第113話 白銀の被い
白地の世界。一点曇りもシミもない、全てを被いつくす拡がり。薄墨が掃かれ現れいでた、紺碧の蒼穹からあふれ出したる日の光で、無垢なる大地はまばゆく耀い、眼底まで白光に染められて。かすかにできる陰翳は、天のいろを薄めたる青磁いろ。中空の音は深々としたその身で吸いこまれ、静寂がしんしんと降りつもり。時は刻まれるのではなく、流れるのでもなく、おなじく凍り、微細な結晶となりて沈み込み、つのりゆく。ときおり吹く風に舞いあがり、飛沫よりさらにこまやかに散り散りにきらめく。死に絶えたかのような沈黙のなかに、ときに、白銀から円やかに生まれでたかの如きミミナガ(ウサギ)のシシムラが現れ、ときに茶いろの影が蹴たててゆく。キツネかイタチ、なのだろう。不意にジョウビタキが飛びたち、雪しずり。降りかかってきたそれ、しかもかすかな量のそれが小さな鼻さきあたりに触れただけのことであるのに、無心でまったくの無防備であったせいか、羽ばたく音や鳴き声もあってか、あたかも撲たれたように愕き背後によろめき。そうしたつもりもなく、自分では気がつきもしなかったが、声を漏らしてしまったものか、
ーーなじょすただ(どうしたんだ)。
低い男声ととめに、ゴツゴツと乾いて固い大きな手に押さえられ、ひっくり返えらずにすみ。なんと応えたらよいか分からずにこと葉に詰まっていると、わきに手を差しいれられ持ちあげられて、
ーーなんぞおもしれぇごどあったんだがな。あんまり外さえるどゴホンゴホンて寝てねばならねぐなっがらな。
ケモノを思わせる体臭。冴え冴えと凍り閉ざされた情景から一転、火が赫々と燃え照らす、あたたかい、というより熱いくらいの声と体温のおのこに軽々と抱えられ、室の内に運ばれてゆき。根菜やイモ類の煮える香、蒸気をふくんだ熱気に包まれて。おのことは異なるおみなの体臭もして。人によっては異臭、悪臭としか思えないものであるのかもしれないそれは、しかし、リウにとっては懐かしく馨しく。
ーーこっただシバれる(冷える、寒い)どこさいるがら、手っこばちべたく(冷たく)してがらに。
がさがさ乾いてイワオのようになった手につかまれ熱を伝えられ、囲炉裏端に据えられて。炙られて、雪の気配が表面からとけて消えてゆき。それはもとより火によって、ばかりではなく。ほてり、暑さ、ぬくもりは永続的なものではない。火がそうであるように。万象がそうであるように。諸行無常。有為転変してゆくものであり、一時に留まらないというだけのことで、その形が見る影がなくなっても、消えても、生命が絶えても、それもまたひとつの過程でしかなく。その流れのひとつところに気をとめたとき見えてくる団欒から、心づかされることのあるようで。外は凍りつき沈もったひと色の世界のように見えて、内には焼けるほどの熱を宿してあるということ。かくなる存在の仕方を身に、心に、つけてゆけばよいのではないだろうか。そう思いつくことのかない、麻の葉模様の布のうえで目を開き。コヅキの付き添いがあって続けている訓練の、二日目のときに習得したーーまではゆかぬ発見で。リウは老爺になにも言わなかったのだがーーもっとも説明しようにもどう説明したらよいのかこと葉を紡いだらよいものか口ごもったものだったがーー、観察されていて察せられたものらしく、満足げに肯くヒョウタン頭を見ることとなり。方向性としては誤りではなかったのかもしれないと胸をなで下ろして。内なる火を保ちながら、冷え冷えとしたもので厚く被ってゆく、ということ。雪に閉ざされたなかの、かつてのわが家のように。心像をいかに具体的につくり出してゆけるか、という段階にはいると、
「もうええんとちゃうかなぁ」
そうコヅキからお墨つきをもらえるほどに、飛躍的に上達して。散策してもよいのでは、という話のながれともなり。それはむろん体調がもち直したからでもあり。もしかすると復調してきたから上手くゆけるようになってきたのかもしれぬとリウは思いもしたものだったが、逆に上手くゆけるようになってきたこともあずかって恢復してきたのかもしれず、いずれか片方のはたらきによるものでなく相互にゆき交い作用していたものであるのかもない。身と心がまったく切り離されたものでなく、重なり合い影響し合うもの、ときに一対の反応をおこすことのあることを考えれば、相互作用があって然るべきこと、かもしれぬ。ともあれ、リウは気がかるくなり喜んでいて。なんとか形にすることができたこと、外気にあたることのかなうことを。密閉しているわけでなく、常にふんだんに入ってきているとはいえ、やはり地に足をつけ動くなかで感ずるくうきはまた異なるものであるのだから。リウが喜んだのは他にも理由があって。
「もちろんセヒョはんなんかに付いていってもらうとして、遠くから見まもるようなあんばいでええやろねぇ」
セヒョは巨躯で一緒にあるけばひと目を惹くから、という配慮によるものらしい。数日前になる前回はリウがそれどころではない状態だったからか、雨と雨具で隠せると思ってか。また、まさか町中までゆくとは予想してなかったからなのではなかろうか。ともあれ外にでて風にあたることのかなうばかりでなく、そのなかをひとりで歩めるということも願ったり叶ったりで。それは何もセヒョが煩わしいとか厭わしいというのではなく、ひとりになって集中したかったからで。というのは、制御する訓練をはじめた初めてのとき、トリかららしい思念をうけ、その後交信を試みたものの、どうもうまい具合にゆかず。なにかあったのだろうか。あったとすれば、一体なにが。そもトリであったかどうかも定かではなく、違うのであれば違うと応答がほしいかったが、もしかするとトリ自身になにかがあってそうできない状況であるのかもしれず。気をもみながらも、あれだろうかと思いあたることがひとつなくもなく。訊ねはしなかったが、こちらの方に問題、障害があるのではないか、と。キライから聞かされたことによると、コヅキは幼少期からずば抜けた能力の片鱗を見せ、そうはいっても齢を経るごとに衰えてゆく者もいるなか、心身の成長にともない増してゆき、呪術の知識技術も身につけて、一族を統べ、天授再興するものと期待を寄せられていたものだったが頑として肯んじえず、伴侶を娶ることもなく若いうちからこの場所に移り隠居生活をおくるようになったのだという。さりとて没交渉になったわけでなく、必要に応じて相談にのり、助けしていて、ためにリウを引きうけてくれもしたわけだったが。そのコヅキによりこの屋敷には入念に結界が張られていて、妖しのものがはいり込むことも何らかの力がおよぶこともまずあり得ないとのこと。であれば、思うように交信ができないのも道理だろうと心づいたもので。ただし、だからこそ胸が騒ぎもして。そんななかでさえ届いてきたということだとしたら、よほど強い訴えだったのではと思えて。さりながら今までのようにやみくもに飛びだしても迷惑をかけるだけになるだろうことは、さすがに理解できていて、シラギ山に何かあったのではないかとそれとなく訊き、キライに探ってもらうことにしたものの未だいらえはなく。未だ、といっても二日まえのことではあったのだったが、逸る心には非常に長いときに感ぜられるもので。であるため、結界のおよばぬ外であれば思うように疏通できるだろうと思ったため。内なるものを被いながらであるから、難しく余計集中力を要するだろうと予想され、ためにひとりになりたくもあり。そうすることを誰にも告げずに。よく考えたわけではなかったが、反対されるだろうと予測をしたからでもあって。よく考えたわけではなかったから、なぜそうされるかまでは思いおよぶことのなく。
「涼しいときが、ええんとちゃいますやろか」
コヅキからお墨つきをもらえた明くる日に逍遙にでることを快諾され、キライからそう提案されて朝まだきに出かけることに決め。そうは言わなかったのだけれども、人がまだあまり出歩かないだろうころ合いであるためでもあるのだろう。やはり榛摺いろや亜麻いろのいでたちーーほっかむりまでーーをさせられて、一見するとお上りさんだとか老いた人、しかもどう見ても裕福とは見えないそれに擬することを狙ってのものらしい。特段リウにはこういう格好をしたい、こういう格好はしたくないというこだわりはないし、ひたすらひと目に止まらないようにするためという意図は理解していたから、なんとも思わずに身にまとい。はたしてそこまで気を配ることがあるのか、自分が該当するものであるのか、いまも確信をもてないでいたものだったが。
一種綿々たる余韻のマツムシとスズムシの音いろは嫋々として、いまだ明けやらぬ気配を思わせ(その光はつよくはないものの日は昇ってはいたものの)、セミの音まだなく、うす霧のうちにけざやかに耳につくモズのさえずり。ふと、ハジの木が近くにあるのだろうか、と思う。モズのいるハジの立枝は色付きて。郊外ということもあってだろう、コヅキの屋敷のまわりには人影もひと気もなく。人の住む場所にしては草木や土やうごくものの気配が濃くなっていて、視界にうっすり紗がかけられていることもあって、やすらぎを覚えて。歩きながら、トリとのやり取りができそうでもあり。セヒョに隠すことでもないとリウは思っていたが、さりとて言うまでのことでもないと思えーーというのは自己欺瞞で後ろめたさがあったからでーー、さり気ないふうを装い、意識を集めてゆく。内側に厚く被いをかけたまま、問いを飛ばす。
ーートリ。一体なにが起こったの。
地面に足をつく音。すこし離れた後ろから、セヒョのそれも聞こえ。発信できていないのだろうか、かすかな手ごたえすらなく。そも上手くできるものか分からず、かつ内なるものを隠しながらで、できているものか自信もなく。できていたとして、届くまで到らないとか、口を布で被って発声すればくぐもってこと葉として認識のかなわぬものであり、そういう具合になって、ただ雑音として聞こえている可能性もあり。それならそれで、誰何する返事がきそうなものだが、分からないから警戒して応えないということもあり得る。幾度となく繰りかえし発してみる。もしかしたら、受信できない状態、もしくは受信まではできても返信できない状態であるのだろうか。
「どないしたん」
そう言われ肩に手をあてられ、飛び上がりそうになるほど驚き。トリと交信をはかることに気をとられすぎて歩みが鈍り、とうとう立ち止まってしまうほどに集中し、まわりが見えなくなっていたからで。
「あんばいようないんか」
首を左右に振ってみせ、かといって何をしていたか語ることあたわず、目を合わせないようにしながら、
「考えごと、というか、思い出したりしていて・・・・」
何のことをだ、と問われるかと、その応えを必死で思いめぐらせていると、
「そうなんや」
追及されることのなくあっさり済まされ、ほっとしているところへ、
「あんな、よした方がええで。念飛ばしてたやろ。怨みだの呪いだの生き霊やなく、言いたいこと、みたいやけど。つたえたいことを念で飛ばし飛ばされするんは、便利は便利やねんやけどな。そやけど、なんでもええとこがあれば、あかんとこもあってな。たとえばや、ここに人がようさんいたとして、他の人らに聞かれたくない話するとするやん。そんとき、耳に口近づけるなりしてこそこそ低い声でいうやんか。聞きやすくするために、でかい声でいうアホおらん。それに似ていて、たいていの人らは受けとることができひんものやけど、なかにはおるからな。で、成りすましでよこされることもある。いま案じなあかんのは、どこにいるのか掴まれてしまうことやんな。なんやら苦心してそうされへんようにしてやっていたみたいやけど、慎重にした方がええやろね」
すべて見透かされていたことに赤面し、肯く。自分でも気づかないようにしていた後ろめたさまでも。セヒョは追い討ちをかけるでなく、あっさりと、
「ほな行こうか」
居心地がわるかったものの、霧が消えた町中に来たときには、気は紛れかるくなってゆき。戸を立てているところがたいていで人通りはすくなく、表にいるのは家屋の外まわりを掃いたり打ち水している者くらいで。イヌの姿も時おり見えるばかり。柳やタチアオイの影も淡く。日中の喧噪が夢のようで、もしかするとうつつではないのだろうかと感じるほどで。いずこからか風鈴の音。ふっと睡魔にまとわりつかれたように、ぼんやりと快い感覚が頭のあたりにおこり。思いはシラギ山の砦を描きだし、このあいだ見た映像(想像なのか)では誰の姿も見えなかったけれども、実際はどうなっているのだろうか。あの通りになっているものか、それとも今までのように生活が営まれているものだろうか。キライが調べてくれると受けおってくれたものだが、いつになったら分かるものだろうか。頼んでから数日だというのに、やはりかなりの年月がかかっているように感ぜられもして。火急の事態に陥っていたりして手遅れになっていなければよいのだが。手遅れどころかすでに。そうリウは思ってしまい、慌てて振りはらうように首を力強く左右にふり。仮にそういったことがあれば、シュガが何かしらの形で知らせてくれるだろうし。いや、知らせようにもあの店にいないわけで、今いるところを分かっているものか、おそらく分かっていないだろうから、やはりキライの手配してくれた結果を待つしかないのだろう。
したたり落ちる水の流れをうちに感じて。ゴマギ、ヤマアジサイ、ハマクサギ、ケンポナシ、フサザクラ、サイカチ、ヌマスギ、カツラ、ヒルギ、ニレ。とりどりな樹木の梢をわたる若葉いろの風。慕わしい景色のあらわれて。木洩れ日。セミの声はなく、遠くからカッコウの声のして。せせらぎのふちの、流れのゆるやかなところにはミツガシワのしろい花やコウホネの黄いろの花のほころびて。そのわきで運ばれてゆく木の葉や花弁や虫の死骸や。吾の思いも。時おりカワセミがヒスイの如く燦めきながら突き破るみなもの内には、アユや微生物やらの息づき。呼吸の銀いろの泡。突き破られながらも、みなもは瞬く間に何ごともなかったかのようにふさがり、間断なく流れゆく。菫青石いろや翡翠いろに変転しつつ。その飛沫が、飛沫ととらえ得ぬほどの細やかな粒子となってか、風にうるおいと涼味のおび。吹かれた雪の散るに似て。たずねいるみやまの奥の里ぞもと吾がすみなれしみやこなりけり。リウは川べりの岩に腰をおろし、目を伏せていて。まつげを微細にゆらしゆくそよ風。閉じはせず、水の方をむいてはいたものの、かといって水の流れに注意をむけていたわけでもなく。さりながら眺めてはいて、朦朧としていたわけでもなく、ただ目下にある川にばかり視覚や聴覚、意識をむけていたわけではないということで。腰から脚にかけてふれる岩、鳥や虫の音、水や土や大気やおのれの躰や。それらは別たれたものであるようでいて、それはあくまでも個としてしか認識し得ない人間の内部での切り取り、分断でしかなく、ひとつの、ひとつのということ自体愚かしい、森羅万象は区切りも別もない営み、であり循環。見方をかえれば、愚かしさ、卑小さすべて包み込む、それも紛れもない一部であり。ゆきすぎる虻。葉陰にとまる蛾のヒメシャク、アオシャク。毛虫、青虫。地中に棲む、モグラやらミミズやら。見えず聞こえず触れえずするような微細なものまで、おのが身と地つづきに感ぜられ。いや、おのが身の内におこることと感ぜられ、おのというものが薄らいでゆくようで。身内のひとかけらであるものが傍にいて、それに手という部分にふれられて。
ふれられたのだろうか、それとも自らにふれたものか。ひとつのものであるのかもしれぬが別たれ、手という認識がうまれ、相手の手が重ねられていることを知り、別たれて現れた人がいることが認識されてきて。いまの自分というもの、自分のおかれた状況が形成されてゆき。潜っていた水中からあがったおりにするように、リウは深く息をつき。ひと呼吸終えるまえに気をとり直し(もどし、か)、となりをむいて、あッと思わず声をもらしそうになり。漏れでたのはため息のようなかすかな声ばかりで。シュガの双眸と合い、交わる目線。どれくらい、もの思いにふける、もしくはぼんやりしていると思われるであろう状態に自分はあったのだろうか、と戸惑う。時というものがないところにあったものだから。それはシュガもそうであったのかもしれない。リウは彼と会った最後のおりを思いだし、そんな気がされてならず。あのひととき、その内のたまゆらの間であるかもしれぬが、ひとつになっていたのかもしれぬ、と。うつつの世では一瞬のことであり、うつつを越えたところでは常しえの。森羅万象まで広げずとも、ふたりは本来ひとつのものであるのではないか。願いや望み、ましてや自惚れともちがい、混じりけなく自然にそう思えていて。氷になろうが雪になろうが湯気になろうが雲になろうが、水は水であるように、形は違えど同じく重なりあうもので。
ツクツクボウシが鳴きはじめ。柳の葉のそよぎ。ふと目が醒めたようにリウは立ちどまり、枯れた葉が自然に舞い落ちるが如く、もう戻ろうと思いたつ。何となく、シュガは無事にいるだろうと信じられ。なにか危険に陥っていれば感じられると、根拠はないが確信されて。地をつついているセキレイ。きびすを返し、逍遙を終えることをセヒョに話し、何もわざわざ離れて歩くことはないと今さら気がつき、リウ自身その必要がなくなったからでもあるが、ならんで往くことを提案して。セヒョも同じく判断していたものか、制すでなくなにもいわずにかたわらの人となり。気にかかっていることを問いかける。
「リョウヤはどんな具合でいますか?」
「きばってるらしいで。キライさんの下でしこまれてるみたいやけど、呑みこみが早い言うてたな」
よかったと安堵しつつ、ただし問題はあって、
「あの母親が黙って手放すとはおもえないですが・・・・」
「大丈夫やとおもうで。要はいかに高く売れるかだけやろし、水戸やくらいのオオダナやったら願ったりかなったり、わたりに舟やないか。いざとなれば子をダシにして巻きあげられると踏むやろしな。ああいうてあいは。で、それは水戸やにとっても、利があるかもしれへんし」
「あんな人に利が・・・・」
思わず本音をもらしてしまい、哄笑され、
「ずばっと言うなぁ。人品骨柄はあれやけど、あれで顔ひろいからな。うわさ話、ヨタ話が主やけどそこにはたまにええ情報あったりすんねん。いろいろ繋がりがあるからな。もちろん直にやないやろけど、天長だの天礼ともあるみたいやし。そやし、シラギ山のとこにオレらを手引きしたんはあの年増やからな。あそこんやつらが祭司長のイヌになってるて、モミジさんにたれこんでな。モミジさんはあれで・・・・あれでいうてもそう見てないやろから知らんかもしらんけど、女のオニいわれて地元では恐れられててな。そやけど、国をおもうとこあって、天礼さまがまつりごとをすべきや、て人やったから」
だからまんまと乗せられて、とリウは理解し、
「ネジロを襲われたらしいけれど、モミジさんは・・・・」
「死人も出たし、焼きうちかけられもしたから、残ったもんは、いまは木を切ったりスミつくったりしてるわ。モミジさんも、傷おったはおったけど、いのちに別状はない」
それは何よりだけれども、さりとて良かったと言えることでもなく口をつぐんでいると、
「ところでなぁ、この間、みちでぶつかった女あったやん。目に布まいたのな。あれをリョウヤが見たことある言うててな。母親があいつから仕事うけたことがあった、いうて。どうも祭司長となんらかの繋がりがあるもんらしくてな。手先の手先、といったところのもんやろけどな。で、母親が呼びかけるの聞いてたいうてな、イルカていうらしいわ」
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