第215話

 僕との連携によるグスタフの攻撃は会心の一撃だ。タイミングも力のノリも、これ以上はないといえるほどのものだ。

 だけど……。

 

 「……」

 

 ときおり小さな動揺は見せていたものの、ここに至っても冷静さは崩さないカミーロの目がふと視界に入る。普段は細められて瞳の見通せないその目が薄く開かれてグスタフの持つロングソードの剣身を凝視していた。

 

 まずいっ!

 

 僕の直感が悪寒となって背筋を走る。あいつはまだ何か奥の手を隠し持っているに違いない。

 それをグスタフに警告しようと口を開き、続けて魔法で何とか援護をするために頭の中で構成を考え始める。一瞬が引き延ばされた時間の中で、何があっても対応できそうな水をとにかく適当に丸めて放出で撃つイメージを固めた。

 

 そして実際に言葉と魔法を放つ寸前になって、さらに別のことに気を取られる。

 

 「ぐぅ……」

 

 資材の山に向かって吹き飛ばして無力化した男女の隣で、巻き込んでしまった教員の二人が体を起こしていた。しかもそれだけではなく、状況を把握はしているようでその手をカミーロに向かって突き出していた。

 加勢のつもりだろうけど、足手まといだし、何よりあれは火属性の魔法をぶっ放そうとしていないか? あれだとグスタフまで巻き込まれてしまう。あいつらは動転しているのか……?

 

 「先生方は手出し無用! オーセア放出パルティぃ!」

 

 とっさに用意していた水魔法を起きたばかりの教員二人へと向けて放つ。球状にまとめられただけの水の塊だから、死にはしないだろうし怪我くらいは我慢してもらおう。

 

 こっちはそれでいいけど、余計な手出しを防いでいたせいで、グスタフの援護ができなかった。あっちは……。

 

 「ぬうぅ!」

 「大人しくなさい、恥ずべき内通者どもめ! オーセア放出パルティ

 

 グスタフの剛撃を短剣で受け止めたカミーロが、空いている方の左手を差し向けて僕が撃ったのと同じ水球を飛ばしていた。……だけどそれは、グスタフへのカウンターではない。

 

 「へあっ!?」

 「ぶふ!?」

 

 二つの水魔法に襲われた中年教員二人組は、揃って無様な悲鳴とともに再び気を失ったようだった。

 というか、さっきカミーロは「恥ずべき内通者」って言っていたような……? あの教員達も内通者だったってことなの? いや、もしかしてあの教員達“が”内通者だった?

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