第298話
「うん? ああ、殺し屋を探しに行って、巻き込まれるなんて思わなかったよ」
何とでも受け取れるような言葉を適当に返す。まずはロレッタがどう出てくるかを見たかった。
「あれ? 旦那が狙われたって聞いたよ?」
「僕が? 殺し屋に? いやいや、誤解で狙われそうになったってだけだよ。向こうも素人じゃないからね、すぐに誤解には気付いてくれたよ」
わりとストレートに僕が殺し屋の標的だったんじゃないかと言ってきたから、手違いからの揉め事だったと返しておく。
ロレッタが本当に何かあったとだけ知っているのなら、僕の言葉の真偽を確かめる術はないわけだけど……。
「ふぅん……、大変だったみたいだね」
そんな風にこぼしたロレッタの目は、一瞬左右に揺れた後で机上を見るように伏せられた。
僅かな動揺。その後で思考している、かな。
「その様子だと、この件についての情報はないのかな?」
「そうだね、申し訳ないけど」
仮にも情報屋として名の通っているロレッタが「少し待ってもらえれば」とすら言わなかった。自分を取り繕う余裕すらないってことか?
とはいえ、今回ライラに依頼をしていたのはパラディファミリーではないと見ている。もしそうなら、つまり僕がここに潜伏していると知っているなら、幹部の一人や二人も使って裏町に襲撃してきているだろう。
本来は裏町っていうのは、表にも裏にも属せなかった人間のある意味受け皿で、不可侵領域みたいになっている。だけどパラディファミリーはコルレオンにおいては絶対的な存在だ。奴らがやろうと思ったのなら、この場所だって平気で蹂躙されるだろうさ。
そこから逆に考えると、今になっても裏町が裏町なりの平穏を維持しているということは、まだ気付かれていないってこと。今回の黒幕は多分僕に恨みでもある裏町の誰かってところだろうね。それはそれで腹立たしいけど、正直にいって今の僕にはそれを追う余裕はない。
今回はパラディファミリーに気付かれた訳ではなかったけど、それも時間の問題だと思っている。だからそうなる前に、仲間と合流して反撃の準備を整えないといけない。
そう、僕はいつまでも逃げ回る気なんてない。準備さえできたら反撃する――つまりパラディファミリーという組織を壊滅させる――つもりだ。
裏組織とはいえ規模の大きい連中を相手にどうするか? それは頭を潰すしかない。まあ時間を掛けて裏町を足掛かりに対抗組織を作り上げて全面戦争、っていう手もないことはないけど、そんな悠長にやるのを待ってもらえるとは到底思えないからね。
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