3.ごめんなさい

グサッ…


硬かったけれど、思いっきり力を入れると、ちゃんとそれにペンは刺さった。


『ラスボス』は断末魔を上げて倒れる。


「アイコ!やったな!」

「えっ?」

「さすがリーダー!」

「いや…良かった良かった…」


『核』にペンを刺すだけって、やっぱり私、要らなかったんじゃないかな…。


しかも、ペンって…。

ペンは剣よりも強しとは言うけども……。


ガラスペン……R.B.ブッコロさんを思い出しちゃったな。





****





「『怪力』?!」

「うん!」


村の人から歓迎されている時に、私は一人の村の子供から真実を知った。


私は魔法は全然ダメだけど、誰も破壊できない『核』を破壊できるただ一人の『怪力』だったらしい。


「はぁ…」


私が納得した様な、恥ずかしい様な、複雑な気分になっていると、その子供は私の服の端を引っ張って


「…ねぇお姉ちゃん、どうして僕達の為に命懸けで戦ってくれたの?」


と、聞いてきた。


「それは…」

「アイコ!」


答えようとした所に、さっきの金髪の人が現れる。


「探したよ」

「……」


名前を呼ぼうとしたけれど、そう言えば私は彼の名前を知らなかった。


「えーっと、何か?」

「何って…願い、叶えるんだろ?」


そう言われて、ハッとする。

私は今、R.B.ブッコローさんの居ない世界に居るんだ。


「うん、早く連れてって」

「……」


私が意気揚々とそう言うと、金髪の人は少し黙り込む。


「アイコ、本当に帰るのか…?」

「!」


彼の弱々しい声に、私は察してしまいそうになる。


…でも、


「ごめんなさい、私は行かなくちゃ」


そうよね、分かる。

ゲーム物の王道って、冒険が終わった後、誰かと主人公が結ばれるのよね。


……わかるけど…


(私には、R.B.ブッコローさん以外との未来なんて……考えられない)


私はきっと、最初から冒険していたとしても、R.B.ブッコローさん以外を選ぶなんて出来なかったと思う。


「あっ、勇者様ー!」

「ここにお願いを」


金髪の人を置いて、私は村の中心の噴水に近づく。


すると、女神様のような人の銅像が光りだし、すっかり『人』になって噴水の水面に立った。


「……」

「勇者、アイコ」


私が呆然と見とれていると、そう呼ばれて「はい!」と慌てて返事をする。


「汝の望みを言いなさい」

「えっ……と…」


その時、ふと頭の中に浮かんでしまった。


『帰る』より、私が願ってる事。




「R.B.ブッコローさんに会いたいです!」


私が言うと、「よい」と言う声と共に、私はその噴水に吸い込まれた。




その村では、勇者の最後に残した言葉『R.B.ブッコロー』について、数々の言い伝えが生まれたというが、それは私の知らない別のお話……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る