第223話

 話はまとまったということで、後は僕らが動くだけだ。ということで、人気のない演習場にカミーロを残して離れてきた。

 夕方になりつつある時間帯だから、成果発表会も終わりに近いということで、学園内は独特の空気になっている。見たい発表なんかを見終えたということなのか、外部の人間もかなり少なくなったように感じるし。

 この時間ということは、あと残っているのは三年の戦闘・戦術科によるトーナメントの決勝くらいかな。僕の知るゲーム『学園都市ヴァイス』でのイベントと同じなら、キサラギ・ボーライが圧倒的な魔法の実力を見せつける形になるはず。……前日に会った時にちょっと様子がおかしかったのが気にはなるけど、まああの生徒会長殿なら問題なんかないだろう。

 

 「ジゴロウ……と言っていたか?」

 「あ? あぁ……うん、そうだったね」

 

 歩きながら僕の思考がちょっとそれていることに気付いたからだろうか? グスタフがさっきカミーロから手に入れたばかりの情報を確認してきた。

 ジゴロウ――それが残る一人の内通容疑者の名前であるらしい。

 

 「この先にそのジゴロウ先生がいるはずだよ」

 

 そして今僕がグスタフに追加で答えたように、どういった人物で、この時間にどこにいるはずかということも教えてもらっている。名前だけ聞いたってどうしようもないから、当然のことだけどね。

 

 「ああ、そうだったな」

 

 僕の言葉を受けて、グスタフは小さく頷いた。別にグスタフもさっき聞いたばかりの話を忘れてしまったなんてことはないだろうけど、お互いの認識にずれがないかをこうして確認しておくことは悪くない。

 

 聞いた話だとそのジゴロウ教員は二年の担任に急な欠員ができてしまったから臨時で雇った教員で、多彩な武器に長じた元冒険者の中年男性らしい。人材豊富なヴァイシャル学園だけど、武器戦闘を幅広く、かつ実戦的に教えられる教員は不足気味であったところにその欠員はでてしまったということみたいだ。

 どれほどうまく人材を管理している組織だったとしても、時期によって一部が薄くなったり厚くなったりするのは普通のこと。だけどタイミングが悪くちょうど薄い所に欠員がでて、そこに外部から都合よく応募だか推薦だかがあるなんて、怪しいと思って当然だろう。……まあだからこそ、学園側も調査はしていて、カミーロが確信を得るまでに至っていたんだろうけど。

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