第4話 時をかけるおじさん


目が覚めるといつもの部屋。

カレンダーを直ぐに見ると、カレンダーを書き込んで寝た次の日に戻って来ていました。


「 そうか…… カレンダーに書き込むと、夢を見ていたように1日を過去で過ごせると言うことか。

便利だなぁ、んふふふふっ。

はっはっはっはつ!! 何て言う力なんだ! 」


笑いながらカレンダーを見続ける。

直ぐに顔を洗ったりして仕事へ。

その足取りはいつもより軽く、軽快にスキップしながら歩いていました。


( 何でだろうな…… 今までつまらなかったこの世界が、今は俺の手で自由に出来ると思うと神になったような気分だ。 )


電車から景色を眺めながら不適に笑う。

周りからは仕事でどうにかなってしまったのであろう。

悲しい人だと思われてしまう。


会社に行く途中のカフェで、テイクアウトのコーヒーを買いました。

一杯600円もするコーヒー。

王手のお店の為、美味しさとブランドによる値段。

会社で飲んでいるのは、上司や食にこだわるOL達くらい。


良太郎は当然缶コーヒー。

なのに今日は奮発して高いコーヒーを買い、会社へ向かいました。


「 皆さん、おっはよーー っ! 」


良太郎は大きな声で挨拶をする。

みんなは当然びっくりしてしまい、咄嗟に挨拶をいつも返さない人まで返してしまう。


「 あれって岩崎さんですよね?

どうしたんだろ、あんな元気で挨拶とか気持ち悪い。

しかもマリンコーヒーの手提げ袋なんて持ってる。

いつも缶コーヒーの人なのに。 」


みんなもその変化に驚き、周りでひそひそ話が起きてしまう。

良太郎は気付いていましたが、全く動じる事はありません。

何故なら今は過去を変えて、未来まで変えられるのだから。


( 気持ちがいい…… コーヒーもうまい!

こんなの飲んでないとか、人生ずっと損しかしてなかったな。

でも…… これからは違う。

やりたいことを沢山してやるぞ。 )


コーヒーを飲みながらビルから見える景色を楽しむ。


「 おはようございますぅ…… 。」


OLの黒澤多香子くろさわたかこ

21歳の新人OL。

美意識が高く見た目に気を遣い、綺麗で周りからの人気もある。

性格は良いとは…… 言えないけど、彼女にしたい女性に名が上がる。


「 どうしたんだい? 元気ないじゃないか。 」


周りのモテない男達は、群がるように寄って行く。

心配していると好感度が上がる。

みんなやりがちな行動。


「 はい…… 実は。 」


昨日の夜に飲み会を終えて帰っている時、事件は起きました。

暗い夜道を1人で歩いていると、後ろから自転車で凄いスピードで向かって来ました。

ぶつかりそうなくらいすれすれに。


「 きゃっ!! 」


その黒い上下の服を着ていた男性は、通り過ぎる瞬間に多香子の鞄を無理矢理引っ張り、盗んで行ってしまいました。

咄嗟の事に慌ててしまう。


「 泥棒ーーっ! 泥棒ーーっ!! 」


走っても全然追い付けない。

酔っていてふらふらなので、直ぐに走るのも止めてしまう。

暗い夜道で遅い時間…… 。

周りには誰も居ません。

犯罪者はわざとこのタイミングを狙っているのでしょう。

鞄を意図も簡単に盗まれてしまいました。


「 ってな事があって…… 。

財布もスマホも全部盗まれちゃって。

最悪な1日でした。 はぁ…… 。 」


大きくタメ息をつく。

周りの男達は泥棒に怒り、多香子を心配しました。


「 大丈夫!? なら俺がお昼奢ってあげるよ。 」


「 いやいや、俺が奢ってあげるよ。 」


何人も俺だ! 俺だ! と言わんばかりに挙手をする。

多香子に笑顔が戻っていく。


「 ありがとう、みんな優しい! 」


その後はみんなでわいわい楽しんでいました。


( モテたいからって何なんだよ。

気持ち悪い…… な。

待てよ? もし彼女を手に入れたいなら、過去に戻れば助ける事が出来る。

そしたら俺に惚れるのではないだろうか? )


何やら悪い事を考え始める。

その後仕事を終えて帰宅しました。

ずっと頭の中ではカレンダーの事ばかり考えてしまう。


「 患者が医者に恋するのも、ナイチンゲール現象って言って助けられた事による補正により、一時的に恋してしまったと錯覚する事。

なら俺が助けたって同じじゃないかな? 」


とか言いながらもあっという間に、お風呂やご飯も済ませてパジャマ姿に。

そしてカレンダーの昨日の日付に丸をつける。

未来を変える気満々に。


「 よし! 寝るぞぉ。

さぁ…… モテ女を手に入れる為に、泥棒を捕まえに行ってやるか! 」


そしてまだ20:00前に眠りにつきました。

あっという間に夢の中…… 。


目が覚めるとそこは、夜の街路樹。

そこは良太郎が行きたかった場所。

時刻を見ると23:00。

事件の起きた時刻まで後少し。


「 戻って来たな…… 。

さてさてさて、黒澤さんが言ってたのってここら辺だった気が…… 。 」


暗い夜道を盗み聞きしてた場所と照らし合わせつつ探す。

すると目の前に黒澤さんが現れる。


「 あっ…… 居た!

酔って歩いているな。 」


バレないように隠れながら見守る。


後ろから勢い良く自転車が現れる。

話していた黒い上下。


( 来たな!! 先回りだ! )


良太郎は進行方向の先で待つことに。


凄い勢いでぶつかり、言った通り鞄が盗られてしまう。


「 あっ!! 泥棒ーーーーっ! 」


凄い大声で怒鳴りました

当然誰も居ません。

泥棒は大急ぎで自転車を漕いでいる。


「 待てぇーーーーっ! 」


自転車の横から良太郎が勢い良く飛びかかり、自転車から引きずり降ろしました。

2人は転がり、自転車は勢い良く倒れる。


「 邪魔…… するんじゃねぇぞ。 」


黒い上下の男が殺気立ちながら口を開く。

良太郎はゆっくり立ち上がる。


「 お前の未来はもう変わった。

早くその鞄を返して貰おうか? 」


男良太郎…… 初めて映画のような臭いセリフを吐きながら、男に立ち向かう。


男は刃物を取り出す。

元男良太郎は気付きました。

どんなに過去を変えられても、無敵ではありません。

殺されてしまったらおしまい。

いきなり恐怖で体が震えてしまう。


「 返せ…… 返すんだぁーーっ!! 」


勇気を振り絞り飛びかかり、刃物で刺されない為に強く腕を掴む。

強く何度も地面に叩きつけて、刃物を落とさせました。

それと同時に鞄を無理矢理引っ張り、取り返しました。


「 やった…… やったぞ! 」


喜んだ隙に泥棒におもいっきり殴られる。

勢い良く飛んで行く。


「 キャーーーーッ!! 誰かぁ!! 」


そこにやっと黒澤さんが追いつき叫びました。

泥棒は驚いて急いで自転車にまたがり、逃げて行きました。


「 やった…… 取り返した…… ぞ。 」


頭を強くぶつけて意識が朦朧もうろうとしている。


「 えっ…… 岩崎さん!?

どうしてこんな所に?? 」


( やった…… 助けられた。

これで彼女は…… 俺の…… 。 )


気絶してしまい意識が失くなる。


目が覚めるとそこは当然家。

眠った次の日になっていました。


「 ん〜 あんまりカッコ良くいかなかったけど、助けられたのかな?

ん? これは…… 。 」


頭には大きなこぶと、頭には包帯が巻かれている。

寝る前にはなかった事。


「 変わってる…… 未来が変わった。

凄いぞっ! 凄いぞ! 」


ぶぅーーんっ!

スマホにメッセージが送られて来て、通知のバイブが鳴りました。


「 誰からだ? ん??

うわぁ! 黒澤さんから!? 」


連絡先を交換した事がないのに、スマホには名前が映っている。


( 良太郎君おはよう!

良く眠れたかな?

今日は行く前にカフェオレ買って

出勤しよ。

お店で待ってるね。 )


「 よっしゃーーーーっ!! 」


強くガッツポーズを決める。

二人の仲は進展していました。

良太郎にも遂に春がやってきました。

遂に過去を変えた結果を体感する。

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