第212話
学園に入り込んでいた怪しい二人組が資材に埋もれて身動き取れなくなっている。よし、殺さずに確保できた。
あいつらに関しては、デルタファミリーの構成員だと確信を持てるようなことがあってから捕まえたかったけど、こうなってはそうもいっていられない。
そして問題となるカミーロの方に目を向ける。
「うおおおおおおおぉっ!」
「なにをっ!?」
いきなり“シェイザの絶叫”と同時に刃を打ち付けるグスタフに、カミーロは驚きうろたえていた。とはいえ、グスタフの本気の抜き打ちを受けて、それで済んでいるのは驚異的だ。
「
心を静めつつ慎重に足元で風を破裂させる。それは僕の足を傷付けることなく、うまく推進力として作用して僕の体を上へと押し上げてくれた。
そして勢いのままに積み上げられていた机を蹴ってさらに跳び上がる方向を調整すると、僕はグスタフとカミーロが相対するちょうど真上に到達する。
グスタフは愛用の重厚なロングソードだけど、カミーロは護身用らしい短剣を手にしている。丸腰に見えていたけど、どこかにあれを隠し持っていたようだ。さすがにそれくらいの用心はしているか。
「グスタフっ!」
「わかっている! ぬぅん!」
そして僕が頭上から声を発すると、グスタフは頼もしい返事とともに短剣と噛み合っていたロングソードを振り回すようにしながら距離をとる。強引に押してから不意に引くという動作をされたカミーロはというと、僅かに体勢を崩してグスタフに追撃することも頭上の僕に警戒することもできないでいる。
「
選択したのは地属性の放出制御。先端を尖らせた岩塊をまっすぐに撃ち下ろす魔法だ。
防ぎにくく攻撃力も高いのは火属性なんだけど、こんな資材満載の演習場に放火する訳にもいかない。そうなると上をとった有利もいかせるということで、この地属性を選んだ。
僕は魔法を撃った反動を宙返りでうまくいなしつつ、元の場所へと目掛けて落ちていく。その間も目線はカミーロから逸らさない。
「
力むことも焦ることもなくカミーロが発動したのは一文字の地属性魔法。ただの薄い岩壁だった。滞留制御もない発動だと、質量に限界があるから範囲を拡げるなら確かにあの薄さが精々だろう。
だけど厄介なのはあの絶妙な角度だ。一瞬の間で、しかも不意打ちに対して迎えたとは思えないその魔法に、僕が上から放った万全の魔法が直撃する。
「くそっ、うまく防がれた」
着地と同時に思わず悪態をついてしまったように、角度のついた岩壁に勢いを逸らされた僕の魔法はカミーロにかすることもなかった。その防御の岩壁はというと、僅かに僕の魔法の軌道を逸らせただけで砕けているから、魔法の威力としては一文字相当だったし、僕の魔法的実力を凌駕するものではない。だけど、あの発動のうまさと、それを成し遂げる冷静さは、どうみてもその辺の教員が持っているようなものではない。
「ちょっと、いきなりは酷いじゃないですか」
非難がましく、しかしそれでも薄く笑みを浮かべてカミーロが言ってくる。こんな状況でも相変わらずその目は細められていて瞳が見通せない。
雑魚二人を攻撃してからだったとはいえ、グスタフと二人がかりでの不意打ちがこうもあっさりと防がれるなんて……、悪い想像通りにかなり厄介な相手だ。
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