第5話
次第に草は土色へと紛れて、動物や虫たちも声を潜め、しんしんと雪が降ることが増えた。海風が山の向こうから吹くから、この辺りはそこまで雪が深くないほうだと、前の主人が教えてくれたことを思い出す。それでも、チエさんたちが来たトカイに比べると、しっかりと積もるようだった。クルマの行き来に苦労するから町の近くに家を借りようとコウイチさんは提案したけれど、チエさんはここを離れたがらなかったので、この冬もこの平屋で暮らすことにしたそうだ。サトコさんは、チエは桜さんが心配だって言うの、とコウイチさんに漏らしていた。
「あの木、桜なのか。花がないものだから気付かなかったよ」
そうコウイチさんが返すので、人にとっては、桜はやはり咲いてこそなのだよなあと、微睡む頭で思案した。
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