第233話
「結局、その四人……あぁ、いや、あと三人か……を、どこに仕留めに行けばいいんだ?」
さっきはデルタファミリーの奴らの根城がどこかって話だったけど、組織構造の話が衝撃的で本筋から逸れていたから、一旦軌道修正する。
「あのジゴロウってのが幹部だったおかげだな、それもちゃんとわかってるぞ」
それなりの規模の裏組織でありながら、その大半が末端構成員という特異な組織構造のデルタファミリーは、組織の重要情報を外部から得るのが難しい。ほとんどの奴らが知らないからだ。単純だけど、たしかに厄介な仕組みといえる。
だからこそ、あの成果発表会の日に幹部であるジゴロウを捕まえられたのは僥倖だった。
下手したら未だにたいした情報を持たない構成員を追い続けて、実体を掴めずにいたかもしれないってことだからね……。
「ここと、ここ、それとそこだな」
用意されていた街の地図に指をあてて、ヤマキは三カ所を示してきた。
「三カ所か……、どれが本拠地かは?」
奴らの今のところの主業は魔法薬の製造と販売だ。となると密造所とか、保管庫とか、もっとたくさんあるはずだけどそこまでは聞き出せなかったのかな……?
「この三カ所が本拠地だ。細けぇのは省いてある、ってかそっちは儂らで対応するから気にせんでいい」
「ああ、なるほど……て、ん?
いくつか……場合によってはたくさんある拠点の中で、主となる一つが本拠地だ。それがどこかっていう話だったけど、三カ所がそうだっていうのは……。
「数日ごとに幹部連中で話し合って次の本拠地を決めるらしい。で、点々としてるって訳だな」
「なるほど、実体が小さい利点を活かしてってことだね」
思わず唸ってしまう。人数の少なさという意味では、僕らにもできることではあるけど、デルタファミリーはある程度大きな規模の裏組織っていう先入観がまだ抜けていなかったらしい。
奴らは実体が少人数集団っていう利点を徹底的に活用する方針のようだ。
実際に運良く幹部を捕まえて情報を得たっていうのに、それでも居場所を特定するには至らなかったのだから。ボスは相当に頭が良い……いや、というより、警戒心の強い奴のようだね。
「なら、分散して同時攻撃かな?」
「いや……」
厄介な仕掛けがされていたとはいえ、相手の本拠地がある程度まで絞り込めたということで、僕は無難な作戦を提案した。だけどヤマキは首を横に振っている。何か考えがあるみたいだ。
「聞き出した情報と、ジゴロウの態度から目星はつけていてな。アルはそこに集中してくれ、こっちからルアナも付ける」
「よろしくお願いします、相談役」
おお、僕なんかより尋問が得意な人間がヤマキ一家にはいるみたいだね。思ったよりこっちが優位な状況になっていたみたいだ。このルアナは相当な戦力だし、何よりヤマキの腹心だから不測の事態があっても僕らとしては一々ヤマキ一家側に気をつかわなくてよくなる。その場でルアナに確認すればいいからね。
「残りの二カ所は?」
「儂とフランチェスコでそれぞれ何人か連れて潰しにいってくる。……まあ、そっちは気にせんでいい」
一応確認しただけだから、ヤマキの言葉に素直に頷いた。
ここに来る前は内通者であるジゴロウを捕まえたとはいえ、どうなるかなと思っていたけど、予想よりも遥かに順調にことが進んでいたみたいだ。あとは実力行使の番ってなると、僕らの得意分野だから気楽なものだね。
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