第246話
「では……」
ラセツが扉の取っ手の代わりに空いた穴へと手を掛ける。
そして僕が頷いたのを確認すると、ラセツは素早く、しかしなるべく大きな音は立てずに扉を開け放った。
「……」
大人数同士の抗争だと大声を出して味方を鼓舞しつつ敵を威圧するようなこともあるんだけど、少人数への急襲だから素早く静かに、だ。
まあ、ドアを壊して入っている時点で……ってところではあるんだけど、それでも騒ぐよりはこの方がいい。
入ってまず視界に入ったのは廊下。奥が扉で、そこまでに左側に二つの扉もある。
「奥にいくよ。手前の二つは無視でいい」
「了解したのじゃ」
「はい」
「……? ……っ!」
僕は解析のレテラの副次効果である程度の気配が読めるから、手前の扉の向こうには気配がないことを簡潔に伝えた。ラセツとルアナはすぐに了解の意を示してくれたけど、ヴィオレンツァは一瞬不思議そうに眉をひそめてから、何かに気付いたという顔をしていた。
さっきのラセツの魔法と同じで、こうも張り付かれたらどうせある程度はバレるだろうから隠さずに伝えた訳だから不思議そうにしたのはわかるけどその後はなんだ……?
……って、ああそうか。そうだった。
サティに会った時に自慢げに聞かされたけど、インガンノが解析のレテラのことを知っていて、恐らくは習得もしているんだっけ。そうなると逆になんで一度はわからないような仕草をしたんだよって思えるけど、単純に忘れていたか気にもしていなかったんだろう。魔法を使えない戦士にとってはそんなものかもしれないね。
こっちはこっちで色々と調べて、この“暴力”のヴィオレンツァが純粋かつ圧倒的な戦士であることはわかっていたけど、こうして一緒に行動するとなおさら見えてくるものもある。
向こうがこっちを探ろうっていうんだから、こっちも多少の情報はとっておかないと、つり合いがとれない。だから些細なことでも見ておかないと。
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