第341話
「
ぷんぷんという擬音でも聞こえてきそうな、子供のような怒り方をしていたインガンノが、次の詠唱を始める。
ここまでの間に魔力を制御し始めていたみたいで、その発動は早い。
というか、僕は魔力の流れがある程度読めるから、普通は発動準備をしていればわかるんだけど、それが全く気付けなかった。このインガンノは相当に魔力制御がうまいということみたいだ。
滞留制御……ということは岩壁をだそうとしている?
ここで単に防御壁をだす意味もないんだから、さっきと同じこと――つまり今度は岩壁を砕いて攻撃してこようとしているってことかな。
なら、今度もまた後出しでも強力な風魔法を用意しておいて対抗で十分だ。
そう考えて風魔法を頭の中で構築し始める。
と、インガンノがこちらへ手を差し伸べるようにした。それは魔法を発動しようとしているように見えるけど、なんだ? なにかが――
「……
――鋭く尖った拳大の岩塊がいくつもこちらへと殺到してくる。
「ぐっ、くぅ……す、
そのいくつかをくらって傷を負いながらも、なんとか消滅魔法を発動させて岩の群れの大部分は消すことに成功する。かなりの数だったけど、それがショットガンみたいにまとまって飛んできていたおかげで助かった。
それにしても、なんだ今のは? インガンノは確かに滞留制御の魔法を詠唱していた。それを確認したからこそ、僕は風魔法での後出し対応を準備し始めていた。
なのにその後で放出制御を詠唱して、実際に発動したのも地属性の放出制御魔法だった。滞留と放出の同時制御なんて発動しないし、さっきの魔法の威力は実際に二文字魔法相当のものだった。つまり……あの滞留制御自体が偽装詠唱だったってこと?
流動する魔力まで完璧だったのに、あれがただの嘘だったなんて正直信じられないくらいだ。
「まだまだいくのー。
もちろん僕に悩む暇を与えてくれる訳もなく、インガンノはもう次の魔法発動準備に入っている。魔法射撃戦においては、流れを掴んだらそのまま畳み掛けるのが鉄則だ。
“欺瞞”のインガンノ……か。まさか魔法でのフェイントを使えるような魔法使いが存在するなんてね。
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