第238話
色々と思うところ……というか率直に不満はあるけど、今このタイミングでパラディファミリーやサティに噛みつくつもりがない以上は従っておくしかない。
露骨に僕を見張りに来たとかいわれて、本当ならぼこぼこにして追い返したいところなんだけど……ね。そんなことを仮にしたら、逆にこっちの方がぼこぼこにされるだろうし。
といっても、今の僕らがヴィオレンツァとインガンノの二人――今目の前にいるのは片方だけだけど――に負けるとは思っていなかったりする。
以前こいつらとサティの三人に完敗したことを、僕だけでなくグスタフもライラも、そしてああみえてサイラも気にしている。その気にしかたというか、感情の種類ということだと、危機感だったり悔しさだったり、あるいは自信喪失だったりとそれぞれだけど、とにかくもう一度はないと思っていることは一緒だ。
だからこそ、あれからそれぞれに力をつけてきたし、ラセツという新たな仲間も得た。今再び、あの時と同じ状況になったとしても切り抜けられるというだけの自信はある。
それならなぜ……? というと、単純にパラディファミリーというのが大きな組織だからだ。その幹部達という頭を潰せる算段がついたからといって、安易にそれを実行すれば倒れるその巨体に潰されて共倒れとなる。
やるなら必殺ではなく必勝の瞬間を待たないといけない、ということだ。
「相談役……よろしいのですか?」
と、僕らの拠点に向かう途中でルアナが聞いてきた。今は僕とルアナが前を歩き、後方にヴィオレンツァで、その間にラセツがいる。
僕へ手出しできないように警戒するラセツと、ついていけるのであれば細かいことは気にしないという態度のヴィオレンツァが同行するということで、自然とこういう並びになった。
とはいえ、ある程度離れているとはいっても、小声でもヴィオレンツァには聞こえていると考えた方がいいだろうね。あいつは戦士……つまりは有り余る魔力で身体能力を高めるタイプだ。ということは、普段から五感も常人より優れていると思っていて間違いない。まあ、どの感覚がより高まるかとか、非戦闘時にどの程度そうなっているかとかは、個人差が大きいから実は全然聞こえてなんていないっていう可能性もあるんだけど……楽観視するよりは警戒しておいた方がいいだろうし。
「いいよ、どうせバレてる。でしょ?」
「それは……」
パラディファミリーの情報収集能力なら、僕らが拠点を持っていることくらいはとっくに知られているだろうと答える。後半は「ヤマキ一家だってそれくらいは調べて把握しているでしょ?」という意味で言ったけど、ルアナは少し困った様な反応をする。
別にカマをかけたってことじゃないから、困られても逆にこっちが困るんだけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます