第325話

 三十人近くの数がいたうえに、そこらのチンピラと一線を画した実力も備えている連中だった。だからこそ、パラディファミリーの本拠地への入り口を守ることを任されたのだろうし。

 だけど、そんな連中が今や倒れ伏してその役目を果たせなくなっている。というか、息がある者もわずかじゃないかな。

 

 「ご主人様」

 

 蹴散らしたことを確認して進もうとしていると、ライラが深刻な表情で話しかけてくる。怪我をしているようには見えないけど……。

 

 「この先にも大勢の兵が待ち構えていることでしょう」

 「そうだね」

 

 階段を下りてきた場所であるこの部屋には奥に扉があって、そこから先が本拠地ということになる。僕のゲーム知識ではこの先は幅の広い通路みたいになっていたはずだ。

 そんな構造になっているのは、ここまで攻め込まれるようなことになった場合に、全構成員を挙げて迎え撃てるようにするためで、多分今まさにそうしているだろう。

 僕には扉から少し向こうくらいまで気配が感じられているし、ラセツも僕が視線を向けると小さく頷いたから同じことを感知したらしい。

 

 「あたし達にお任せください」

 「がんばるの!」

 

 先ほどの深刻な色に決意を混ぜた真剣な表情でライラが宣言すると、さっきは一緒に戦っていたサイラも続いた。

 なるほど、さっきと同じようにこの先も露払いは任せろってことか。

 

 「……」

 

 すぐには返事をせずに考える。

 この本拠地で警備を任せられるような構成員となると、そうそう多くはいないだろう。実力が求められるのはもちろん、馬鹿には務まらないからだ。そうすると、本拠地に集められる全構成員とはいっても揃えられる数というのは知れている。その分精鋭だという意味でもあるんだけどね。

 ライラはどちらかというと、強力な少数を相手にするより数の多い弱小を蹴散らす方が得意だ。その卓越した戦術眼で相手を手玉にとれるからね。

 だけどその生まれ持った怪力で多少の相手なら捻り潰せるサイラも一緒だというなら、任せても大丈夫か……。

 というか、僕がそう考えるところまで予想して、姉妹での露払いを願い出たんだろうね。そういう意味では僕だってライラの手の平の上といえなくはないってことだ。

 

 「うん、任せる。扉を抜けたら僕らは突破に専念するよ」

 

 そう頼もしく思った気持ちをそのままに、ライラとサイラの意向を了承した。

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