第360話
「ォォオオオオオオ!」
踏み込んできて剣を振り回すサティ。
「……っ、……!」
僕は激しく動き回りながらも頭の中は冷静に保って、その動きを観察していた。三回に一回は掠って傷を負うけど、気にせず見ることに集中する。
まだ、ここじゃない。
今のサティはまともではない。それは剣筋にも反映されていて、子供が駄々をこねるのにも似たような滅茶苦茶な振り回し方をしている。
それでいてものすごい力で動いているから、単純に速い。
規則性のない動きに、目で追うのが困難なほどの速さで、ゲームにこのまま出てきたら苦情が殺到しそうだなんて益体もないことが頭を過ぎった。
「
こっちもやられるままって訳じゃない。風を刃にして放ち、時には相手の視界を塞ごうと試みて、火の壁で突っ込んでくるのを妨害しようともした。
だけど傷をつけても怯みもしないし、闇は気にもしていないようだったし、火にすら飛び込んで抜けてきた。
「っ! ……なるほどね」
だけど僕は見ていた。火の壁を抜ける前に、ほんの一瞬だけ動きが止まるような素振りがあった。あの時にこれくらいなら大丈夫と判断したんだろう。つまり、もっと強力であるなら火は効くってことだ。
いつぶりかも覚えていない様な魔力切れの頭痛を味わいながら、僕は手ごたえを感じた。連戦だったから仕方がないけど……、まああとは少しだ。
確証を得た僕は、サティが何度目かもわからない踏み込みをしてくるのにあわせて前に出る。
もちろん、相手はこっちが動いたことに驚いたりもしないけど、そんなことを期待した訳じゃないからどうでもいい。
「アヤマリヲォォ……タダスゥゥゥ!」
「うるさい、……よっ!」
これまでで最速の動きでサティは剣を突き込んできて、僕はそれに対して左腕をかざした。
ぞぶりという音がしたような気がした。そしてそれに続いて焼けるような痛みが腕から肩、そして頭にまで伝わってくる。
「ゥゥゥ……」
「ああああっ!」
満足そうに――うつろな表情は変わらないから僕がそう感じただけだけど――サティは小さく唸り、僕は堪え切れなかった痛みを声にして叫び、吐き出した。
装飾過多な剣はその切れ味も実用的とは言い難いみたいで、僕の左腕の肉をぞりぞりと削るように引っ掛かりながらも、途中で止まることはなく貫通していた。
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