第107話 女神リル
しののめのほがらほがらとあけゆけば。日のいろの濃度と量の増してきたためか、縁側にかけて巻いてあったスダレをキライがおろし。その分、かすかにつよまる沈香の香。スダレ越しにうつる、シノノメ草の花の影。昔話を語るコヅキと向きあっていたリウは、艶のあるヒョウタンを鑑賞するが如くこうべに目をあてていながらも、意識が時おりべつのところへ移動していて。集中できず気が散って、ということでなく話の内にはいってゆき、そこから見えてくる景色を眺めていたわけであり。万世一系と言われる現今のミカド(天長)をミカドたらしめ、そして祭司長が共にあることの正当性を説いた建国神話があるらしい、とだけはリウは知っていて中身は知らなかったものの、禿頭の翁のはなすものとは大きく乖離があるだろうことは容易に判断がつく。コヅキの側からの話では、権能をあたえられた者などなく、権能をあたえられたと主張する者だけがいるばかりで、神というものが表立って活躍するわけでもない。国の成り立ちなど、生き物のなかのひとつである人の、ごたごたであり愚行にしかすぎないのだから、となり。ツチの声を聞く人の末裔だからこそ知り得、語り得することなのであろうか。人の蠢きのなか、紫いろの花びらの舞いおちる映像が見えていて。それらはひらひらと人にふれ、やさしさやあかるさやひらめき、よき心のはたらきだとか叡智をあたえていたものでありながら、気のつく者のほとんどなくて、とき視界を遮られて邪険に振りはらわれるくらいのものでしかなく。ツチの声を聞く一族だけが心づき、カミユイの樹の重要性を説くも、それも虚しく濫伐されてゆく。切り倒しやすく、材質が頑丈でありながら軽いために扱いやすく重宝されたものらしく。その意見の相違が、アメの者との別れる一因ともなっていたようで、すなわちカミユイの樹を守るために統べる立場から離れたという側面もあったもようで。紫いろの花びらと人が触れあう機会のすくなくなることに比例して、人と他の生き物、生き物に限らず万象とのつながりが薄れてゆき、それは物理的なもの以前に、まずは意識からはじまって。循環のうちのひとつであること、循環そのものである存在、その径路が断たれたように感ぜられなくなっていったもので。当然ながら気のつく者のすくなく、仮にいたとしても気にかける者などなく、というのは人にとって都合のよいようにすることのみに邁進しているため、そんなものは役に立つどころか邪魔になるばかりであったから。目に見えぬことは、降臨したという天孫が役割として担っているわけだからそれで充分である、という理屈であり。それは自動的に発生した理屈と言えなくもなかったが、天孫と称する者らがそう思わせるよう働きかけた側面もすくなからずあり、利害の一致したものであり。警告を発していたツチの声を聞く者らとて、そのなかにいた時期があるわけで、影響をうけないわけのなく、全く染まった者も出てくるようにもなり、さりながら矜恃をもつ者を輩出しつつも、カミユイの樹の減少もあってか、聞きとる能力は先細る一方で。その最期のあがき、断末魔のようにおろしたのが、くだんの預言であり。アメの子と自称する者らから、ツチの声を聞く者らを追いやり、ツチを蔑ろにしたあかつきに、そうなってしまった代(世)はツチに還される。還すために、ツチの玉をもつ者、同時にアメの玉をもつ者現れるのだという。
ごっちゃなわらす、玉もてではる
ひんのわらすはくれえ玉
すいのわらすはしれえ玉
玉こばはこぶはおっがねぇ
おっがねぇかみくだきもするニジの神
はこぶはアメとツチとのゆうとこさ
かっちゃのリルのふところさ
ひとつにすべってツチならす
サッコラサー
サッコラサー
母のよく歌ってくれた子守唄が、ふっと思いうかぶ。いまにしてそれが預言を落としこんでいた唄だったのだ、と思いあたることのかない。コヅキの語りよりも詳細な。そも母が水戸や(天授)の家から飛びだしのも、そこに理由がひとふしあるらしく。ツチの玉をもつ子が生まれるというシルシを読んだ天長と祭司長が駆除すべくうごきだし、それにより自分のも内にある子の安全のみならず自由を守るためにしたようであること。ということは、今までよく考えたことのなかったものの、もしかすると吾がその・・・・。まさか、そんなことは。それがそのとおりであるのかないのか、そういうことはなかろうと思いはしたけれど、時期といい血筋といい可能性は否定のできぬことではあり。ツチの声を聞く、という特徴は、実感としてよく理解できるものであったし。カミユイの花で染めた布で白き石を包みこみのせた、簡素な作り棚。その前に額づき、手をあわせる母の背中。・・・・は常にいませども、うつつならぬぞあはれなる、人の音せぬあかつきに、ほのかに夢に見えたまう。母が交信していた白き大きなクチナワ、使いとなる白狐たち。その大元にいるらしい存在の気配を覚える、無限にうちひろがる豊穣なる泥の闇。いとけないみぎりに目にし、肌に、胸のうちに捉えしてきたものーーひび割れ砕け、ただの破片でしかないものが寄せあつまって元の位置にはまりゆき原形の姿が表れてくるが如く、ぴたりぴたりと符合してゆき見えてくるものが、腑に落ちてゆくように感ぜられてならず。濃密なあやめもつかぬ霧が徐々に薄らぎ、遠方にようよう目的とでき得る大樹の影が見えてきた、とも言い得るのか。霽れわたるまではゆかず、まだまだ見とおすことはあたわぬものの。
濃霧は、湯気のようにも見えてきて。鍋から立ちのぼり、釜から噴きだし。初めちょろちょろ中ぱっぱ赤子泣いてもの騒がしいときを抜け、家事と農作業で荒れた母の手が木ぶたを持ちあげたとたんに、ふわっとやわらかなもののあふれ出し、煮えた雑穀米のあまい薫り漂う。木ぶたからしたたり落ちるしずく。しずくが大きくなり、粘りをおび糸をひいて落ちてゆき。いつの間にか巨大なケモノの開いた口腔になっていて、牙から歯ぐきから、唾液がぽたりぽたり。それは鍾乳石のあまたある洞窟内部で。じっとりした薄暗がりを、ところどころに置かれたロウソクの火が点々、ぼんやり辺りを浮かびあがらせて。奥から誦するシタシタと、細い針で刺してくるような声がしてくるばかり。声の主はひとりで、低く唸るように発してはあるものの紛うことなく女人のもので、どうやら齢の若いものであるらしく。水滴の打ちつける音くらいしかない、澱み沈む空気。鳥肌が立ち、足がすくむ。その内部の隅々に、阿鼻叫喚の残響が染みこんであって。いま読誦している者のものも例外なくあり。撲ち据えられたこと数限りなく。ただし、弱音をはくことなく逃げ出すことなく、もっとも逃げ出すことは即、死であって、逃げ出さずとも用を足さぬものは容赦なく処分され、そのなかを堪えぬく胆力と、択ばれるだけの能力の素地をもち発揮し得てのいまの地位で、そう指導したものは既に退き、いや、退かせたのだろうか。そうせざるを得ないように、仕組まれて。有無を言わせぬだけの圧倒的な能力差を会得したものでもあったらしく。奥にいる者を感じながら、重なりあうように同時に、どうやら同一人物であるらしい者をべつの空間に感じはじめていて。あたかも水に濡らすと、もしくは火であぶると浮かびあがり表れる、薄紙に仕込まれたあぶり文字の如く。こちらのほうは、紙よりも厚く大きなものに隔てられているような、姿かたちもおぼろで、もの音もこもったように聞きとり難く。口争い、まではゆかぬものの、その女人は幾人もの相手と対立している気色。表面上は慇懃に対しながらも隠然たる権勢をもつらしく、押しとおし。その師匠筋にあたる老体にも。術師の者どもにも。老体はかつては非常につよい能力と老獪な権謀術数で勢力を誇っていたものだったが、寄る年波には勝てないということなのか、呪術の反動であるのか、ほかに何かしら因があるのか、弱り、かつては罵り打擲し蹴り飛ばした弟子筋にあたる女人に、表向きでは立てられながらも全く意見できない状態になっていて。もしかしたらそういう状態に陥ったのは、そう仕向けられたのかもしれぬ。大いなる血筋に仕える者のなかにあるもので、そこは同じくあったが、そこだけが同じくあるだけで、その女人は孤立しているものらしい。他から疎まれてそうされている、というのでもないらしく、疎むと言えばみな自分以外の者をそう感じてはいるようだったが表沙汰にしないだけのところを、露骨にならない程度ではありながらも、女人ははっきりと態度に出し、孤高を保っている気配があって。なぜかくまで頑なであるのか。あたかもみなが敵であるかのように心の身がまえをとかないのか。何か烈しく内に秘め、握りしめている信念、目的があるものらしい。それは、一体何であろうか。どうも声に聞き覚えのあるような気のされてならず、気配からつかみとれる感触にも未知の相手ではないようなものがあるように思われてならず。こちらの立場からの、別の観点から言えば、今ひとつ見とおせないでいたということであり。見とどけようと近寄ってゆく。どうやら相手もまた、こちらの気配を察し、傍にくることが分かっているものらしい。あっと息をのむ。もしかすると、これは自発的なものではなく、誘発されてのものであろうか、と疑念をもったとき、気流の渦がまいていることに気がつき、吸いこまれそうになり。その刹那、白い手がいくつも現れ出で、吸引を遮断する膜をつくりあげ。白いクチナワと、白狐たちの影がよぎり。
引き離されて、放りだされたのは日のなかで。オノコロ草のゆれ、シロツメクサの生いしげる野原の上に坐していて。シジュウカラのさえずり。陽光は照りつけるでなく、やわらかく降りそそぎ。花もえぎいろのそよ風が通りすがりににこ毛をなぶってゆく。ちいさい手足になっていて、ひとり腰をおろし空を眺めていて。母と父の姿は見えないが、直にやってくることだろう。天にかかるわた雲。サジのように見えるものがあり、イモに見えるものがあり、ゆっくりゆっくり追いかけっこしているようで、かさなり、形をかえてゆく。魚のような形状をとり。コイだろうか、勢いよくはしりゆくさまから、瀧を駆けのぼっているように見えなくもなく。そして瀧を越えさらに天高く。青く尾びれを光らせて。そこには、鳥のほか、トラやカメも棲息しにぎやかにしているものだろうか。雲の別たれ、路ができ、七色にゆらめくはごろもの乙女が完爾と笑んで舞い、てのひらから花びらをふらせて。ひらひら舞いおちるそれは、きらめきながら雪の花のようにすぐに消えてゆき。触れようとしたり掴もうとしたりして手をふり、笑い声をあげながら見守りつつも、密着しふれている草と土と、それらのあるどっしりした地面をつねに感じていて、そうしようともせずに無意識的に対話、といったらよいのか意思疎通といったらよいのか、つながり、交流をもっていて。交信というまでの隔たりもなく絶え間なく循環している、それが自然なさまとしてできてある状態で、人というより植物といったほうが近いのであろうか。
アジサイの花弁のいろのように日の色の変化してゆき、風物を染めかえてゆく。カラスの啼き声。母も父もまだ迎えにこない。それどころか思い返してみると、赤子の泣き声、わらべのかなきり声や歌声、おとなの声、跫音をひとたびも耳にすることのなくいたもので。人影ひとつささず。それでいてゆめさら不安のないのはなにゆえであろうか。放り出され、置いてきぼりにされたのではない、と分かっているからかもしれぬ。目をおろすと、あわい橙いろに黒い縞模様のちいさい虫が、つのをうごかし這っていて。粘液のついた痕跡。マイマイツブリ同士がつので争うという喩えがあるけれど、実際にそういうことがあるのだろうか。あくまでも表現上だけのもので、なさそうだ。諍いをおこす必要性などつゆさらさなさそうであるし。してみると、この小さくのろい生き物のほうが、人よりもよほど悧巧というのだろうか、寛容というのだろうか、ともかく賢い生き(行き)方をしていると言えそうで。マイマイツブリに限らず、アリであっても、モグラであっても、ミミズであっても、鳥であっても、イヌであっても、猫であってもそれは何であっても構わなかったのだが、なにゆえ人というものはかく愚かしいものに成りはててしまったものだろうか。いや、愚かというのはふさわしくないのかもしれぬ。そうではなく、自然の流れに逆らい、それを欠いたり破損させたりをするようになったのは、どうしてなのか。さりとてそれはたまゆらの間、湖面を過った鳥影の如きもので、長く留まることのなく。跡の残ることもなく。と、静謐なみなもに、かすかに細かな波紋があらわれはじめ。ぽつぽつと繁く打ちつける雨のつぶ。はじくものもありながら、含みもの、しみ通ってもゆくものもあり。降りそそぐやわらかな雨。濡れてゆくことによって、地との循環がより濃ゆくなっているように感ぜられる。地中深くから湧きだしてくるもののあり。胸に留まるそれは、頭のうちで、ことの葉として捉え直され。表象としての大地そのものの存在。母なる大地の神。
「リル」
自分がでに思いもかけず口を突いて出たそのときは、ちょうどコヅキの語り終えたところで。ヒトはいつまでたっても賢くなれず、ただただ道具をつくり出してゆくばかり。賢さとは道具をつくり出すためにあるものだと、思いちがいしているからだ、とツチの声を聞くものは、聞きとっていた、と。リウははっとして、口を覆う。隣で寄りそうようにしていたセヒョは、口走ったリウに大きな目をさらに見ひらき丸くしてむけ、
「・・・・いきなり、どないしたん。リルっていうたら、この世を滅ぼそうとしたマガツ神やんか」
えっ、リウは驚き見かえす。滅ぼそうとしたマガツ神。邪なる存在であるかのように言われたそれは、リウのなかで感じとれてあるものとあまりにそぐわないものであったからだったが、さりとてこうこうこういうものだと説明し得るだけ明確につかめていたものではない、どころか在ると感じていただけのものであり、というのは道理で、だれから聞かされたこともないものであったから。その名称も、先ほど閃いただけのものであって。なにゆえその名が閃いたのか、口走ってしまったのか、自分自身におきた反応のわけすら判らなかったわけで、ただ絶句するのみ。そのようすから、リウが何も知らずにいることが察せられそうなもので、すくなくもコヅキは呑みこめたらしく、緊張をおびるもしいて笑みを維持し、
「教わらんでも分かったはるんやなぁ」
心なしか青ざめた顔で、改まったさまで言い、つづけて、
「母なるツチの神リルさまは、われらの奉ずるおかた。天長さんや天礼さんのいうたはるはなし(建国神話)では、アメのオヤガミである父なる神から追いやられ退治されたいうことになったはるなぁ」
それはそれでリウにとっては呆気にとられる内容ではあったが、セヒョのつい先ほどの現行といい、母の教えてくれた子守唄だとか人の口から漏れ聞くことが時にあるのみで、耳にすることがまれであったことどもを思いおこされ、違和感のあるそれらの理由が腑に落ちはして。天授の仕える神であるから、自動的に外道の存在ということになるのであろうと。統べらう代を消去するものーーそれは人であろうかーー、をもたらすのもその存在であるからして。さりながら、建国神話がいかなるものであるのか、天長ら側がどう捉えているのか解らぬものの、コヅキの語ったことを土台として建設されるであろうものを見ていったとき、それはそれで不可解さは残り。ツチの神による者ばかりでなく、アメの神による者も同時期に現れておこる(起こす)出来事であるのなら、片方だけのなす災厄とは考えにくいと思うのだが。益体もないことであろうか、とおそるおそるリウは疑問を口にすると、えたりかしこしと翁が自らの膝をかるくうち(リウはその仕草にびくっとかるく震え)、かるく笑い声をあげ、キライと目を見交わしうなづき合うと、
「天長さん天礼さんらは、そうおもったはるのか、おもいたいんか、そういう卦が出たのか、いずれにせよ。あくまでもツチのもののみがわざわいをなすものとして、なきものにしようとして来やはるんやけどなぁ、それやったら辻褄があわへんのよなぁ。それとも、アメのものは、防ぎ退けるために、とおもったはるんか。もしくは、わてらとおなじく当たり前の見方をしてて、すでに手にかけてしまったもんやから、ツチのほうにだけ注力したはるんか」
「・・・・それやったら、天長、祭司長ばかりやなく、天礼さんもおなじ穴のムジナいわはるんか」
セヒョは怒鳴るように大声を出すも、怒気はなく、すくなくもコヅキに向けられたものではなく、問い質すでなくつむりを下げ。膝のあたりを掴んだ手も、肩のあたりも小刻みに震えている。コヅキは平静にそのさまを見つめ。
ツクツクボウシの音がわき始めていて。スダレ越しに見えるシノノメ草の花の影は閉じはじめてきているらしく、トンボの影のすべりゆき。竹林を吹きぬける風の音のして。おのおのがおのおのの思いに耽っていたものか、しわぶきひとつ立つことのなく。一時に大量の、かつ重く巨大なことどもを受けとったリウはぼう然として、ただただひたすらスダレ越しの景色を眺めていて。しかも、そこに自分自身が関わっていると見なされているらしいわけであり。否定できるだけの余裕がなく、また、否定するほうが不自然なはなしだと、どこかで静かに判断している部分もあって。受けとめ、受けいれすることに困難していての逃避であろうか、シュガへと思いは馳せてゆき。天礼の血をもって生をうけ、何ものかのために働くために呪具にされ。その何ものとは、天礼であることは間違いないだろう。その身に封じ込められた魑魅魍魎。あらゆる毒虫、ケモノ、人の怨念の濃縮されたもの。それを持ち堪えられたのは天礼の血をうけたものであったからだろうか。厭悪、憤り、哀しみ等感情の波うつなか、シュガに巣くっていたあの瘴気を放つ有象無象に意識がむかってゆき。べつの処でも通じるものを感じたことがあって、記憶をさかのぼり、巡り巡りめくりめくりしてたどり当て。ヤマンバになったヨネがその身をとおして浄化していた、黒くうごめくもの共。欠損され霊体になっている、という形態が同じであるというだけでなく、そこに働きかけられていた力(呪)の気配が共通するような気のされてならず。そして、ヌエというモノノケにも。それらがいかなる解が導き出すものであるのかリウには見当もつかず、考えてみようともせず、つまり足をとめず心の眼をひらき追ってゆく。うす暗い室内。中心部になにか像のようなものが据え置かれてあり、そこから紐が走り出ていて。それは四隅に配置された布の中身に繋がり、たゆむことなくキンと張らせてあり。紐で幾重にも巻きつけられてあるそれは、一体なんなのか輪郭しか見えず。どうも何かをかたどった像でもなさそうで。よく見ようとするも、張りわたしたものや誦する声、焚きこめられた香の煙で霞んで仕方ない。まとわりつく蚊のように煩わしく、振りはらってしまいたい。それを気どられたのか、濁った沼にわくうたかたが弾けるような四方からする声が、つよく大きくなり。
ーー・・・の神、名は阿明、・・・の神、名は祝良。・・・の神、名は巨乗、・・・の神、名は禺強、四かいの大神、・・・を退け・・・・・・
ーー朱雀、玄武、白虎、匂陣、南斗、北斗、三台、玉女、青龍・・・・・・・
ーー・・・・・・ほのけ、みずのけ・・・・・・奇しき三津のひかりを・・・・・・しき光、天の火気、地の火気、振るべゆらゆらと、ひとふたみよ
ーーあめのをき、つちのをき、あめのひれ、つちのひれ、あめのおむすび、つちのめむすび、ひのめおのさきみたま、つきの おめ の さきみたま・・・・・・
吹き払うことなど、ロウソクの火を吹き消すように造作のないことのように思われて。息を吹きかけようとかまえたとき、ふっと肩を押され。瞬間、日に染まるスダレを見る。いつの間にかそばにいたキライに肩に手を当てられていて。すぐに手が離れ。当惑しているところへ、コヅキが目を細め、
「まだ、その時期やおまへん」
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