第339話
インガンノを睨みながらも、ちらりと横目にキサラギの方を確認する。
………………
大量の岩が積み重なっていて、その隙間から所々にキサラギの手や足が見えている。微かに動いているけど、脱出できそうな気配はない。
いつかみたいに下半身の骨を砕いたりはしていないからまだ元気だろうけど、重量物で押さえつけられて身動きはできないはずだ。それにあの状況から僕の魔法を消し飛ばせるのは、キサラギが得意の火属性くらいだろうけど、それだとあの岩塊が焼石になって自滅するだけだからできないだろう。
まあ時間が経てば何かしら解決法を見つけて脱出しそうではあるけど、当分はこれで無力化できたと思っていいはず。
だから僕はインガンノの方を睨んでいた訳だけど、こうして改めて見るとインガンノの全身にはあまり傷は多くない。とっさに下がって僕の風魔法の中心から離れていたというのもあるだろうけど、それだけにしては軽傷すぎる。
僕がしたような地魔法の鎧ではないみたいだけど、同じように何かの魔法で防御はしていたってことかな。
「めちゃくちゃなことするのー。いっちゃんもちょっと怒っちゃった」
それでもいくつもついているかすり傷を気にしていたインガンノが、そんなことを言って睨み返してきた。小柄なインガンノが、頬を膨らませてこっちを見ている姿は、子供のようなというか子供そのものだけど、その内面を多少でも知っている身としてはうっとうしいとしか感じない。
「君がめちゃくちゃになるのは、これからだよ」
「むー」
だから少しでも気晴らしにと挑発の言葉を吐いた。インガンノはというとやっぱり子供がむくれるような表情だけど、その目には剣呑な光が垣間見える。根本的なところで他者を見下しているんだろう。だから少し挑発されただけで、感情が荒れる。
まあ、とはいってもそれで戦いを有利にできるほど動揺させられはしないだろうね。そこまで甘い相手ではないことくらいはわかってる。
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