第323話
「
待ち構えていた敵を刺激しないような、実に自然な動作で僕らの前に出たライラがぽつりと口にした。
その詠唱が詠唱に聞こえなかったのか、あるいは気にもしていないのか、数十人いる敵の中で誰も阻止しようとかいう素振りはなかった。
あるいは、詠唱だけで発動しないライラの特殊な技法を魔法とは認識できなかったのかもしれないね。
解析のレテラの副次効果で周囲の魔力が察知できる僕には、ライラが何をしたかが視えていた。敵と僕らの間、まだ少し空いている場所の床に魔法を
ライラがわざわざ前に出ながらそうしたのは、自分が戦うという意思表示であると同時に、味方が飛び出して地雷を踏まないようにというためでもあるのだろうね。
解析レテラで察知できる僕や、精霊鬼としての性質から魔力に敏感なラセツはともかくとして、サイラやグスタフはどこに置いたかはわかっていないだろうから、適切な行動だ。
とはいえ、サイラの方はすっと移動してライラのすぐ後ろについたから、どちらにしても飛び出すようなことはなさそう。一緒に戦うつもりなのだろう。
それにまあ、こういう状況ならライラとサイラが進んで露払いを引き受けることは理に適っている。いや……まあ、僕としては全員で戦って全体的な消耗を抑えるような方針を考えていたんだけど、それは思えばゲームに引っ張られていたのかもしれない。パーティで進んで順に戦いをこなしていくっていう、ね。
だけど全員がまんべんなく消耗するようなのは良くないか……。
「いくぞ、おらぁっ!」
「うらあああ!」
「死ぬぜ、おい!」
――などなど。
待ち構えていた敵の内、数人が思い思いの言葉で威嚇しながら飛び出してきた。振る舞いはチンピラそのものだけど、その迫力は実際中々のもので、動き出しの速さも侮れない。
だけど、魔法に関して勘の良い奴はいなかったらしい。
「「「「「ぎゃあああぁぁ」」」」」
ごおおっという音をともなって、床から突如立ち昇った炎は、その内側に五人ほどをまとめて飲み込んだ。
それを見て残った連中の目つきも変わる。それなりの動揺は見られるものの、一旦様子を見る程度の冷静さはあるらしい。やっぱり、さすがはパラディファミリーでも本拠地の門番を任されるような連中だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます