第327話
パラディファミリーの本拠地であるこの場所へと入り込んできたのは、五人の襲撃者だった。しかしその内の三人が既に通過し、先へと進んでいってしまった。
とはいえそれで任務を失敗したと自棄になってしまう者や、慌てて通過した三人を追う者はいない。全員がこの場を守るという仕事を続行していた。
一人でも通過された時点で仕事を果たせなかったから制裁を受けることは間違いないが、途中で判断を誤っていたとすればその制裁はより苛烈なものになる。それがわかるからこそ、せめて残った二人は確実に仕留めるという覚悟に目を血走らせてさえいた。
「
しかし冷静にライラが設置した魔法が各所で的確に燃え上がり、吹いた風は時に襲い掛かろうとする構成員をよろめかせ、あるいは炎をより大きくすることもあった。
「サイラってば調子がいいの! ……はぁはぁ」
そして姉妹の片割れであるサイラは、通路内を縦横無尽に駆け回り、うかつに突出した者を次々に殴り、蹴り倒していく。
実力差は明白。しかも姉妹の連携によって、通路を守る構成員側は付け入る隙も見つけられなかった。
しかし実力差があろうと、数の差は構成員に有利なのもまた、明白だった。その上、パラディファミリーがこの場所を守らせる構成員が個々の実力において一定以上であることも、影響を及ぼした。
……つまり、ライラとサイラとて人間で、雑魚ではない大勢を相手にすれば消耗することは避けられないということだ。
「
序盤は的確に魔法を設置して戦況を支配していたライラだったが、徐々に魔法を放って応戦することが増え、ついにはとっさの一文字魔法で急場をしのぐような場面まででてくる。
構成員の方は、火を消そうと一文字の水魔法を使うものがちらほらいる程度で、実戦で使えるレベルの魔法使いはいないことがまだ救いだった。それでも身体能力は十分に高く、また暴力に慣れた集団から絶え間なく攻撃され続けるライラの消耗は既に表情を見ても一目瞭然という段階まできている。
「あはっ、あははははっ、サイラは……まだっ……元気、なの!」
一方で走り回ることでより消耗が多いはずのサイラは、姉よりはまだ余力がある様子だった。疲労するほどに表に出てくる狂気性で、敵を圧倒してさえいる。とはいえ初めは高速で走り回りながらもどこか洗練された動きで突きや蹴りを放っていたのが、今は爪を立てて引っかき、腕をぶつけて引き倒し、足では蹴るというより踏みつけるといった動作が目立つ。
疲労してなお、その的確な魔法の行使でしのぎ続けるライラと、より顕著に出てきた獣性で暴れるサイラだったが、それで構成員達の戦意が弱まるということはなかった。
一度倒されたものの中には持っていた魔法薬で傷を癒して立ち上がる者がいたし、そもそもまだ戦闘に加わらずに状況を見ている者だっている。
並みの裏組織であれば二人だけでも殲滅してしまいそうなほどに強い姉妹だったが、この通路を守るために配置された構成員はまだまだ数を残していた。
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