2.異世界

「……?」


目を開くと、私は

……が、何かがおかしい。


「なにこれ…?」


ゴツゴツの硬い服……いや、鎧?

それに、腰の辺りが重いと思ったら、これは……剣?


「アイコ?」


突然呼ばれて振り返ると、そこには私と同じ格好の、金髪で高身長の男の人が居た。


「やっぱり怖いか?」

「えっ?」

「何せ、これからラスボス戦だからな」


ラスボス戦?


……もしかして、ゲームの世界に来てしまったんだろうか。

途端に不安になる。


待って、それじゃあ今日は、『おやすみブッコローさん』、出来ないの……?


「お願い!私を元の世界に返して!」


あの日から、R.B.ブッコローさんの声無しで眠った事は無い。

私は気づけば目の前の人物に掴みかかっていた。


「……大丈夫。この戦いが終われば、君は一つ願いを叶えられるんだから」

「戦い…」


そこでようやく今の状況を思い出す。


……私、トラックに轢かれたんだった。


「分かった」


私はまだ死ねないんだわ。


サイン位は死ぬ前に貰いたいし、それ以前にまだ一度も、R.B.ブッコローさんに会ってないんだから!


「早く行きましょ!」


私は勇敢に立ち上がって男の人に言う。


「あぁ」


返事を受けて、彼の行く所について行くと、


「アイコ、おっそーい」

「フン、全然待ってなんか無いんだからね」

「皆準備出来てます!」


男も女も、髪色も種族(?)もバラバラな人達が、私を待っていた。


「……!……い、行こう!」


R.B.ブッコローさんの居る世界に帰る為に!





****





「アイコ!皆で最後の合わせ技だ!」

「はい!……えっ?!」


私は頑張った。


全ては、R.B.ブッコローさんの為に。


魔法は使えなかったけど、体だけは素早く動いたから、大体逃げ回ってたまに剣でちくちくしていた。


……多分、全然役に立ってなかったと思う。

主人公みたいな立場なのに。


「行くぞ!俺たちの合わせ技っ!」


ま……待って!


私の思いも虚しく、各々が一斉に呪文を唱え出す。


「『glassガラス』」

「形となれ!『 modeling造形』っ!」

「アタシの最高傑作を受けてみな!『poison猛毒』!!」

「仕方ないなぁ、僕も頑張っちゃうよ〜?『amplification増幅』」


目の前では巨大なガラスの板がみるみるうちにペンの形になり、生み出された液体を吸い込んでいく。


「よし、俺らで斬るから、『核』を破壊するのはアイコ、お前に任せた!」

「あっ、待っ……私は……!」

「行くぜ!」

「おう!」


私は何とか分からない事を伝えようとしたけれど、クライマックスで盛りあがっている彼らには届かない。


「「はあああああっ!」」


2人はその巨大なペンを念力みたいなもので振って、心地の良い音と共に斬る。


ラスボスは真っ二つになり、心臓のようなものが露出した。


「『reduction縮小』!!いっけー!アイコ!」

「は、はいっ!」


金髪の人はそのペンを剣サイズまで縮小して、私の方に手渡す。


私はもうヤケになって、ペンを両手で持ちながら『核』かも分からないその心臓のようなものに向かって走った。

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