第218話
グスタフの良いアシストで一旦ちゃんと拘束しておくことになった連中は、目を向けると逃げるどころか気を失っている様子だった。ぐったりとしていて動かないその姿は、ぱっと見で演技ではなくダメージが大きかったのだろうと感じさせる。
デルタファミリーからきたと思われる怪しい男女は僕が不意打ちでぶん殴ったし、内通者だった中年教員二人は僕とカミーロの水魔法が二連続で直撃していた。どちらもこの程度の相手をそれなりに負傷させるには十分な威力であったということらしい。
とはいえ、そう見えるというだけで信じ込んで油断するなんて、ありえない。こいつらと僕らの間には絶望的なくらいの実力差があるけど、だからこそ怖いのは油断して不意を突かれることだ。
その点、僕には解析のレテラがあるというのは大きい。特殊レテラと分類され、暗殺にも向いたその性質からフルト王国ではそう簡単に習得はできないこの解析は、放出制御でレーダーみたいな使い方ができるけど、それだけじゃない。僕が好んで戦闘中に使うやり方だけど、滞留で自身の周囲にあるものを察知できるような使い方もでき、それをすると近接戦能力を高めることができる。
そんな風に使い方で幅の広がる解析のレテラだけど、基本的には範囲に存在する生物の位置や、動きのあるものを把握できるということになる。だけどそれはあくまで基本であって、やり様で応用もできる。それが強化のレテラで制御を加えた場合だ。
そうすることでたとえば目の前にいる人間の状態を知ることができる。まあ、僕の場合は医学知識がないから病気があるかどうかとかはわからないんだけど、骨折みたいな怪我とか意識があるかどうかくらいは把握できる。
つまり何がいいたいかというと、こうした状況でも解析を強化して使ってやれば、安全に確認できるということなんだよね。
とはいえ問題があって……、今はグスタフだけでなくカミーロがすぐ近くにいる。侯爵家の出身で、国の上層部にも関わりがありそうなこのうさん臭い教員に、このレテラを使えるということを知られるのはまずい。
となると、魔法は使わずに目視と勘で対応するしかないかな。いや、一時の保身のために、僕とグスタフの身を危険にさらすのは浅はかかな……?
そんな風にちょっと悩んで一瞬だけ動きを止めた僕の横を、カミーロがすっと通り過ぎて前に出る。あぁ、そうか、先に近づくのはカミーロに押し付けてしまえばいいか。
「
「っ!?」
前に出たカミーロが何でもないように解析を発動して倒れる四人を探ったことに驚愕する。
解析が使える……だって?
しかも僕が今頭に思い浮かべていた強化による特殊運用。普通は末尾につけて魔法全体を強める制御レテラである強化を、解析のすぐ後、全体の真ん中に挟んで解析が持つ性質を強めて詳細な情報の取得を可能にするという構成をスムーズに使っていた。
習得しているだけでも珍しい解析を、それだけでなく使いこなしている。
……と、カミーロが軽く首だけ捻って振り向いて、こちらに視線を送ってきた。相変わらず細められていて瞳の見通せない目だけど、問題ないと伝えてきたことはわかった。それともう一つ、解析魔法を見せることでカミーロはそれだけの人物だと見せつけてきたと――つまり今の行動は意図的なアピールであったと――いうことのようだ。
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