第270話
デルタファミリーの拠点への攻撃は成功だったのか、というと半分ってところだと思う。つまりラクエンとか呼ばれる厄介な魔法薬の生成やその流通に関わっていた幹部を捕まえたことで半分成功で、頭領であるデルタに逃げられたことで半分失敗だ。
あの魔法薬を元から断てるのはひとまず良かったんだけど、デルタが残っていればまた何をされるのかわかったものじゃないからね。
……とはいえ、デルタはこの後逃げおおせたとしても、再び裏組織を作って活動するようなことができるんだろうか。というのも、あの魔法道具の指輪で魔獣のように変異していたけど、元に戻る手段はあるのだろうか。
図らずも自分で試すことになってしまった似たような魔法道具に関していえば、精神を浸食されて一時は乗っ取られそうになったものの、外からの衝撃を切っ掛けに無理やり取り戻すことができた。その後も後遺症のようなものは何も残っていない……と、少なくとも自覚している。
だけどあのデルタが使った指輪で変異していたのは身体そのものだ。あんな風に変わってしまったものが、そうほいほいと奇麗に元通りになるとは思えないんだよね。いちいちあんなに苦しんでいたのも体が別のものに変わってしまっていたからこそと思えば納得できる。
そういう意味ではもうデルタは脅威足り得ないとも考えられるんだけど……、まあそれで放っておくという訳にはいかない。
半魔獣ともいえる状態になったデルタを野放しにして大人しく平和に過ごすとはとても思えないから、きっとヴァイスの街中で暴れ始めるだろう。何もバレずにそれが衛兵か冒険者に退治されてしまえばいいけど、どこからかそれがデルタファミリーの元頭領だと情報が流れれば話は変わる。その原因としてヤマキ一家への不信感は募り、ヴァイスの裏社会での求心力が低下することは容易に想像がつく。
つまり結局は一度逃げられたデルタを探し出して確実に仕留める必要があるってことだね。死体くらいなら持っていかれても大丈夫だろうから、最悪は人目につくような状況での戦闘になっても仕方ない。まあそういう場合はヴァイシャル学園の優等生として日々過ごしていることが役に立つだろうね。
まあ、でも目立ちたいという訳ではないから、できれば密かに仕留めてそのまま灰にしてしまいたい。
その後のこと――カミーロから持ち掛けられたアレ――もあるから、この件は迅速に終わらせてパラディファミリーからあれこれ興味を持たれないようにしておきたいね。
インガンノはおそらくキサラギを丸め込んで連れて行ったと思われるから、それまで気にしておくべきはヴィオレンツァか。間違っても僕が乗った計画を気付かれる訳にはいかないから、そういう意味でもさっさとこの仕事を終わらせてコルレオンに帰ってもらわないと。
デルタファミリー襲撃前は僕らの拠点に来たヴィオレンツァだけど、あの後は街中のどこかに宿をとりつつヤマキ一家のところに毎日顔をだしているらしい。
逃げたデルタの情報を確認しに行ったら嫌でも顔を合わせることになるだろうし、怪しまれない程度にパラディファミリーの方の状況なんかも聞き出したいね。
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