第2話 お金の為に


( うっ…… 痛たた、結構寝てしまった。

体中がアザだらけで顔も腫れてる。

本当派手にやられたもんだぜ。 )


警察に被害届出したりと忙しく、あっという間に休みを終えようとしていました。


「 ちっ、やってらんないぜ。

ご飯だってまだだし、冷蔵庫に何か残りあったかなぁ? 」


冷蔵庫には何もなく、牛乳は腐っている。


「 何もねぇじゃねぇかよ!

コンビニでも行ってくるか。 」


財布に入っていたクレジットカードや、銀行のカードは止めて貰ったので使われる心配はない。

再発行手続きをしているので、それまでは手元にあるお金でやりくりしなければいけません。


仕方なく油の切れたような体を動かし、ゆっくり歩いて近くのコンビニに歩いて行きました。

独り身は虚しくて適当なご飯。

サラダなんか買わず、麺類やお肉と炭水化物多めで生きている。

少しでも娯楽がなければやってけなかったからです。


( 今日はっと…… チャーハンとつけ麺にしようかな…… 。

ここのつけ麺うまいってニュースでやってたな。 )


適当に麺類とチャーハンとお菓子類を買い、のんびりと帰りました。

良太郎の家はボロボロのアパート。

仕事から帰って来て寝るだけのような、居心地の良いとこではありませんでした。


ごみ捨て場の前を通ろうとすると、若い女性が困っている。


( ん?? 誰だろう…… ごみ捨てに困ってるな。

しかもこの身なり…… 綺麗な雰囲気。

向かいのマンションの野郎だ! )


お向かいさんのマンションは大きく13階建て。

部屋は広く綺麗でバルコニー付き。

こっちのアパートとは大違いでした。


( 困ってても知るもんか。

自分で調べろっつーの。 )


とても綺麗で胸も大きくて魅力的。

若々しくて男性はほっとかないであろう。

かなりの薄着でサンダル姿。

こんな夜にこんな見た目だと、悪いやからが寄って来てもおかしくありません。


1度目の前を通りすぎました。

でも直ぐに早足で戻って来る。


「 ちょっと! ペットボトルとかは火曜日と木曜日と日曜日だ。

分からないなら帰ってからスマホで調べな。 」


無愛想に軽く説明して帰る。


「 あ…… ありがとうございます。

独り暮らしとか初めてで、全然分からなくて? 」


お礼を言ってる間に直ぐに行ってしまう。

キョトンとしながら後ろ姿を見ている。


「 優しい人…… 口は悪かったけど、ほっとけなくて戻って来たんだ。

寒っ! 早く部屋戻らないと! 」


直ぐに若い女性はニコッと笑いマンションへ戻って行きました。

良太郎は直ぐに部屋に戻り、ご飯をレンジで温めました。

ついでに買ってきた缶ビールを開けて、夜のディナーを楽しむ。


「 よしよし、少しはまともだぞ。

後はBGMだな…… 今日はこれにしよ。 」


沢山あるDVDから1枚を決めて再生する。

直ぐにテレビから映像が流れる。

トム・ソーヤの冒険をつけていました。

ビールを飲みながら楽しく麺をすする。


「 トム・ソーヤ…… ずるずるーーっ!

すげぇ面白いよなぁ。

俺にもこんな青春時代あったけっけな。

子供の頃が1番幸せって良く言うもんな。 」


トム・ソーヤの冒険は少年トムが、毎日を相棒ハックと面白可笑しく生きるお話。

良太郎はアニメや映画やドラマが大好き。

見たら自分もその仲間に加わった気分を味わえるから。


「 自由かぁ…… 大人になるにつれて自由になるかと思ってたのに、むしろ狭くなったようにも感じる。

良いよな…… 子供は!! ごくごくっ。 」


今の自分の現実を逃避するかのように、ごくごくとビールを飲みました。

お酒に強くなくて直ぐに酔いが回り寝てしまう。

悲しい休日…… 。


貰ったカレンダーは間違えて蹴ってしまい、タンスの下へ行ってしまい見えなくなっていました。


次の朝…… 。

急いで支度をして会社へ。

くたびれたスーツに身を包み、毎朝の満員電車に乗り込む。

毎朝これだけで疲れてしまう。


会社に着くと少し顔つきをシャッキリさせて入って行く。


「 おはようございます。 」


外づらだけは良く、嫌われないように必死でした。

返事は蚊が鳴くくらいしか反ってこない。

仕方なく返しているのは丸分かり。

みんな良太郎の事が好きではないのです。


気にする事なく黙々と仕事でデスクワークをしつつ、電話対応なり忙しい。

仕事の出来はまあ普通…… 。

やる気はないが、与えられたら頑張ってこなす。

これが良太郎なのです。


お昼は直ぐに外へ出て一人でご飯。

公園のベンチで適当にパンとコーヒー。

直ぐに食べ終わりベンチで横になる。


「 お金貰えなかったらぜってぇ辞めてる。

何が楽しいかも分からん。 」


木に停まっていた鳥達が、一斉に羽ばたいていました。


「 鳥達にもルールとか規則とかあんのかな?

1番前は部長が飛ぶとか、ここら辺のエサは捕ってはいけないとか。

だったら全然自由じゃねぇもんな。

やだやだ…… 生き物全般やだ。 」


ネガティブモード全開で、考える事考える事ネガティブでマイナス思考。

相当病んでいるようでした。


夕方まで仕事をして上がる事に。

帰る支度をしました。


「 岩崎! 良かったら合コン行かないか? 」


同僚から合コンに誘われました。

返事に困っていると直ぐに割って入る男が。


「 岩崎はいいって! 来ないから。

しかも来たからって盛り上がらないし。 」


同期の相楽盛夫さがらもりお

頭も良くて出世コース一直線。

愛想も良くて嘘も上手い。

この社会は世渡り上手が1番モテる。

盛夫の事は当然嫌いである。


良太郎は苦笑いをしつつ帰る。

合コンには全く興味はない。

でも自分だけはぶかれるのが嫌でした。


帰りつつ石を蹴っている。

ケガで顔も腫れていたのに、気にして来たのは上司だけ。

しかもそれは問題が起きていないかと、上司としてしか意味はない。

悲しいものでした。


「 つまんねぇ…… つまんないっ! 」


大きく蹴りあげて石を遠くまで飛ばす。

孤独でいっぱいいっぱいになっていました。

話し相手もいない。

悲しい毎日でした。


スーパーで安売りの弁当や食品や飲み物を買い、ゆっくりと歩いて帰る。

いつもと変わりなく続く。

変わるのは店側が売るのが変わったら、それを選んで買うくらい。


「 帰ったらご飯炊こうっと。

自炊しないと金が直ぐに失くなるからな。

貧乏で孤独ってヤバいよな。

何の為に生きてるんだか。 」


家に帰り、ご飯を炊きながら先にお風呂へ。

湯船に浸かりながら、1日の疲れを取る。


「 ぷふぁ、いい湯だなぁ。

入浴剤を入れたから温泉気分!

なんてね…… 。 」


悲しくなり湯船に顔を浸ける。

息を止めて顔を浸けていると、少しだけ現実を忘れられる。

そんな気がしました。


直ぐに上がって適当に野菜炒めを作る。

ご飯と一緒にテーブルに持っていって、いつもと変わらずDVDをつける。

そんな変わらずの生活を過ごしていました。

カレンダーの事は忘れてしまったままに。

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