第291話

 ロレッタから聞いた話を頭の中で整理する。

 このコルレオンで暗躍しているという殺し屋の話だ。もちろんコルレオンにそうした裏社会の住人がいないなんてことではない。パラディファミリーに所属しないそうした人間がいないはずだということだ。

 そして存在しないはずの者がいたからこそ、異常事態としてロレッタは情報を売ってきた訳だ。

 

 そもそもなぜそんな殺し屋が存在しないはずかというと、コルレオンはパラディファミリーの縄張りであり、そこで勝手をすれば粛清対象となるからだ。“屋”とつくからには殺し屋だって仕事でやっている訳であり、強力な横槍で儲けにならない――どころか自分の身が危険にさらされる――のなら、やめるか逃げるかするだろう。

 だからこそ、コルレオンの殺し屋というだけで、何かの意図があってやっていると察することができた。

 

 ロレッタほどの情報屋なら、恐らくそこまでは気付いているだろうね。だけどその意図が何かまではわからなかったはず。

 なぜそんなことを勝ち誇って考えるかって? 当然、僕には心当たりがあるから、だ。

 

 コルレオンでパラディファミリーに所属せず裏社会の人間として振る舞うことは危険なことだからこそ、わざわざそんなことをするだけでメッセージになる。意味もなく自らの身を危険にさらすのは、狂人くらいだしね。そして狂人なら殺人鬼にはなっても殺し屋にはならない。

 

 さて、改めてロレッタからの情報では、その殺し屋は若い女で、視線だけで相手を殺せるんじゃないかってくらい鋭い目をしているらしい。強力な魔法使いで、逃げる相手を追い詰めるのが得意なのだとか。

 かなり情報があるようだけど、これはロレッタの優秀さ故であって、僅かな情報を繋ぎ合わせて推測するという、一種の特殊能力ともいえるものがあってこそだ。そうでないならパラディファミリーがとっくに突き止めて消しているだろうし。

 とはいえそんな絶妙なレベルで情報を漏らしつつ殺し屋稼業をやっていけるほどに優秀な女魔法使い。そいつには強力な身体能力の相棒がいると、僕は予想している。

 予想というか……ほぼ確信だけどね。だってこうも僕が気付きそうな程度に情報を操作できるような優秀さには、ものすごく心当たりがあるんだよね。

 

 そう、そのパラディファミリーにとっては不届きな殺し屋っていうのは、ライラとサイラであるはずだ。

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