第278話
「バレた? それってもしかして……?」
「……」
薄々わかっているのに聞き返さずにはいられなかった。だけどそれへの返事はもうない。
いつもは細められていた目を今は見開いたまま、カミーロは動かなくなってしまった。
「最後まで言って欲しかったんだけど……」
しゃがみ込んでカミーロの目を右手で覆って閉じる。
「……やられたね」
カミーロから離した右手を見て、思わずそう言葉が漏れた。その手の平はカミーロの血に濡れていて、その無念までこびりついているように感じる。だけど、カミーロにたいした義理はないし、僕はそんなに感傷的な人間でもない。
だからこの「やられた」の半分は僕自身に関することだ。そう、「やられた」のはここで倒れているカミーロだけじゃない。
「
自分の周囲に展開させていた解析魔法を消して、代わりにもう一度レーダーのように魔力を放った。
「やっぱりか……っ!」
相変わらず遠くの方がわかりにくいけど、どうやら路地の入口あたりからこちらへと向かってきている集団がいる。
この状況はデルタファミリーの最後の抵抗……、いや、復讐だろうか。だとすると、頭領であるデルタを餌にして奴らを追い詰めた僕らを罠にはめようとしたのに、そこへ偶然カミーロがかかってしまったってことなのかな?
デルタファミリーの特殊な組織構造を思い返せば、幹部連中が大部分の構成員から恨まれることもあるのは容易に想像がつく。だけど、そうならないようにうまく真実を誤魔化してきたからこそ、あんな組織が維持できていたはずだ。
つまり、デルタファミリーの構成員達に情報を与えて唆した奴がいる、と考えられる。
そしてその事が、さっきのカミーロが言い残した言葉へと繋がってくる。
パラディファミリーにボーライ家の策がバレていた。
そうだとすれば、僕を狙って仕掛けられたことも納得できるし、カミーロがこうなったことも偶然なんかじゃない可能性が高くなってくる。
その予想があっているとするなら、向かってきている大勢はそのほとんどがデルタの末端構成員のはずだ。そうであれば、雑魚の数が多くてもなんとか突破はできるはず。
この状況を何とかして切り抜けて、ヤマキ一家に状況を伝え、そのまますぐに拠点に戻って仲間と合流。少なくともライラとラセツはいるはずだから、その後でグスタフとサイラも探しつつ、一度はこの街から出ることも検討した方がいいかもしれない。
もしパラディファミリーが黒幕だとしたら、デルタの連中だけで済むはずがないからね。とにかく体勢を立て直して万全を期してぶつからないといけない。
さて、じゃあまずはこの状況をなんとか……って、ん?
「これは……?」
放出した解析魔法の魔力が消え去る直前に、集団とは別方向から近づいてくる一つの気配があった。この場所までは入り組んだ路地になっていたけど、別方向というのはその路地と別方向、つまりは建物しかない方向からだ。屋根を伝って駆けてくる何者かがいる……ってことか?
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