第254話
「……よし」
足元ではまだ何か喚いていてうるさいけど、とりあえずは一人確保できた。
ヴィオレンツァが勝手に動いて魔法薬師っぽいのの片方を殺してしまった時にはどうしようかと思ったよ。街には既にある程度は薬をばらまかれてしまっているから、今後のことを考えるとその秘密を把握する人間は必要だった。これで後で何か問題が起こってもヤマキ一家の方でなんとかしてくれると思う。
僕は部屋の奥側へと移動して、この女を捕まえた。中央らへんではラセツがデルタと戦っている。……いや、戦っているというよりは必死で仕掛けるデルタをラセツがあしらっているという感じだけどね。かなり実力差が明白だけど、僕の動きを待っていたのか、ラセツは現状維持を意識してくれていたようだ。
そして部屋の入り口にはルアナとヴィオレンツァがいるから、この部屋の中でデルタを包囲できたような形となった。勝ち負けでいうと負けるはずもない相手だけど、魔法道具なんかを使われると逃げられることもあるというのは、あの血濡れの刃団と争った時に経験したことだ。
「があぁっ!」
「ほっ」
左手が白い魔獣みたいになったデルタがその手に生えた鋭い爪でラセツを切り裂こうとする。しかしラセツは余裕すら……いや、余裕しか見えない態度で軽く身を引いてかわしていた。その際にはすっと出した足を引っかけてデルタを転ばせるおまけつきだ。
「よっ、ほっ、……」
そんな風にデルタの相手をしているラセツと目が合った。……というより、僕が視線を向けた時点で気付いてはいただろうけど、タイミングが良くなったから目で合図をしてきた、というところか。
何の合図かというと、それは当然仕掛けの合図だ。ここから僕が仕掛ければデルタを挟み込んで攻撃できるし、今ならさっき確認したように出入り口も塞いでいる。まあ、ヴィオレンツァの方はデルタが向かったとしてまともに仕事をしてくれるかはわからないけど、少なくともルアナの方は信用できる。
よし、これでようやく詰めの段階。後はなるべく生きたままでデルタを捕まえるだけだ。とはいえ、小動物でも追い詰められれば噛みついてくる。油断して怪我をさせられないようには気をつけないとね。
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