第314話
裏町にあるボロ家で計画を説明した日から数日後、僕はついに決行に移そうとしていた。
その間にできる限りで情報収集をしたけど、おそらくボーライ家とカッジャーノ家によるものと思われるコレオ領内での“騒ぎ”はさらに大きくなっているようだった。
しかし絶妙に表社会で問題視されるような目立ち方はせず、やっぱり予想通りにその対応にはパラディファミリーがあたっていた。
裏町で得られるような情報でも、パラディファミリーがその手勢を領内の数カ所に向けて動かしていることはわかっていて、それだけ規模が大きい動きなうえに突発的な事態への焦りもあるようだ。
巨大かつ強力なパラディファミリーという裏組織だけど、少なくともその巨大さは今は別方向に向いているってことだ。
そして残るは強力な幹部連中だけってことだ。それだけなんとかすれば、あとはサティのあのむかつくにやついた顔を殴りにいける。
とはいえ、出たとこ勝負な面は否定できないよね。情報収集っていっても知れているし。なにせ裏町からでて、僕らの存在を察知される訳にはいかなかったからね。奇襲という唯一のアドバンテージを失うことになる。
さらにいえば、裏町屈指の情報屋であるロレッタに頼り切りという訳にはいかなくなったことも大きかった。結局パラディファミリーとの繋がりがあるのか、あるとしたらどの程度なのかということはわからなかったけど、どうだとしても信用ができなくなったのは違いない。
そうするとやっぱり裏町という場所の特性として、たいした情報は得られなくなってしまった。元々外界との繋がりの薄い場所だし、だからこそロレッタは有用な存在だった訳だ。
でもボーライ家の仕掛けについては、十全に情報収集ができたとしてもたいしたことはわからなかっただろうね。直感として、今やっている陽動だけだとは思えないんだよ。おそらくほかにも何かを用意していそう。一応は味方側ではあるんだけど、かの謀略伯爵の好きに動かれるのは嫌ではあるよね。
さて、そんな不安もある状況にあって、僕らはどう仕掛けるのかっていうところだけど……。これはもう正面突破だ。
パラディファミリーの本拠についてはゲーム『学園都市ヴァイス』でも『アル・コレオ』を討伐しにいく場所として登場するいわゆるラストダンジョンだったから一応知っている。だけどそれは『アル・コレオ』がドンを引き継いだという、今の僕からすると
一応ゲームの通りなら、入り口から奥に向かう構造で、その最奥には隠し通路とかはなかった。だけどそれを抜きにしても、どこかから逃げられることは考えずに正面から攻めることにした。
だって僕の襲撃が怖くてサティが逃げたとしたら、メンツが重要な裏社会の人間としてはそれで死んだも同然。間違いなく組織における求心力は吹き飛んで消えることになる。そういうことも踏まえて考えると、向こうからこっちに仕掛けてくる不意打ちや罠をなるべく防ぐためには、正面から順に攻め込むのが確実だ。……というか、こっちはこっちでそうやって実力を示してメンツを立てておかないと、仮に勝利してもその後が覚束ない。サティと幹部亡き後のパラディファミリーの残骸を掌握しておいてこそ、ボーライ家が用意しているその後のシナリオにおいても発言権があるってものだろう。
そしてパラディファミリーの本拠地というのは、その入り口はコルレオンの街中にある豪邸で、そこから地下に広大な構造が広がっている。だから恐らくだけど入るまでは簡単だろうね。戦闘が激化するのは地下部分に入ってからだろう。
と、そんな風に僕は考えていたんだけど……。
「……ヤマキ?」
「おう、久しぶりだな、アル」
本拠地の入り口となる豪邸の門前には、白い和服のような格好に、これもまた白の鉢巻きを頭に巻いたヤマキが仁王立ちしていた。
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