●初めての夕食会
チーダイは火吹きヤモリにスパイス振り下味を付けた。
鍋にカラカスオイルを浸し、180°の油で素揚げにしてゆく。
投入すると、ジジッと油を弾く音がしてヤモリの表皮が黄金色に変色した。唐辛子を揚げた時のような、刺激煙が立ち上がる。
「おっと。この煙は危険ある」
チーダイは素早く鼻を抑えた。手のひらでパタパタと煙を避けながら、菜箸で巧みに食材を泳がせ、全体に火が回るのを待った。
その間にステンレスのボールに数種の香草を入れ、バルパルオイルと胡椒を振りかける。木製のスリコギで潰すようにかき混ぜた。
ドロッとした深緑のグレービーソースが完成した。
ちょうどコンガリと揚げ上がった火吹きヤモリを、手早く揚げ鍋から取り出し油切り網に並べる。
バタム!!
とドアを開け出てきたセルバム。
キッチンから立ち上がる煙を吸い込み、
「グヲッホン!! 何だこの有毒ガスは! ムホッッ、ムホッッ! チーダイ、科学実験ならオレの居ねえ時にやってくれ」
目に涙を浮かべ訴える。
チーダイはニッコリ微笑んで振り返り、
「セルバム。美味しい料理には多少のリスクあるあるよ」
そしてアッハハハッ、と笑い飛ばした。
セルバムは睨みつけただけでチーダイをスルーした。
それよりも作業台のガロンに興味を引かれ、歩み寄った。
「おう! どうした。故障か?」
「いいや、ちょっと微調整だよ。どうも左右のブレが気になってな」
ガロンはアダプターの調整に四苦八苦していた。
それを見ていたチーダイが、料理の手を止めて声を掛けた。
「きっとアダプターのせいじゃないある。原因は結晶体の歪みある」
その意外な発言に ガタン!と椅子を鳴らし、ガロンはキッチンに振り向いた。
「チーダイ、どう言うことだ。詳しく教えてくれ」
驚きを隠せず、思わずそう疑問を投げ掛けた。
だが、もともとチーダイの洞察力を高く評価していたので、声を荒げたわけではなく口調は穏やかだった。
「後で、じっくり説明してあげるある。今はディナーの用意。作業台片付けるある」
『ゲッ! そう来たか。まぁ、腹減ったしまずは飯か』
内心そう思い、ガロンはしぶしぶテーブルを片付け始めた。
「チーダイ! それでお嬢さん達には連絡したのか?」
セルバムの問いに微笑み返した。
「もちろん、もう電子メールで招待状出したある。あと30分位でやって来るある。ワタシあと2〜3品料理作るから、テーブル拭いといてある」
そう言うと、チーダイは大きな鍋をコンロに乗せて料理を続けた。
大鍋からバチバチと放電音がして、さらに紫の煙を噴き上げ始めた。
料理と言うにはあまりの異変に、セルバムが驚きの声を上げた。
「おい! 何作ってんだ。気を付けろ爆発しそうだぞ!」
「大丈夫ある。これは黒ヒツジの好物、電気饅頭ある。さあ、出来た」
鍋から黒い塊が、ポップコーンのように飛び出した。
チーダイが大きなザルで、器用に空中キャッチしはじめた。
「えっ、そうなのかグラマンの黒ヒツジは、それ食うのか?」
チーダイはニコッと微笑むと
「セルバム。アナタもっと、相棒のこと勉強するある。興味持つことコンビネーションに欠かせないあるよ」
表情に反して結構きついことを言う。
チーダイの癖だ。
土鍋に多種多様の植物を放り込み、緑の濃厚なスープを作った。
最後に鞘イカとコモロ芋をサッと炒めて、大皿に盛りつける。
次々とキッチンから料理を運び、テーブルに並べ始めた。
ピ〜〜〜〜〜〜〜ン♪ ポ〜〜〜〜〜〜〜ン♪
来客を知らせるチャイムが鳴った。
リビングに隣接するフライトゲートの脇の玄関の窓叩く音。
コンコンとミーメがノックしている。
「おっ! 来たみたいだ」
そう言い、ガロンはフライトゲートとリビングの間のシャッターを開け、玄関に駆け寄った。
「いらっしゃ〜〜〜〜〜い! あ、乗ってきたヒツジ君達は、おいら達のエアロバイクの脇にでも繋いでおいて」
3人のヒツジ雲使いは、それぞれに乗ってきた雲を適当に柱やフックに繋いだ。
{ミィちゃん。ボクの分もご馳走あるのかなぁ〜}
「チーダイのご招待よ。大丈夫あの子はしっかり者で気が利くから」
ミーメはパフの頭をなでて宥めた。
ビビッ!ビビッ!と放電する黒ヒツジを柱に括り付けながら
「バリ!温和しく! 分かったわね」
グラマンは乗ってきた黒ヒツジ(バリという)厳しく言い聞かせていた。
オーテュライの乗りヒツジ(ソウという)は、とても淑やかにしている。
「ほらオーちゃんのソウは、温和しいわよ! 見習ってね」
グラマンに厳しくそう言われ、バリはシュンとして放電を弱めた。
「よう! よく来たな」
「丁度、ご馳走出来た所ある。さあさ! リビングへどうぞ」
セルバムのがさつな挨拶と、まるでベルボーイのエスコートのようなチーダイの振る舞いが対照的だ。
取り残された3匹のヒツジ雲に、そっと
「君たちにも、お土産ちゃんと用意したある」
チーダイはそっと告げた。
ガロン達は3人の相棒をリビングへ招き入れ、最後にセルバムがシャッターを閉めた。
全員が着席したのを確認すると、セルバムが述べた。
「今日はこいつの」とチーダイの頭を小突き「急な誘いに乗ってくれてありがとう」そして再び「こいつ」と小突こうとするが、今度は頭を振って巧く避けた。
「チッ! 何でも雲使いとの親睦を深め、より良い連携を実現するため……」
「あ〜〜〜もう。いいよ、旨そうだぜ食べようぜ」
長引きそうなリーダーの挨拶を、ガロンが遮った。
円形の作業台(今はダイニングテーブル仕様)を囲むように、全員が着席した。テーブルの上でチーダイの力作が、色とりどりの色彩と芳香を放っている。
「先ずは、乾杯しようぜ!」
セルバムは自分のハンモッグを足場に、さらにその上にある棚から巨大な樽を一つドスン★と降ろした。
「これはオレの故郷ゲイトリオ渓谷の名物バッカス。酒の神様ディオニュソスが愛した名酒として有名なんだ」
バリンッ!!
と、樽のふたを拳の一突きで破った。
セルバムが豪快な演出を披露する中、チーダイは各自にジョッキを配膳し終わっていた。相変わらず“そつ”がない。
樽の中を覗くと、そこには深い藍色の液体がたゆたっていた。
「き・れ・い………」そう呟くオーテュライ。
セルバムは白い陶磁器の柄杓で、みんなの目の前のジョッキに注ぎ込む。
「あのぉ、これ何度あるの? あたしあんまり強くないから……」
ミーメが弱音を吐露した。
「何、嬢ちゃんぶってんだい。バッカスなら40°そこそこだよ。大したことない、安心しな。心配ならチーちゃんに炭酸で割ってもらいなよ」
実家が卸し酒屋のグラマンが、そう付け加えた。
チーダイは既に、炭酸ボトルを傾けミーメの背後で構えていた。
『またか、こいつ……。やっぱり予知能力者だ』
ガロンはチーダイの不思議な能力に、頭の中でクエスチョンマークが膨らんでしまう。それは毎度の事だった。
「じゃ、お願い」と、ミーメ。
チーダイはニッコリ微笑むと、ジョッキに炭酸を半分ほど追加した。
ついでに肘にぶら下げたアイスペールから、カラン◇と氷を入れた。
「このアイス。ホーライ山の天然水で作った絶品ある。お酒の味じゃましない」その説明に「へ〜〜っ。じゃ、わたしにも頂けますぅ。ロックにしてみるわ、よろピ〜ク」とオーテュライも乗った。
「オレはストレートだ!」
それが男らしいと勘違いしているセルバムが、ジョッキを高々と掲げて
「カンパ〜〜〜イ!!」と音頭をとり、
チャ〜〜ン! チャ〜〜ン! チャ〜〜ン!
暮れゆくバラライカの夕焼けを背景に、藍色の液体を湛えたジョッキが
美しく重なった。
ガロンとチーダイも男らしい?かどうかは置いといて、ここはリーダーの顔を立てストレートで付き合った。
「さぁ! 冷めないうちにメシアガレある」
「まぁ、美味しそう……。これは何ぁに?」
フォークで火吹きヤモリを突き刺して、目の前に翳しながらオーテュライがチーダイに聞いた。
「気を付けろ! そいつは結構ヘビーだぜ」
聞かれてもいないのに、横からセルバムが口を挟んだ。
今朝の朝食のイメージが、未だ鮮明に残っているのだろう。
苦笑いを滲ませ、チーダイがちゃんと説明した。
「ワタシの婆さんが、地元の味を送ってきたある。火吹きヤモリっていうスパイシーな食材ある。辛いからグレービーソースで辛みを抑えてるあるから、ピリッとするくらいあるから香ばしくて美味しいあるよ」
「なんだチーダイ。レディーには優しいじゃんか! オレ達にゃそのまま食わせたくせに」
目くじらを立てるセルバムに「招待したお客様ある。当然の心遣いあるよ」と窘めた。
パクッと、一口カジって、
「う〜〜〜ん。おいしいわ」というオーテュライの感想に、チーダイは胸を撫で下ろした。
「ところでよ。上からの命もあるんだが……。今回はチーダイの機転で、うちのチームの食事会を設けられて良かったんだが……オレ自信は以前から雲使いさん達のスキルをもっと解ってねえといけねえって感じてた。ここんとこ、てかズーーーッと緊急任務の連続だろ。うちとける暇もねえよな」
「まあまあ、今日の任務でもいろいろ皆の能力も出たっす、今から話そう」と、
ガロンは受け身の発言をした。
「だね。みんなの力量が解ってれば、もっと効果的な作業が可能だわ」
珍しくミーメが真面目な発言をした。そして続けた。
「たとえばあたしのパフの得意技【パックン】とか、グラマンの【イカズチ】だって、許容量に限界あるし、吸収系の技には受け入れられる量に限界があるのよ。そのへんは解ってもらってると、楽かもね」
「これ、美味しいよ。食べてごらん」
オーテュライは火吹きヤモリを一匹フォークに刺し、ミーメの口の前に翳した。
ウムゥ◎パクッ!
仕方なく、ミーメは口を開く。
グロテスクなヤモリをねじ込まれ戸惑ったが、直ぐに放縦な旨味に舌が包み込まれた。
「お パリッ、い モグ、し ズルッ。本当だオーちゃん、これイケるね。ピリ辛だけど、それにこのソースで味が丸くなって、とても合うよ。チーダイ君の言う通りだ」
「よし、あたしも1匹ちょうだい」
グラマンはヤモリを指で直につまみ上げ、ポチャンとジョッキの中に落とし一緒にグビッと流し込んだ。
「ちょっと、レディーがそんな……はしたない」
お嬢様なオーテュライは両手で目を覆った。
キッと睨み返し「いいんだよ。スパイシーな物は、酒に合うんだから」
険悪な2人の間から、チーダイが顔を覗かせた。
「料理食べ方、自由ある。美味しいが一番ある」
「ガッハッハ! グラマンはお食事会ちゅうより、宴会だな」
セルバムは豪快に笑い飛ばした。
『また笑い飛ばしちまった。これでフォローになるのか? キャラ得ってやつか……』内心呆れ半分に感心するガロン。
と、チーダイは2品目。
土鍋に入ったグリーンペーストのスープを、テーブルの真ん中に起きながらミーメに向かって言った。
「さっきの話あるが、吸収系の技って引き上げたヒツジ達はどうなるある?」「ああ、【パックン】や【イカズチ】の後のことね。あたし達ヒツジ雲使いは、みんなバックヤードって言う空中牧場を持ってるのよ。そこへ瞬時に送って適度な運動をさせたりして、パフォーマンスを回復させてるの。あたしの場合は主に“消化”で、グラマンは“放電”かな」
話を聞き終わるうちに、スープは全員のスープ皿へ取り分けられていた。
「さ、深い森の味するスープある。召し上がれ」
最初に銀のスプーンを手に取り、するっと啜ったミーメは目を丸くした。
「うわ〜〜〜〜っ、本当に森の中に居るみたい。ステキよチーダイ」
「ありがとある。隠し味にキノコも色々入ってる」
「あれ、これは隠れ茸ね、珍しいわ。北方の森にしか生息しない珍味ね。扱くがあって香りも上品ね。おいしいわ」
オーテュライの舌は、隠れ茸の味を見抜いた。
「スゴい、よく解ったあるね。確かにそれワタシの故郷ホーライ山の雪の下に生える、珍しいキノコある」
「また。バーさんの差し入れか? チーダイ」
セルバムがからかった。だが、図星なチーダイは一瞬押し黙ったが、説明だけはしようと口を開いた。
「そうある。確かに故郷の名産ある。ワタシの村、北の雪深い所。ホーライ山は万年雪で閉ざされた場所、沢山ある。そのクレバスで人知れず越冬したキノコが隠れ茸ある。過酷な条件下で成長するあるから、香りも栄養価も濃厚で美味ある」
「あ〜〜〜ん。それじゃずーと孤独だったの? あたしに食べられて幸せねぇ」
と、ミーメは大きな口を開けてキノコを放り込んだ。
「ねえ、ねえ知ってるぅ。ハウラーの噂……。ほら今コンビ組んでるマーサに聞いたんだけど、問題起こしたらしいわよぅ」
ジョッキに4杯目の酒を注ぎながら、グラマンが唐突に語り出した。
「おいおい、宴会がオバサンの暴露大会に進化するのか?」
ゼルバムが口を挟んだが、かまわず続ける。
「ほら、あの子やっぱしハイ・シビルだって確定したじゃない。耐性が高いのをいいことに、どんどん危険エリアに進入してるらしいのよ。南西1200°のポイントでFDと接触したらしいの」
驚いて持っているフォークを落としそうになりながら、チーダイが質問した。
「FDって、あのフレアドラグーンの事あるか? 絶滅したはずある」
頷いて、ガロンも続けた。
「そうさ! それこそ半世紀も前に、イカロス・ファストに滅ぼされたはずだぜ」
手のひらを泳がせながら、グラマンは否定した。
「のはず……。ってのは一番当てならないのよ。必死に追想してたマーサも見たって報告してんのよ。今、上じゃ大騒ぎらしいわよ」
ミーメも反応した
「イカロス・ファストって言ったら、それこそハイ・シビルだけで編成された特殊部隊でしょ。FDはその宿敵………なんだか因縁めいた話ね」
「だが、その噂話が真実だとすると一大事だ」
セルバムは腕組みをして、顎を引き眉間にシワを寄せた。
「そうあるね。イカロス・ファストはハイ・シビルの防御力と、超一流の戦闘技術を併せ持った精鋭部隊ある。現状の【ラピス・レイヤー】では太刀打ちできないある」と、チーダイも考え込んでしまった。
「だけどまだ所詮ウワサだろ? 信憑性が出てきたら、上層部から召集かかる筈だ。いま無駄に考えたって意味がねえ」
ガロンの一括に、トロンとした目でグラマンが答えた。
「ゴメン。もうよそう、あたしもマーサから聞きかじっただけだし……」
「そうだな、話題変えようぜ。今日のミッションについて話そう」
はーーーーーーい!
ミーメが手を挙げた。
「なんだ、ミーメ。言ってみな」とセルバム。
「あのぅ。【パックン】なんだけど、今日みたいな大量の空気シャワーだと、許容量に限界がありま〜〜〜す」
ミーメがお手上げのポーズをした。
その手のひらをポンと叩いて、オーテュライが続けた。
「確かに、今日のは多かったね。今度から、空気シャワーなんかはあたしの【笠】で弾いちゃうだけでいいんじゃなぁい。パフ苦しそうだったよ」
そう言うとチラッと、パフの待つフライトゲートの方に視線を走らせた。
「いいのよ。あのこは食いしん坊だから……」
飼い主の甘やかした発言に、「今は一陣と二陣の入れ換え時間の、インターバルについての話だろ。なあオーテュライ」
とガロンが話の軌道を修正した。
オーテュライは頷きながらスープをズズッと啜り、一呼吸おいて話した。
「ミーメがパフと仲良しなのは知ってる。でも過保護と躾は別物よ。あなたもヒツジ雲使いなら解ってると思うけど……、現場の状況はレイヤーと連動して柔軟に判断しないとねぇ。そこんとこよろピ〜ク」
いかにも優等生な意見だ。
ミーメも承知している様子で、テヘッと舌を出し頭を掻いた。
チーダイはデザートを取りに冷蔵庫に走った。
目の端で、その様子を捕らえながら、セルバムが念を押した。
「よっしゃ! そんじゃ今度から空気シャワーの初動対応はオーテュライな。ミーメはサポート役ってことで、いいな」
冷蔵庫からピンク色のジェラートをお盆に乗せ、テーブルに運びながらチーダイが「そ、あるね。ミィちゃんの【パックン】は切り札に温存しときたい技ある。いざって時に使えないんじゃ困るある」と付け足した。
「まあ、アタシらみんな一流なんだし、任しとけってか……ヒック」
グラマンは10杯目のジョッキを高々と掲げた。
「あなた……少し飲み過ぎじゃぁないの?」
そう言ってオーテュライはマジマジとグラマンを覗き込んだ。
案の定、ホッペをピンクに染めて眼も虚ろになっている。
「ヨッパライのヒツジ雲乗りは、あぶないよ」
とミーメも忠告するのだが…………。
「酔い醒ましに、このジェラートいかがある? 鎮魂桃〈ちんこんとう〉の果汁と果肉100%ある。鎮魂桃には精神の鎮静作用のある成分(ミタゾラム)が多量に含まれてるある。気持ち落ち着くあるよ」
目の前の背の高いパフェグラスを、グラマンの手元にスッと近づけると手のひらを返し「どうぞ、お試しある」と勧めた。
パフェグラスに刺さったガラスのスプーンを抜き、自分のホッペと同じ色の氷の液体をすくった。シャリシャリッと音を立てて、ジェラートは尾を引くように延びる。
グラマンはクルッとスプーンを回し、尾を絡め切ると口の中へ……。
シャリッと心地よい舌触りがする。
ザリザリの猫舌の上でスーッと溶けて、鎮魂桃の甘い香りが広がった。
ミントのような清涼感を感じ、確かにいくらか頭がスッキリしたようだ。
『これが、ミタゾラムの作用かな?』頭をブルッと左右に振る。
その様子を眺めていたチーダイが、「ほら。スッキリしたあるね」と満足顔で言った。
グラマンがシャンとしてから小一時間、6人はそれぞれの空域編成の確認や、技のコンビネーションなどを討論した。今日のミッションで277回を重ねていたが、あまりの過密任務だったせいで、今日まで部隊6人揃っての会合を持てずにいた。
実践を通して、そのコンビネーションはかなりな熟練度に達してはいたが、やはり緻密な作戦遂行を行うためには、こういったミーティングは欠かせなかった。隊長であるセルバムは、本部から再三に渡って会合を開くよう要請を受けていた。具体的なスケジュール管理は隊長であるセルバムに一任されていた、彼自身ミッション50回に1度は集まりたいと考えていた。今日はたまたまチーダイの機転で、集会を持つことが出来たので、セルバムもこれでやっと本部への面子も立つと、ホッとしていた。
夕食会も終わりに近づき、チーダイがキッチンで何やら作業を始めた。赤と白と黒の3色の円筒形のプレゼントボックスを、キッチンの調理台に並べ、その中にヒツジ雲達へのプレゼントを詰め始めた。
金色のリボンを掛けると、ミーメに赤、オーテュライに白、グラマンに黒の箱を手渡す。
「ヒツジ雲達に、プレゼントある」
チーダイの気の利いた計らいに感心して、ガロンはやたら頷いている。
「ありがと、パフも喜ぶわ」
「へ〜。ソウにプレゼントなの」
「これって……バリにか? サンキュ!」
3人のヒツジ雲使い達は、それぞれプレゼントを抱えて雲に乗って帰って行った。
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