第275話
デルタが潜伏しているという情報のあった場所は、もはや建物とかですらなかった。路地が複雑に入り組んでいる区画の奥。家々が密集してできた偶然の通路の行き止まりが、少しだけひらけた空間となっているらしかった。
逃げた時のままで戻れていないのであれば、デルタはもはや見た目からして異形だからこんな場所に逃げ込むしかなかったんだろう。もし人間の姿に戻れていたとしても、この街でヤマキ一家に追われていれば、どの道行き先なんて限られているけどね。
あれから消耗しているのか、あるいはより強くなっているのか、どちらかはわからないけど今度こそ決着をつけないと。
「……よし、行くか」
今僕が立っているのはその入り組んだ路地の入口。つまりはここを通り抜ければ情報があった場所に辿り着くということだ。
「一応確認を……
素直にその奥で待っているとは限らないからね。手前で奇襲されるのを防ぐために解析のレテラで魔力をレーダーのように放出する。
あぁ……、まあそれもそうか。
魔法の結果は、よくわからなかった。入り組んだ路地が魔力の通りを阻害しているみたいで、ここから奥に行くほど情報が曖昧になっていく。
それでも途中の路地に潜んでいる者はいなさそうということと、奥には微かな反応があるということは確認できた。
正直魔法の効果が微妙で、その奥の反応がデルタであるかどうかはもちろん、元気なのか弱っているかも判別できない。あの状態でこんな場所に逃げ込んでいるあたりは、デルタを褒めるべきなんだろうか。魔法での追跡を考慮した場合に、最適の潜伏場所だと思えてきた。
解析魔法での探査を諦めた僕は、慎重な足取りで路地を進んでいく。
魔法がうまく作用しなかったのはこの入り組んだ構造が原因だから、進んでから改めて使えばもちろんより詳細に情報が得られるはずだ。だけど奥に――つまりデルタの居場所に――近づいてから解析魔法を使うという隙をさらすのは、それが微かなものであっても避けた方がいいだろうね。
ということで――
「
――自分の周囲に絞って解析魔法の空間を展開した。これで離れた場所のことまではわからないけど、奇襲に対してはいつでも反応できる。
そしてこの場所の奥が、路地の先のひらけた空間の入り口が見えてきた。
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