4.願い事

目を開けた私が居たのは、豪華な布団の上だった。

見回すと、洋風なデザインの広い部屋。


「アイコ?」

「!」


この喋り方は…


……間違える筈が無い。

だって、毎日聞いていた…


「良かった、目が覚めて。心配してたんだぜ…?」


……?

違う…。


「あなたは誰…?」

「え?俺はR.B.ブッコローだけど…」


……。


何と言うか、…美化されている。

あのカラフルなは、人間のそれになっているし、確かに隻眼で片手に本を持っているけど…。


「R.B.ブッコローさんじゃない…」

「えっ?」


声質も口調も……する事も、私が知ってるR.B.ブッコローさんと、何もかもが違っていた。


「女神様!何で?!」


私が声を張り上げると、不幸中の幸いか、頭の中に女神様の声が響くように声が聞こえた。


『嫌でしたか?』

「当たり前でしょ…!」

「アイコ、誰と話してるんだ…?!」


どうやらその声は私にしか聞こえていないらしい。

「ちょっと待ってて!」と部屋を飛び出すと、やけに高くて広い廊下に出る。


「何これ…?!」

『宮殿の中ですよ』

「へぇ……って、違う!」


納得しかけてしまって慌てて首を振り、空に向かって叫ぶ。


「私は、R.B.ブッコローさんが好きなの!」

『……』


その声に、女神様は黙り込む。


『ごめんなさい、あなたがの鳥類と恋愛したいとは、思わなくて…』

「な…そんな言い方……」


私はつい絶句しそうになるが、慌てて、


「というか私、会いたいって言ったんですよ!」


と説明する。


『…わかりました。そのままのR.B.ブッコローと会う。それで良いですか?』

「そう!それ!」


確認する様に言う女神様に向かって、私が叫ぶと同時に、また光に吸い込まれる感覚がして記憶が途絶えた。





****





「…?」


目を開けると、真っ暗な世界に立っていた。


「え、君は?」

「!」


振り返ると、そこにはR.B.ブッコローさんだけが居た。


私がいつも見ていることを言うと「ありがとう」とは言ってくれたけれど、しばらく経つと、R.B.ブッコローさんは困った様子になる。


……私のせいだ。


(女神様…)


『何?』

「!」


頭の中で呼ぶと、まだ女神様は私の事を見ていたらしい。返事が来る。


『言っておきますけど、あなたの願いは叶えたんですよ?』

(……確かにそうだけど…)


私はR.B.ブッコローさんの方を見る。


…よく知らない私と2人きり。


私が嬉しくても、R.B.ブッコローさんは…


(やっぱり、ナシにして…私がトラックに轢かれる前に戻してくれませんか?)


私が聞くと、女神様は困ったような声で、


『出来なくはありませんが…』


と言った。


(じゃあ…!)

『でも、代償があります』

(えっ…?)


戸惑う私に女神様が告げたのは、


『代償は……あなたの一番の夢が叶わなくなる事』




私の一番の夢、それは……R.B.ブッコローさんに会う事…。


つまり…


(もう二度と、R.B.ブッコローさんに会えない事が決まってしまう…?)

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