第224話
「あの倉庫だったか?」
辿り着いた場所でグスタフは改めて僕に確認をしてきた。
「うん、あっているはず」
肯定する。あれがカミーロから聞いた“ジゴロウがなぜかよくいる倉庫”に違いない。これもカミーロに聞いたところによるとあの倉庫自体はただの物入れで、授業で使うための資材が積んであるだけの小さな建物らしい。
まあ倉庫に薬が隠してある……なんて単純なことはさすがにないだろう。おそらくは小さなメモか何かの暗号でも紛れ込ませてあって、それで内通者であるジゴロウが外部にいるデルタファミリーの構成員と連絡をとる、とかじゃないだろうか。
「探ってみるよ……
解析の魔法を放つと、僕を中心に拡がっていった魔力がある種の手応えを伝えてくる。もし探す相手が手練れの魔法使いならこれでバレる可能性もあるんだけど、ジゴロウはそうではないらしいから大丈夫。
「どうだった?」
「いるね、中に一人。じっとして動いてない」
学園内は減りつつあるとはいえ人が多いから解析魔法の結果もごちゃごちゃとして判然としない。一方であの倉庫の中には一人しかいないからその動きまでよくわかった――つまり動いていないということが。
倉庫の中に一人いて、整頓か物探しでもしている風だけど、その一人がジゴロウであるならば、どうせやっていることは良からぬことだろう。
「入ろう」
「ああ」
僕が合図をして倉庫の扉に手をかけると、グスタフは小さく頷いてから背負ったロングソードの柄に手を伸ばす。ここまできてどうするか、どう仕掛けるかを相談するような暇はない。ジゴロウに近づいたのなら一気に確保したい。
そして後は、この中にいるジゴロウがデルタファミリーにおいてそれなりの地位にある――つまりは有用な情報を持っている――ことを願うだけだね。
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