第312話
ライラから報告を受けた次の日、僕は拠点としているボロ家で仲間達と向かい合っていた。僕は端の方に置いた椅子に座っていて、ラセツは向かい合う位置で床にあぐらで座り、ライラとサイラはそれを見渡せるような位置に立っていた。
「さて……」
話しだそうとしたところで、ライラがやけにそわそわとしていることに気付く。だけどその理由なら深く考えるまでもなくわかっている。
「こういう場でライラにお茶を用意してもらえないのも……、今日までだよ」
「「「っ!」」」
そう告げると、三者三様に表情が変わった。
ライラは自分の為すべき仕事を確認するように表情を引き締める。
サイラは一瞬だけ隣に立つ姉の顔を覗いて、次の展開を楽しみに思ったのか口の両端を吊り上げる。
ラセツはじっと僕の方を見ていて表情も大きく変わった訳ではないけど、その目は爛々と輝いている。
そんなそれぞれの様子を頼もしく感じていると、場を代表するようにラセツが口を開いた。
「これで仕掛けるのじゃな? ととさまよ」
それは改めての確認だ。
「ああ、グスタフについてはこの前話した通りだよ」
この面々が揃った時に、この場所で話したことだった。残る仲間であるグスタフ・シェイザについては、合流のために行動することはない、と。
「グスタフの居場所……というか状況は把握している。シェイザ家に戻っていて、無事に過ごしているよ」
それを聞いて、サイラとラセツは少し驚いたようだったけど、ライラは無反応だった。まあこの優秀な使用人なら、その情報は得たうえで僕の意向を優先したというところだろうね。
だいたいあの武骨な相棒なら、この状況で無理に合流しようとはしないだろうとは思っていた。どう行動するかの作戦という部分においては、こっちを全面的に信頼してくれていたからね。だからきっと、一旦は状況に身を任せつつ、ひたすらに鍛錬でも積んでいるんじゃないかな。
「だから、これで仕掛けるよ。せっかくの仕込みを無駄にすることもないしね」
そんな僕の言葉でサイラとラセツは今度は不思議そうにする。仕込み――つまりボーライ家のものと思われる陽動についての情報を持ってきてくれたライラは、察するところがあるのか、あるいはただ僕を信じているだけなのか、特に反応しなかった。
とはいえ、このまま何も説明せずに突っ込むという訳にはいかないからね。その為に一旦この場を設けたのだし。
「じゃあ、説明するよ――」
だからこれから具体的にどうするのか、僕は話し始めた。
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