第347話
私は “暴力”のヴィオレンツァ。パラディファミリーの幹部です。
ファミリーの幹部は本来私を含めて四人いるのですが、今回の事が収まった後で何人が入れ替わることになるのかわかりません。
襲撃者に殺される可能性もそうですが、生き残ったとしてもドンの不興を買えばすげ替えられることは間違いありませんから。
そしてドンであるサティ様なのですが……、どうにも体調が優れない様子。
私が心配して声を掛けただけでも「うるせぇっ! 俺様に話しかけるな!」と怒鳴り返されてしまう程でした。
確かにドンは“狂気”を冠するお方であり、我らごときには理解の及ばぬ高みにあります。しかしいついかなる時でも余裕のある態度を崩さなかったこともまた事実。それからすると、あの時のドンの様子は――顔色は蒼白で脂汗を浮かべ、震えの収まらない姿は、おかしかったとしか言いようがありません。
アル殿が仲間を引き連れて襲撃をしてきたことに恐怖している……などということはあり得ません。そもそもドン自らがそうなるように仕向けた節すらあるのですから。
それでもあの様子は確かに………………いえ、私ごときがドンの体調を慮るなど不敬なのでしょう。
今はただ、己の果たすべき仕事に集中するべきなのでしょう。
「…………」
この部屋はただ広いだけの場所で、何が置いてある訳でもありませんが、ここを抜ければドンの居室です。ここは最終防衛線であり、突破されることは許されないということ。
しかし、こうして部屋の中央に陣取り、目を閉じて立っている私も、動揺しているということは否定できない事実でしょう。
この手前までの場所にはパラディファミリーの幹部達が構えていたのです。なのにアル殿の気配は、数を減らしつつも近づくことを止めないのです。
もはや、ここまで到達するのは時間の問題なのでしょう。ならばそれがどの様な状態であっても、全力で叩き潰すのが私のすべきこと。
「すぅぅぅぅ、はぁぁぁぁぁぁ」
大きく息を吸い、そして吐き出しました。
体中の筋肉へと酸素が行き渡り、戦いを今か今かと待ち構えているように感じます。
そして、がちゃりと無遠慮に扉が開かれる音が聞こえました。
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