第214話

 僕の援護で再び勢いを取り戻したグスタフは一瞬でカミーロの目前まで到達して、手にしたロングソードの肉厚な剣身を振り下ろす。突進の勢いがそのまま乗った一閃は風を巻き込みながらカミーロの顔面に向けて襲い掛かる。

 

 「驚かせてくれますね」

 

 ついさっきは一瞬だけ動揺していたカミーロだけど、今はもう言葉とは反対に落ち着いた様子。憎たらしいけどたいした精神力だ。

 

 「くっ」

 「おぉうっ!」

 

 カミーロは短剣でうまく一撃をしのいだけど、グスタフは逸らされた勢いはそのままに一回転して次の一撃へと繋げようとしている。連撃の態勢に入ったとなればそれはもうグスタフのペースだ。

 

 武器での近接戦をしている味方に援護をするのはタイミングが難しい。攻撃に巻き込む訳にはいかないし、光による目くらましだって発動位置が難しい。となると、やりやすいのは闇での視界妨害かな、それも発動を一瞬にしてグスタフの邪魔は極力しないようにしてカミーロに隙を作る。

 

 「ブイオ放出パルティっ」

 

 いつもは相手の目を塞ぐようにして一文字で出現させるか、滞留制御で相手のいる一帯を覆ってしまうような使い方をする闇魔法だけど、細長くして放出制御で撃った。それは狙い通りにカミーロの目元を通過する。

 もちろんただの形を成した暗闇でしかない闇魔法には攻撃力は全くない。だからなんの痛みも与えられはしないけど――

 

 「っ!」

 

 ――ほんの一瞬、視界を暗くされたカミーロの動きが止まる。もちろん撃ち放った闇はすぐに通過して闇も晴れるから、カミーロはすぐに動きを再開したし、もう目も見えている。暗くしたのも短時間だから光に目が眩むこともない。

 だけど、その一瞬が武器での近接戦闘をしている最中となれば、致命的な隙となる。

 

 「おおおおおおぉぉっ!」

 

 ひと際大きな雄叫びを伴って、さっきは逸らされた攻撃から一回転して勢いを高めたグスタフが、追撃の刃をカミーロの首筋目掛けて叩きつけにいった。

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