人生の上手い生き方

ミッシェル

第1話 つまらない人生


( 俺の人生は本当につまらない…… 。

30代で彼女も居ない…… 貯金もない。

サラリーマンで大した稼ぎもない。

仕事場では嫌われもんで、悪口すら言われる始末。

いつからこんな風な人生になったんだろうか。 )


一人居酒屋で酔いつぶれる男。

名は岩崎良太郎。

顔もまあまあ、頭もまあまあ、全てにおいて普通過ぎて何も魅力もない。

友達も大人になり連絡を取らなくなってしまい、ずっと一人で生きている。

父親は20代の頃病気で亡くなり、家族は母親と二人きり。

仕事で忙しくしていて連絡も全然。

たまに留守電が入っているが、無視している。


( つまんねぇ…… つまんねぇ、つまんねぇ。

金持ちになりてぇーーっ!

女も欲しい!!

こんな人生間違えてるよ。 )


かなり酔いながら自分の人生に嫌気が出てしまう。


隣の席に居る大学生の話が聞こえてくる。


「 お前のそのデータもうオワコンじゃん!

なら最初からやり直せよ。

リセマラだよ、リセマラ! 」


ゲームの話をしているようです。

リセマラとはネットで使われる用語で、リセットマラソンの略。

ゲームのデータが悪いと何度もやり直す為に使う言葉。


( オワコンねぇ…… 俺の人生の事じゃん。

リセットかぁ…… 俺もやり直してぇよ!! )


腹が立ち、ビールの入ったジョッキを飲み干して強くテーブルに叩きつける。

凄い音で隣の大学生もびっくりしてしまう。

直ぐに立ち上がり会計へ。

こそこそと悪口を言う大学生。


ヨタヨタしながらゆっくり歩いて帰る。

狭い、狭いアパートへ帰るだけ。

本当につまらない…… 。


すると目の前で人相の悪い連中に絡まれている男性を見つける。


「 だから謝ったじゃないか! 」


「 うるせぇジジイ!! 」


凄い勢いで殴っている。

おじいさんは殴られて倒れるも、無理矢理胸ぐらを掴まれて立たされてしまう。


「 肩が…… ぶつかっただけじゃないか。

そんなに…… 怒る事…… ないじゃないか。 」


おじいさんは悪そうな連中にいちゃもんつけられていました。

通りすがりの良太郎が見てしまう。


( 可哀想なじいさん…… 。

誰か助けに来ないのか?

こんな人通りなのに。 )


怖そうな連中の為、関わりたくなくて通りすぎて行ってしまう。

警察に連絡したのかも分からない…… 。


「 うおいっ! こっち来いや!

落とし前つけたる。 」


そう言いながら人の居なそうな裏へ連れて行かれてしまう。

これでは助けに来るのは難しくなってしまう。


「 ここまで来ればこっちのもんだ。

ギャンブルで落とした分の腹いせをしてやる。 」


イライラをおじいさんにぶつけようとしていました。

それをこっそりつけて来た良太郎。


( 俺は得にならない事はしない…… 。

警察には連絡したから後少し我慢してくれ。 )


良太郎はかなりのビビり。

ケンカなんてほとんどした事はない。

巻き込まれたくない…… そんな気持ちでいっぱい。


「 ジジイ、直ぐに倒れんなよ?

俺の黄金パンチが炸裂するぜ。 」


「 ひいっ!! 」


おじいさんは怖くて顔を手で守っている。

ヤンキー集団が笑いながら殴ろとする。


「 ま…… 待て!! 弱いもんいじめするな!

お年寄りを敬え! 」


ビビりながらも現れた良太郎。

勝手に体が動いてしまったのです。

凄いニヤニヤしているヤンキー達。


「 良く来たなヒーロー!

おっさんが代わりになってくれるのかな?

少し罪悪感があったんだよ。

おめぇならやりがいがあるな。 」


ふざけた事を言い続けている。

良太郎もさすがに苦笑いしかできない。


「 くらえいっ!! 黄金パンチっ! 」


「 うわぁーーーーっ!! 」


目に貰ってしまい、目の前が真っ暗になる。

一発で気絶してしまいました。


「 うっ…… 痛ぇ…… 。

ここは…… ? 」


近くの公園のベンチで気絶してしまっていました。

顔は腫れて財布も見つからない。

とことんついていない…… 。


「 おうおう、目が覚めたかい? 」


おじいさんが笑って近寄って来ました。

ベンチまで運んでくれたようです。


「 じいさんが介抱してくれたのか?

いてててて、ろくなことないな。 」


おじいさんはどうにか無事で助かったようです。

でも自分の被害は大きく、ため息しか出ません。


「 まあまあそんな落ち込まないで下さいな。

本当助けてくれてありがとうな。

痛そうだなぁ…… 。 」


夜もあけて外は青ざめている。

少し冷え込み肌寒い。


「 助かって良かったな。

俺は散々な1日だったよ。 はぁ。 」


ため息を吐きつつ立ち上がる。

おじいさんはまあまあと言いながら、温かい缶のお茶を手渡しました。


「 まあまあ若いの、少し座ってはくれないか?

お礼も言いたいし、それに少し話をしようではないか。 」


そう言われて仕方なくまた腰を下ろす。


「 若いの、どうした?

何か悩みでもあるのか?

財布盗まれたのがそんなに嫌だったか? 」


「 いや…… 大して入ってないからそれは良いんだよね。

それよりも生きてるのがダルくて。 」


そう言いお茶を飲みました。


「 どうした? 話してみなさい。

お年寄りは暇だからな。 」


話し相手も居なかったので、誰でも良かったからそのおじいさんに悩みを話しました。

おじいさんは聞き終わると大きく何度もうなずきました。


「 そうかぁ…… ダメダメでどうしようもない人生で困ってるって事か。 」


「 そこまでは言ってないよ。

でも…… 本当どうしようもなくてね。 」


そう言って飲み終わった缶をゴミ箱に投げました。

当然入らなくて仕方なく自分の手で捨てる。


「 私は嫌いではない。

キミはあの時誰も助けてくれなかったのに、自分の身を犠牲にしてまで助けてくれた。

凄い格好良かったぞ? 」


誉められなれてなくてくすぐったくなる。


「 何の得もないのに動いてしまう。

本当に無駄な人生だわ…… 。 」


朝日が出そうな空を虚しく見詰めていました。

おじいさんは自分の事ように心配してくれる。


「 そうか…… ならこれをやろう。 」


鞄から太いカレンダーを取り出しました。

中を見てみるとそのカレンダーは、1992年から2023年までのカレンダーが書かれている。

基本は1年しか書かれていないカレンダーは多い。

なのに何故、こんな多く書かれているのでしょうか?


「 何だよこれ?

こんな昔のカレンダーも書かれていて、意味ないじゃないか。

昔のカレンダーって何の意味あるんだよ。 」


直ぐにおじいさんに文句を言いました。

でも昔のカレンダーは意味はないのは事実。


「 このカレンダーはただのカレンダーではない。

時をさかのぼるカレンダーなんじゃよ。 」


「 時をさかのぼるカレンダー?? 」


おじいさんが急に意味の分からない事を言い出しました。

良太郎は鼻で笑ってしまう。


「 これは海外で高値の闇のオークションで出回っていて、私が落札して手に入れたのだよ。

本当は私が使いたかったが、これが必要なのはキミの方かもしれないな。

お礼として受け取ってもらえないか? 」


なんやかんやあり、しょうがなく受け取りました。

どうせつまらない事ばかり。

暇潰し程度の気持ちで持って帰りました。

朝日がゆっくりと差し込む。


( はぁーー っ。 つまねぇ。

帰って少し寝るか。

休みなのに災難だった。

それにしても…… 痛いな。 )


そのカレンダーを持って歩いて帰りました。

その日から良太郎の人生は大きく変わる事になるのを、まだ誰も知りませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る