イカズチ】なら相殺できる!〉
グラマンは、すでに雷龍の黄金の角笛を構えている。
キ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!
キ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!
と甲高い音色を吹き鳴らし、[黒ヒツジ雲]を召還し始めた。
〈みんな! 急いでグラマンから離れるのよ。 離散距離30m確保!!〉
ミーメが叫ぶと、全員あわてて距離を取った。
グラマンの召還した[黒ヒツジ雲]達は、眼前に迫るヘルペレウスの群に突っ込んでいった。
バリバリ∇∇∇ バリバリ∇∇∇ バリバリ∇∇∇ バリ∇
と、凄まじい放電を起こして、ヘルペレウスを取り囲んでゆく。
[黒ヒツジ雲]はグラマンの笛の音に操られ、ヘルペレウスを八方から取り囲んだ。
逃げ場を失ったヘルペレウスはジリジリと一塊に集まり、バリバリ∇∇∇と激しい放電を始めた。
「今よ〜っ! 突っ込めぇ〜」
グラマンは雷龍の角笛を大きく前に振り翳して。
一斉に【イカズチ】となった黒ヒツジ達は、その群を覆い尽くした。
バリバリ∇∇∇ バリバリ∇∇∇ バリバリ∇∇∇ バリ∇
ヘルペレウスを丸飲みした黒雲は、一瞬大きく膨れ上がる。
体内で、黄色い稲妻がピカッっと光る。
何度か明滅を繰り返した後、徐々に沈静化していった。
頃を見計からい
キ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!
と一笛吹いた。
一瞬にして黒ヒツジは消え去り、その空間にはもはやヘルペレウスの欠片も残らなかった。
〈はい! 消去作業終了よ。 みんなもう近付いても大丈夫よ〉
グラマンのOK無線で、部隊は再びトリフォーを組み直した。
チーダイとオーテュライもクラックの修復を終え、隊列に戻った。
〈前方4000より、空気シャワー発生。効果範囲1kmに及ぶある〉
とチーダイ。
ガロンが【レイ・ガード】で認識し返答した。
〈おい! 中心部にニュートロン4〜5発、潜んでるぜ!!〉
主眼のセルバムが、指令を出した。
〈ガロン。ニュートロンの迎撃頼む。オーテュライとミーメで空気シャワーの対応を〉
オーテュライとミーメは、軽く敬礼し先頭に並んだ。
{ミーちゃん。半分くらいは食べれるかなぁ〜}
そのパフの言葉に、オーテュライが返した。
「じゃあ、残りはあたしが【笠】で時間稼ぐから、ミーメはセカンド部隊をスタンバって!」
「オッケ〜。パフ、増援呼ぶから無理して食べ過ぎないでね」
パフはパチッとウインクをして了解すると、大きな口を開けた。
ガロンは空気シャワーのノイズを消すため、【レイ・ガード】の可視範囲をニュートロン検出モードに設定した。
ウイン、カシャンと左目のレンズが入れ替わり、ニュートロンの姿がクッキリと浮かび上がる。
ラピスティックの照準を接近するニュートロンに合わせ、
トリガーに指を掛けた。
凡そ0.3秒で、ニュートロンの4本の矢がグンと接近してくる。
〈いや! 5本ある。一番左のにもう一本シャドウアングルで、重なってるあるよ! キミのポジションからじゃ見えないある。そいつはワタシが破壊する〉
〈おう、助かる。てっきり4発だと思ったぜ〉
無線を返しながら、ガロンは目前に迫る4本のニュートロンに集中した。
【レイ・ガード】のスコープ照準を200倍にすると、対象は拡大されてより狙い易くなる。
スコープ内で黄金に輝く標的に向かって、ガロンは4回引き金を引いた。
シュ〜〜〜〜〜〜〜〜ン! シュ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!
シュ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!
シュ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!
槍の様に鋭いニュートロンの塊は、ガロンの放ったラピスビームによって打ち消された。
ほぼ同時に右斜め後方から、隠れた5本目に向けビームを放った。
ガロンの斜線を妨げないよう、ビームの出力幅を極限に抑えた細いラインが空間に引かれる。
シューーーーーーーーォン!
チーダイのビームは繊細なコントロールで、ニュートロンのコアを正確に捉える。
シュン! と小さな破裂音を残し消滅した。
〈相変わらず、見事な狙いだな〉
それを見ていたセルバムの、いがらっぽい無線が響いた。
〈サンキュ! チーダイ。こっちも4本は破壊した〉
ガロンも後ろのチーダイに、親指を立てて礼を言った。
そのころミーメは第二陣を20匹ほど空間に呼び出し、前線で満腹になったパフ達とポジションの交代を行っていた。
「パフ! もういいわ。増援来たから交代して。後ろでチョット食後の休憩よ。あ、それと左側に空気シャワーがちょっと流れちゃった。オーテュライ、少し集めてくれる」
「分かってるって。把握してるからやってるよ」
ミーメに指示されるまでもなく、既にオーテュライは扇状に広げた【笠】で、パフ達が食べ散らかしたシャワーの残骸を一カ所に集めていた。
{ゴメン。オーちゃん……。いつも食べ方汚くて}
パフは大きなお腹を抱えて反省の言葉を残すと、おずおずと前線から退いた。
オーテュライは微笑むと、
「いいって。あんた達の【パックン】には何時も助けられてるよ。なんせ浄化までやっちゃうんだから。すごい能力よ、自信もってね」
そう言ってパフを労った。
その瞳は、優しい姉さんの憂いが含まれていた。
ミーメとオーテュライは協力して、空気シャワーの残滓を処理しているころ、セルバム主眼(トップアイ)TEの指示で、ガロンとチーダイは再びトリフォーを組み直しクラックの修復を再開していた。
〈しっかし、この綻びは解せないぜ。昨日あれだけ修復作業したのによ〉
セルバムのぼやきが聞こえる。
〈しかたないある、相手は自然の力よ〉
と達観するチーダイ。
〈まぁ、しっかりやるしかねえよ。修復データはピットに記録されてるんだ。帰ったらじっくり原因究明しようぜ〉
ガロンが珍しく真面目な一面を見せると、
〈おぅ? 優等生めいて、どうしたんだ〉
とセルバムが茶化した。
小一時間も修復作業を行った、ちょうどその時【ラピス・レイヤー】本部から無線が入った。
マックスは本部のマルチモニタで、現場の様子を伺いながら通信する。
《こちら本部マックス! チーム58-αへ。 ヘルペレウス抹消と宇宙線異常の回復を認めた。作業を終えピットへ帰還を命ずる。ご苦労だった》
ふ〜〜〜〜っ。
長いため息と共にセルバムが言った。
〈お〜。やっと本部のOKが出たぜ。〉
チーダイが3人のヒツジ雲使いに別れの手を拭りながら
〈協力ありがとね。夕飯ご馳走するある、今晩でもピットレストラン“チーム58-α”へおいで。今日のお礼ある〉
と勝手に3人の娘達を誘うチーダイ。
ガロンは内心
『あの汚ねえ倉庫を。どうしたらレストランと呼べるんだ……。まぁあんたの料理は確かにプロのコック並だがな』と思った。
〈帰還だ! 行くぜ〉
微動だにしないトリフォー編隊のまま、セルバムを先頭に美しいターンを決めて銀色の三角形は眼下に消えた。
その様子に、このチーム格好つけすぎ…………。
と、ミーメ達3人のヒツジ雲使いは、少々呆れ顔で見送った。
こうしてチーム58-αの277回目のミッションは、無事終了した。
まぁ、気分的には昨日の穴埋めだったので不満足って感じは否めなかった、実際3人とも多少の後ろめたさを感じていた。
『こんな自分の尻拭いちっくなミッションでも、本部への報告書にゃ277と書かなきゃなんねえのか。ま……規則だから仕方ねえか』セルバムはチームリーダーとしてそんな事を考えていた。
一方チーダイは、さっさと気持ちを切り替えて、今夜のディナーパーティーのレシピを思案している。
ガロンはここの所ずっと、ラピスティックの精度について悩んでいた。
今一つシックリこないのだ。
終了直後こそミッションについて悩んでいたが、ピットに到着する頃にはすっかり三者三様の思考回路に復旧している。
何時までもだらだらと引きずらず、ON・OFFの切り替えが早い。
まあ、これがこのチームの特徴だった。
長所なのか短所なのかは、今の3人にはまだ分からなかった。
ガラガラガラッ!!
チタニウム製のシャッターが開く。
3機のエアロバイクがなだれ込み、エンジン停止。
「おい、オレは本部に報告しとく」
そう言い残し、セルバムは自室のパソコンに向かった。
エプロンを腰に巻き付けながら、チーダイはキッチンへ。
「火吹きヤモリがまだ沢山あるある。ピッツァにでもアレンジするある」
ダンッ!!★★
と、作業台にラピスティックを乗せ、ガロンは工具を手に取った。
「ここがブレるのか? 上下は問題ないんだが、左右に0.58mm程誤差が起こるんだよなぁ………」
万力でスティックのヘッドを固定し、ラジオペンチを手にした。
毎度の事だが、全員がほぼ独り言になっていた。
※ラピスティック
【ラピス・レイヤー】の標準装備。全長2mの槍状の武器で、その先端(ヘッド)にラピスラズリの結晶が装填されている。この結晶体は非常に屈折率が高く、ビームを凡そ300%の威力に増幅して照射可能である。ラピスラズリに内在するエネルギーを抽出し、光線に変換するアダプターが開発され、武器として完成した。武器としての歴史は古く、あのイカロス・ファスト時代に既に使用されていた。
イカロス・ファストの任務は、高濃度の放射線に包まれた現場(恒星メガの修復)での作業には欠かせない武器となる。
ラピスティックから照射されるビームには、放射線を破壊するパワーがあり、現在クラック修復任務に就く【ラピス・レイヤー】達もメイン武装として重宝している。
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